乾杯
「それじゃあルテキの街の防衛を祝して」
「「「乾杯っ!」」」
ジョッキを打ち付けると、なみなみと注がれた酒がわずかにこぼれる。
けれど今宵ばかりは無礼講と、誰一人としてそれを気にしている様子はなかった。
「私はお酒が飲めませんので、ジュースですが……」
「それは別にいいだろ、無理強いする気は毛頭ないし」
どうやらアンジェリカだけは酒が飲めないらしく、果物を搾ったジュースをちびちびと飲んでいる。
俺の言葉を聞いて、ホッとした様子を見せるアンジェリカ。
この世界にはハラスメントなんて言葉はないため、相手が酒が飲めないというだけで露骨に機嫌が悪くなるような人間も冒険者には多かったりするからな。
「にしてもすごい量だな……」
「一応フードで顔は隠してたんだけど、どうしてかすぐにバレちゃってね」
「そりゃ女四人の上に立ち振る舞いに隙がないとくれば、一発でわかるだろう」
エヴァの部屋の中には、とんでもない量の食料と酒が並んでいる。
どうやら街中で見かけられる度に、色々ともらってきたらしい。
善意からくれるものを断るわけにもいかず宿と外を何度も行き来した結果が、この女所帯では消費しきれないくらい大量の食料の山ということらしい。
「まぁ食べきれない分はスカイにあげれば問題なく処理してくれるだろ」
「あ、そういえばスカイちゃんは今どこに?」
「帰ってきてないってことは、まだ外で残党狩りの最中なんじゃないか?」
「精が出ますねぇ」
「というより、狩りが楽しくて仕方ないって感じだと思うけどな」
スカイの人気は、今回の防衛戦でうなぎ登りだ。
どうやら『紫電一閃』の皆も、俺の知らぬうちに魅了されていたらしい。
「というかスカイって、ワイバーンよね?」
「の、特異種だな」
「とんでもないわね……」
どうせ勘付いてるだろうし、ことここに至っては隠す意味もないだろう。
正直に事実を教えると、エヴァは首を小さく振る。
ワイバーンの特異種を従魔にしている男は、世界広しと言えど俺くらいなものだろう。
今回の戦いではスカイは本当に役に立ってくれた。
労いの意味もこめて、後で何かプレゼントでもあげることにしようか。
「あまり言いふらさないでくれよ」
「言えるわけないじゃない……」
ワイバーンのテイム方法は未だ確立されていない。
ベントラー王国以外の諸外国のごく一部で、飛竜に乗って戦う竜騎士が存在している程度だ。
「一体どうやってテイムしたのよ?」
「そりゃまあ、気合いでな」
適当にお茶を濁しながら食事を進めていく。
幸い料理だけならしこたまある。更に火精の使い手のフラウがいるおかげで、再加熱にもほとんど手間はかからない。
「にしてもアルド、あんた強いのね……」
「そうそう、あの戦いっぷりは流石の私もびっくりしたよ!」
「噂には聞いていましたが……あれほどとは思いませんでした」
今回の一件で、ミラ達の俺への評価は爆上がりしたようだ。
べた褒めされて嬉しいやら気恥ずかしいやら……ぽりぽりと頬を掻きながら、こっぱずかしい内心を気取られないように料理に手を伸ばす。
「――エヴァ」
「う、うん……」
いつも強気な彼女にしては珍しく、エヴァはもじもじと足を動かしながら、上目遣いでこちらを覗いてくる。
そのしおらしい態度に思わずドキリと胸を跳ねさせていると、彼女の口から思ってもみなかった言葉が飛び出してきた。
「アルド、その、もしよければなんだけど……『紫電一閃』に入らない?」
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