打ち上げ
統率個体を倒したことで、ルテキの街には平和が戻った。
なんでも俺達がレイジードラゴンを倒すと同時に、魔物達は好戦的な一部の例外を除いて散り散りになったらしい。
今回の戦いでは防衛戦が二日で終わったため、冒険者の中には元気の有り余っている者達も多かった。
彼らは褒賞のためにも掃討戦を行うらしいが……流石に働きづめだったこともあり、俺は疲れているので休ませてもらうことにした。
ちなみにスカイはまだまだ元気が有り余っているらしく、空に逃げていった魔物を狩りに行っている。
本当なら従魔単体で動いていると問題なのだが、子爵から許可も出たので今回ばかりは特別にオッケーだったりする。
「ふわぁ……元気だな、皆」
宿に戻ってから流石に魔力の使いすぎで眠っていた俺は、腹が減ったので目を覚ましてしまった。
外を見れば、既にあたりは暗くなっている。
宿屋のおっさんも今日は飯を作るつもりはないらしいので、俺は外へ出てみることにした。
「ルテキの街に!」
「街を守ってくれたクソ野郎共に!」
「「乾杯!」」
ルテキの街では、お祭り騒ぎが始まっている。
領主権限で色々とあった制限が全て取っ払われたことで、皆好きなように飯や酒を楽しんでいる。
あれほどヤバかった魔物の軍勢を乗り切ったことで、皆色々とはっちゃけている。
街中で聞こえてくる陽気な声。
今日ばかりは商人や飯屋のおっちゃん達も大盤振る舞いらしく、あちこちで割引だのタダだのといった聞いていて嬉しい言葉が聞こえてくる。
バザーらしきものも開かれており、こちらでも利益を度外視した物売り達が酒を飲みながら店番をしていた。
その中の一つに目を留めた俺は、足を止めて品定めを始めることにする。
「おっちゃん、このパーム草買えるか?」
「おう、おっちゃんとしても在庫処分をしてくれるとありがたいぜ」
どうやら需要があると見込んで買い込んだ薬草類が大量に余ってしまったらしい。
パーム草はハイポーションの作成に使える薬草で、本来であれば一つ銀貨一枚はする。
だがかけられている値札は銅貨三枚、市場の三割ほどの捨て値になっている。
「毎度!」
薬草を袋に詰めてほくほく顔の俺は、その辺りでやっているパン屋でホットドッグのパチモンみたいな肉を挟んだパンを食べる。
もそもそとした食感に日本のパンが恋しくなるが、肉の味付けがなかなか悪くない。
(現代知識チートをしてみるのも、悪くないかもしれないな……)
街の開放的な気分に当てられてか、そんな風に思える。
今までは別にいいかと無視していたが、この国の食事のレベルはかなり低い。
菓子や主食に調味料、やろうとするなら手を出せるところはいくらでもある。
特許的な概念がないので俺に利益が出ることはないが、食生活の改善ができるのならそれで構わない。
ツボルト子爵とも知り合えた今なら、身が危なくなったりする危険性も少なくなるはずだし。
冷やかしながら街を回って、今のうちにと食料や酒を買い込んでいく。
話し声の中に時折聞こえてくるアルドとスカイという単語には、思わず耳がぴくりと動いてしまった。
どうやら今回の防衛戦で、俺の名は相当に売れたらしい。
これで少しくらいは……彼女に釣り合う男になれただろうか。
宿に戻り、ベッドにダイブする。
バクバクと食べ歩きをしていたせいで、お腹が重たい。
天井を見上げながら、頭の後ろで腕を組む。
「ふぅ……」
外から漏れ出てくる明かりと笑い声。
この平和を守るために貢献できたという事実が、少しだけ自信をつけてくれる。
――今回の防衛戦で、俺は『紫電一閃』と同じく、勲一等として讃えられることになった。
というか勲一等は俺と『紫電一閃』の四人だけしかもらえていないため、貢献度合いは冒険者の中で一位タイだ。
今回でギルド相手には大きく貢献点を稼ぐことができた。
このまま行けばそう遠くないうちに、Bランク冒険者への昇格が見えてくるはずだ。
自分で言うのもなんだが、それくらいの貢献はしてきたとも思うし。
子爵やエヴァ達には色々と手札を見せたりもしたが……結果は上々と言える。
行き当たりばったりな俺にしては悪くない結果だ。
小さく笑いながらまどろんでいると、ノックの声が聞こえてくる。
「アルド、もしよければ一緒にどう?」
「……おう、今行く」
エヴァの部屋に入っていくと、そこには既にミラ・フラウ・アンジェリカの三人が揃っていた。
「外だと話しづらいこともあるし……それにちやほやされすぎて、落ち着いてご飯も食べられないからね」
そう言ってパチリとウィンクをする彼女と一緒に、床に座る。
どうやらあの戦いで仲間として認識はしてもらえていたらしく、ミラ達の方から文句が出ることはなかった。
俺はよしと気合いを入れ直す。
レイジードラゴンとの戦いが終わっても、俺の戦いはまだ終わってはいない。
自分の過去との決着……それを済ませるまでは。
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