斥候と敵影
そもそもの話、今回の作戦で俺は戦力としてはカウントされていない。
ドラゴンの飛行を封じるための同行ということになっていたので、せめて索敵くらいは俺が受け持つことになった。
『紫電一閃』ではミラが斥候もこなしているんだが、彼女にも本番までは休んでいてもらいたいからな。
俺はスカイと一緒に空を飛び、『光点探査』を使って魔物の数をおおまかに確認していく。
高点からのおおざっぱな視認と併せれば、敵影を逃すことがない。
適宜地上に降りてはツボルト子爵に報告を加えていく。
「自律魔法と偵察の組み合わせがこれほど凶悪とはな……この力を知っていたら、昨日の防衛戦でもお前を参謀として呼び込んでいたんだが……」
「やめてくださいよ、あんまり目立ちたくはないんです!」
「遅かれ早かれ、だと思うがな……昨日のあれを見てまだお前の強さをわからんやつがいたら、そいつの目は間違いなく曇っている」
子爵、ナチュラルに『紅蓮の牙』をディスってるんだが……そう思ってくれるのは嬉しい。 はりきりながら適宜連絡を取りつつ森を抜けていくと、ようやく湿原が見えてくる。
先ほどから見えていたが、湿原にはまだまだ大量の魔物がいる。
恐らくはこれらが順繰りに街を攻めていく手はずになっているのだろう。
ただ統率個体があまり口うるさく言っているわけではないからか、魔物達は軍団のようにきびきび動くこともなくてんでバラバラにグループごとに分かれていた。
警戒用の空飛ぶ魔物達にもバレないよう、更に高空を飛んでいく。
事前に想定をしていたため今の俺はばっちり厚着だ。
更にスカイは魔力である程度自分の周囲の気温も保っているらしく、しっかりと装備さえしていれば凍えることもなく偵察をすることができる。
『光点探査』を使いながら敵影の上空までやってくると、一際強い反応を見つけることができた。恐らくこいつが統率個体だろう。
この光の強さは……とんでもないな。
純粋な魔力量で言ったら、子爵やエヴァでも比較にならないくらいだ。
徐々に高度を下げつつ、同時に距離を取ってバレないよう心がけながら敵の姿を確認する。
身体強化を使えば、ある程度は五感も強化することが可能だ。
強化した視覚で確認するとそこには……ごろんと転がりながら、無防備な腹を見せているドラゴンの姿があった。
まるで中年のおっさんのように腹回りがでっぷりと肥えており、まどろんでいるからか目を薄くつむっている。
だがなぜか、口だけは大きく開いている。
あくびをしているのかと思ったが、そうではなかった。
「GYAASU……」
街にやってきたリザードマン達よりも一回りは大きい上位種達がてくてくと歩いてくる。
彼らは両手いっぱいに獲物を抱えていた。
どうするのかと思うとそのままドラゴンの口に持っていく。
そしてドラゴンは口の中が満杯になるとばくりと口を閉じ、咀嚼して飲み込むとまた口を開けて食べ物がやってくるのを待っていた。
時たまリザードマン達の中に上手く食料を運べないやつもおり、手に持った食料ごと食われていた。
だがそれでも文句をつける様子もない。
完全に上下関係ができあがっているんだろう。
しっかしあのドラゴンは、食べ物を自分で食べることすら面倒くさがっているらしいな。
その特徴的な見た目からそうじゃないかとは思ってたが……間違いなくあいつは、レイジードラゴンだ。
レイジードラゴンのランクはS。
基本的によほどのことがないと自分から動くことはなく、とにかく配下達を動かす魔物である。
その特徴は、戦闘においても自分から動くことが多くないこと。
マジキンでは思考ルーチンはほぼバフか回復、味方呼びで、自分から攻撃をしてくることは滅多になかった。
味方に各種支援を行いながら、大量に出てくるくせにやたら強い雑兵で物量作戦をしてくるタイプの嫌な敵だ。
機敏に動くことがないのはありがたいが、あれだけ大量の配下がいるとなると……その脅威度はかなり高い。
あいつが何かの拍子に街まで出張って配下達を活性化させようものなら、まず間違いなくルテキは滅ぶだろう。
なんとかして配下達を削っていくか、ドラゴンだけを物理的に隔離するしかなさそうだな……。
だがレイジードラゴンは俺が想定していた魔物の中ではかなりマシな部類だ。
早速用意していた札が活きてきそうだ。
俺はおよその魔物の配置と数を頭に叩き込んでから、地上に戻って報告を行うために一度帰還するのだった――。
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