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今さらだけど異世界満喫! 〜気づけばアラサー冒険者ですが、ゲーム知識で強くてニューゲーム〜  作者: しんこせい(『引きこもり』第3巻2/25発売!!)


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『紫電一閃』


 走る雷光は、死の顕現であった。


「ギャッ!?」


「グギャッ!?」


「……ギッ……」


 稲光が一つ発生する度に、その線上にある生き物の命が絶えていく。

 光が通った先の魔物は、切り裂かれ、貫かれ、臓物をぶちまけながら地面に倒れ伏していく。そこにはただ一つの例外もない。


 かなりの手練れが良く目を凝らしてようやく見なるほどの速度で動くそれは、迅雷がごとく魔物達を鎧袖一触に焼き焦がしていった。


「シッ!」


 その光――エヴァが使っているのは、光精魔法である。

 白の巨人族であるフェイトが内に持っているものと同じ光の精霊を、彼女は外部から引き寄せ使い、己の肉体を賦活させているのだ。


 エヴァは己の肉体に光精を纏わせるだけではなく、己の纏う武具にも同じことをしていた。 彼女の手に持つ魔剣、鎧、そして靴……その全てから溢れんばかりの光精が噴き出している。


 光精魔法による肉体の賦活を、光精に親和性の高い武具を揃えることで極限まで高めることで、エヴァの速度は人間では視認できぬほどにまで跳ね上がる。


 あたりに閃光と破壊をもたらすエヴァの暴れ回る周囲からは、巻き込まれてはたまったものではないと人影が消えていく。

 しかし当然ながら、そこに残る者達も存在する。

 そこに居るのは、彼女の超速戦闘についてくることのできる者達だった。


「そいっ!」


 エヴァの動き方を熟知しているミラは、彼女の軌道上で邪魔になる魔物達の動きを阻害し、そのラインから逸らし、始末していく。


「ええいっ!」


「ちょっ、アンジェ、今のはあたしの獲物だったのに!」


 アンジェリカとフラウもそうだ。

 『紫電一閃』のメンバーは常にエヴァの戦いを間近で見てきた猛者達の集まりである。


 彼女達はエヴァのことを、彼女が全力を出した最高速の時を除いてしっかりと視認することができる。


 そしてぴったりと息の合った彼女達は、それ故にタイミングを合わせエヴァとかち合わぬよう攻撃をする連携すらも可能であった。


 アンジェリカの放つ火精魔法はエヴァが取り逃したライン上を外れた魔物を速やかに炭化させ、フラウは遠巻きに見ている冒険者を襲いかかろうとしている蜥蜴を水の膜で覆い窒息死させてみせる。


「他愛ないわね……次、行くわよ!」


 エヴァのかけ声に合わせ、狩り場を移動する。

 魔物の軍勢は横に広く展開している。

 少し歩いてみせれば、狩る魔物を探すのには苦労しない。


 エヴァは新たな標的を見つけると、大きく跳躍。

 豹のようにしなやかに宙を駆けた彼女が着地すると、落下地点に居たオーガがぶちりと挽肉になった。


「――シッ!」


 襲いかかろうとするオーガを、レイピアで迎撃する。

 突きを食らったオーガは、そのままビクビクと身体をけいれんさせたかと思うと、口から煙を吐き出して倒れた。


 そのまま攻撃を続け敵を倒し続けていると、わずかに距離を置かれぐるりと囲まれる。


「低光刃、行くわよッ!」


 エヴァがぐるりと自らを囲む魔物達を睥睨しながら、腰をかがめてぐるりと剣を回した。

 光精魔法が発動し、刀身が光精によって伸びていく。

 しなることなく真っ直ぐと伸びた光の刃は、見事に魔物達の足を刈り取ってみせた。


 事前に合図をされていたミラ達は飛び上がっているため、攻撃を受けることはない。

 その後は四人で協力して、機動力を殺された魔物を倒していく。


 光精の優れている点は、外部の影響をあまり受けないところにある。

 たとえば雨が降れば火精の勢いは弱まり、砂漠地帯であれば水精自体がほとんど存在しなくなってしまう。


 だがどんな状況下でも、光がなくなるということはない。

 明かりを灯す魔道具さえ持っているのなら、たとえ夜であろうと光精は姿を現してみせる。


 ただしその有用性の高さに反比例するかのように、光精魔法の適性を持つ者の数は少ない。

 更に回復、補助、肉体の活性化、そして高い攻撃力といった多岐に渡る能力を持つため、器用貧乏になってしまう者も多いのだ。


 その全てを高い水準でこなしてみせる光精魔導師は極めて少ない。

 更に言えばその上で近接戦闘までこなせる人間となれば、王国広しと言えど五指に満たぬ数しかいないだろう。


 故にその制圧力は――圧倒的である。


「次、行くわよ」


 息一つ切らすことなくエヴァについてくるミラ達は、こくりと頷きながら劣勢の地点へ急行し戦闘を続けていく。


 化け物であるエヴァについてこれる『紫電一閃』のメンバーもまた、それぞれの分野に天稟を持つ強者揃い。

 どれだけ激しい戦闘を続けても、その装備にわずかな傷一つつくことはなかった。


 これがAランク冒険者。

 強さの壁を超え、人外と称されるほどの実力を持つ者達。


 アルドの目指す場所は、未だ遠い領域にある。

 けれどそれは決して、超えられる壁ではない。


 『紫電一閃』の奮戦とアルドの高空戦力の撃滅により、防衛戦一日目は城壁の手前で魔物達の猛攻を受け止めることに成功した。


 潮が引くように、夜になると魔物達の姿は消えていく。

 夜襲には警戒しながらも、防衛戦の指導者であるツボルト子爵の一声で、作戦会議が開かれることになった。

 会議に呼び出されるメンバーには、アルドも含まれているのだった――。

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