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眼下


 飛竜は見た目が似ているが故に竜の名をつけられることになったが、この両者には厳密に言うとまったく別種の生き物だ。

 ドラゴンは場合によってはSSランクに到達することもある正真正銘の化け物であり、飛竜とは格が違う。


 そんな飛竜種の中で最強の魔物こそが、エンシェントワイバーンというわけである。

 つまりどういうことかというと……


「こいつを倒せないようじゃ、到底統率個体には届かないってことだ!」


「FURYUUUUUUUU!!」


 エンシェントワイバーンの体長はそれはもうめちゃくちゃにデカい。

 広げている翼の端から端までを計算にいれれば、軽く十メートルは超えてるんじゃないだろうか。

 ワイバーンと比べると二回りほどデカい巨体から発されているプレッシャーは、ある程度距離の離れているというのにここまで届いてきている。


 ただ巨体であるためにその速度はそこまでではない。

 小回りが利くスカイの方が速度は出せるようだ。


 こちら目掛けて飛んでくるエンシェントワイバーン。

 その距離を正確に計りながら、『一筆書き』で脳内に魔法陣を描いていく。


「『礫の散弾(デ・ラサ)』!」


 自律魔法によって生み出された魔力の弾丸がエンシェントワイバーンが飛んできているところに発現する。

 そして同時に、着弾。


 ッパアアンンッ!!


「GURU?」


 速度が想定よりわずかに速かったせいで、弾丸が加速に入る前に敵にぶつかってしまった。

 貫通力のない純粋な爆発では、わずかに姿勢を逸らす程度の威力しか出ていない。


 距離の目算は間違っていなかったが、追い風のせいで想定よりわずかに速度が早かった。

 次からは風もしっかりと確認しておくべきだろう。


「今っ!」


「きゅうっ!」


 スカイが放つ『魔力の矢』が、今度はしっかりとエンシェントワイバーンに命中する。

 空中に魔力を使い魔法陣を固定させるスカイの自律魔法は、通常よりも威力が出やすい。

 エンシェントワイバーンの翼膜にしっかりと突き立った。


「GURAAAA!!」


 エンシェントワイバーンがこちらに肉薄。

 軽く手綱を振ると、俺の意に沿ってスカイが大きく右に回避運動を取る。


 一瞬の交差。

 鋭い鉤爪が先ほどまで俺達のいた空間を大きくえぐり取っていく。


「KURYUUUUU!?」


 交差する瞬間、俺は剣を握り事前に用意していた新たな自律魔法を発動。

 放つ魔法は『不可視の剣閃(デラ・ボルタ)』。

 魔力によって延長された刀身が、エンシェントワイバーンの顎の肉をこそぎ落とす。

 切られたひげがちらりと空中にそよぎ、消えていった。


 攻撃を受けたとわかった瞬間、エンシェントワイバーンが電撃的な反射によって尻尾によるカウンターを放ってくる。

 鞭のようにしなりながらこちらに襲いかかる攻撃。

 俺はスカイの肩を軽く二回叩いた。


「きゅうっ!」


 合図を受けたスカイの頭上に、魔法陣が浮かび上がる。

 自律魔法『対価の鎧』が発動。


 ダメージを無効化させる代わりにその他一切の魔法の発動を禁止させる自律魔法が、尻尾の一撃を受け止め、弾き返す。

 針状になっている尾の先端からは、紫色の毒液がわずかに垂れていた。


 スカイが使う場合、この自律魔法のデメリットのうちのかなりの部分を無視することができる。


「……よし、いける」


 最悪の場合はなんとかしてこいつを地面に落とし、『紫電一閃』と協力してことにあたるつもりだった。

 けれどこいつなら、今の俺とスカイが力を合わせればしっかりとダメージを通すことができる。


 こちらは一度攻撃をもらえば一気にきつくなるが……劣化エリクサーの在庫もある。

 傷を治して再度の戦線復帰も容易となれば、多少の無茶は利くよなぁっ!


 エンシェントワイバーンの注意を釘付けにするために、鼻先でちろちろと動き回りながら攻撃を続ける。

 こいつを城壁の内側に向かわせてしまうと大変マズいことになる。


 見れば既に土壁は二つ目が抜かれ、冒険者達による白兵戦が始まろうとしていた。


 そして飛行可能な魔物のうちの数体が既に市内に入り込み、攻撃を加えているようだ。

 市民の待避は間に合っているのであれくらいならなんとかなるだろう。

 とりあえずデカブツだけはなんとしても、俺の方で止めなければ。


 戦いながらも頭の中はクリアで、思考は驚くほど滑らかだった。


 そのまま視線を下に向けてみれば、そこには防衛のための用意を整えた冒険者と、それを指導する騎士達の姿がある。


 向こう側には未だ地平線を埋め尽くすかのように大量にいる魔物達。

 統率個体らしき魔物の姿は未だないが、中にはサイクロプスなどの一体で城壁を壊せるクラスの魔物の姿も見え始めていた。


(お前も……負けるなよ、エヴァ)


 戦場を駆け抜ける稲妻を見ながら、俺は小さく笑う。

 これならまだ、切り札は温存しておけそうだ。


 戦いは未だ、始まったばかり――。


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