魔物の軍勢
魔物の軍勢とはその名の通り、大量の魔物が出現するイベントだ。
通常の異常発生した群れなどと違うのは、魔物の軍勢の中には多種多様な魔物が存在していることが挙げられる。
空を飛ぶ鳥型魔物から大地を駆ける狼型魔物、オークやゴブリンといった人型魔物から場合によってはドラゴンなどの巨大な魔物まで、色んな魔物がそれこそ節操なく出現してくるのだ。
そしてそしてその群れはゴブリンキングの時のような感じで、統率個体と呼ばれる一際強力な個体が群れを統率し、一つの軍隊のように動くようになっている。
「どうして急にそんな話になってるんだ?」
「どうも最近、大気にあるマナの調子がおかしいみたいなのよ。ここ最近、特異種の目撃例が以前と比べたら明らかに増えてるのはあなた達も気付いてるでしょ?」
「うん、考えてみると僕も、確かに行く先行く先で特異種ばっかり相手にしてるよ……」
マナというのは、大気に満ちている魔力のことだ。
このマジキン世界においては星そのものもまた一つの生き物であり、世界中にある地脈という場所を使って間欠泉のように魔力を定期的に噴出させ、循環させている。
(星のマナの調子がおかしいか……そいつは少なくともゲーム内ではなかった設定だな)
マジキンにおいては特異種は、完全にランダムでエンカウントする強めの中ボス、くらいの認識だった。
だがどうやらこの世界では、マナと特異種の関係性がある程度見つかっているらしい。
ゲーム世界だと出ていなかった細かい設定か、つじつま合わせのために新たな設定が付け足されていると考えれば、まぁ納得はできる。
だが俺の予想は外れたな。
もう一つのより最悪な方ではなさそうなことを、今は喜ぶべきかもしれない。
「魔物の軍勢の細かい目星はついてるのか?」
「……いいえ、だからどこにでも行けるように私達は王都に滞在してるのよ」
「なるほどな……」
王都はベントラー王国は中部に位置しており、移動の際の結節点として使われることも多い。
たしかに王都の周辺には比較的しっかりとした街道も整備されているから、ここからならどこに移動することができる。
風の噂で聞いていた話ではもっと色々なところを飛び回っていたらしいから、王都辺りに長いこと滞在しているのが少し疑問ではあったんだが……そういう理由があったからなら納得できる。
「しっかし魔物の軍勢か……」
魔物の軍勢は、あまり起こる頻度の高いイベントごとではない。
ただその危険度はかなり高い。
発見が遅れたりきちんと軍隊の迎える場所でなく救援が間に合わなかったりすれば街の一つや二つは容易に潰されてしまう。
当然ながら街で起こるイベントは全て進行不可になり、中に主要キャラが居た場合は各地を巡って難民の中から探す必要が出てくる。
ちなみに主要キャラの中には勝手に動き出すもおり、斥候のヒロインの場合は勝手に盗賊団を組織してしまい自陣営に引き入れるためにとんでもない苦労が必要になったりすることも多い。
マジキンでは魔物の軍勢はゲームの本筋には関係ない、完全なランダムイベントだった。
俺もほとんど結構セーブしたところからやり直して魔物の軍勢が起こらないように乱数調整して乗り切ってたし。
ただ残念なことにここは現実だ。
いざとなったら俺も、気合いを入れて防衛に参加しなければならないだろう。
「でもそれって結構重要な秘密じゃないのか? なんで俺達に話したんだよ」
俺の質問を聞いたエヴァがまずフェイトの方を見て、そのままスカイと俺を流れるように見つめてきた。
「それは――今のあなた達になら、話してもいいと思ったからよ。信頼できる戦力は一人でも多い方がいいでしょう?」
現金なもので、信頼できると言われるだけで俺の心は弾んだ。
以前エヴァは俺の下から離れていった。
けれど今はこうして、隣に並ぶことを許してくれている。
もちろん実力的に追いつけたとは思っていない。
他のメンバーの気持ちも考えて、再会してから一度も依頼を共にこなしたこともなかったくらいだ。
だからもしかすると魔物の軍勢の撃滅依頼が――数年越しの、共同依頼になるかもしれないな。
「アレクセイを倒せたんだもの――期待してるわよ、アルド」
「ああ……任せてくれ」
「僕も忘れないでよね!」
俺達三人はグッと前に出した拳をぶつけ合う。
そして俺達は共闘を誓い合い――その半月後。
エヴァが言っていた通りに、魔物の軍勢が発生した。
その場所は――俺のホームであるルテキにほど近い森の中だった。
戦わなくちゃいけない理由がまた一つ増えたな。
なんとしてでも――街に被害は出させやしない。
俺はスカイに乗り単身でルテキへと飛び、急ぎ強制依頼を受ける冒険者の列へと並ぶのだった――。
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