修羅場
別に俺は浮気をしているわけではない。
フェイトは俺が教導をしたかわいい後輩だし、エヴァは俺の元カノだ。
誰かに対して不義理を働いたわけでもないのだから、凜として胸を張っていてもなんら問題はないはずだ。
だがエヴァにフェイトのことを説明する時に、その剣幕に押されてなぜかかなりしどろもどろになってしまった。
フェイトとエヴァが向かい合う。
修羅場、という単語が脳裏をよぎった。
俺の胃が今までに感じたことがないほどにキリキリと痛みつけられるが、それも構わず事態は進んでいく。
「僕の名前はフェイト、先生とは仲良くさせてもらっているよ。どうやら僕がいない間にずいぶんと先生がお世話になったみたいで」
「そう、私の名前はエヴァ。アルドとは仲良くさせてもらってるわ。ほとんど毎日一緒にお酒を飲むくらいね」
「へぇ……僕が依頼で宿を空けている間に、まさか入り込んでるネズミがいるとは思わなかったよ」
「どっちがネズミか……試してみましょうか?」
「いいよ、やろうか?」
二人の視線がバヂバヂ(バチバチの上)と弾け合い、極寒の冷気が部屋の中を包み込んでいる。
俺は何をするかわからず、とりあえずおろおろしていることしかできない。
女同士の争いにおいて、おっさんはあまりにも無力だ……。
気付けばエヴァとフェイトは互いに示し合わせた上で、部屋のドアに手をかけていた。
俺がついていこうとすると……
「「アルド(先生)は来ないで!!」」
とにべもない様子だった。
そうなれば俺にできることはない。
「ふぅ……」
手持ち無沙汰だったので、とりあえずスカイを撫でておくことにする。
「きゅう……」
最近大きくなっては来たものの、相変わらず人なつっこいスカイは気持ちよさそうに目を細めなながら、身体を小さく震わせるのだった……。
することもなくなった俺が自律魔法の見直しをしていると、遠くからドンパチとやり合う音が聞こえてくる。
努めて無視しながら時間が経つのを待ち、集中力が切れてベッドに横になろうかというタイミングでようやく二人が帰ってきた。
「はあっ、はあっ……」
「ふうぅ~~~っ」
エヴァの方は鎧が何ヶ所かひしゃげており、フェイトの方は服の至る所に穴が空いており、全身から白の巨人族特有の白いオーラが立ち上っている。
どうやら既に傷は治しているようだったが、二人ともその身体はかなりボロボロだった。
ど、どんだけガチでやって来たんだよ……。
パシィッ!!
部屋に入ってきたエヴァとフェイトが、手のひらを打ち付け合う。
「……」
「……」
お互いに見つめ合っている二人は言葉を発しなかったが、彼女達の心は通じ合っているように見えた。
いわゆる拳で語り合ったから、言葉は要らない的なやつなのだろうか……。
あまりにも肉体言語過ぎるコミュニケーションに呆然としているうちに、気付けば酒盛りが始まってしまう。
俺にできるのは、眠たそうにし始めたしたスカイをソッと部屋の隅の方へと移動させてやり、二人に酌をして話を聞いてあげることだけだった。
最初はなんとなく居心地の悪さを感じていた俺だったが、それもすぐに消える。
考えてみればフェイトともエヴァとも仲はいいのだから、当然のことではあるんだけど。
同じ冒険者をやっている三人だからこそ、話題はどうしてもここ最近の稼業の話になる。
そこでエヴァが放った一言は、酒の席の与太話と片付けられないほどに重要なもので、俺の酔いは一気に覚めることになる。
「察しの良いアルドなら、もう勘付いてるんじゃない?」
「いや、どちらかと言えば察しは悪い方だと思うんだが……何がだ?」
「多分……そう遠くないうちに魔物の軍勢が来ると思う」
「――魔物の軍勢だって!?」
【しんこからのお願い】
この小説を読んで
「面白い!」
「続きが気になる!」
「応援してるよ!」
と少しでも思ったら、↓の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!
ブックマークもお願いします!
あなたの応援が、作者の更新の原動力になります!
よろしくお願いします!




