帰還と……
「たっだいまーっ!」
王都で依頼をこなしながら日々の生活を送っていると、とうとうフェイトが帰ってきた。
どうやら帰ってきてからすぐにこちらにやって来たようで、相変わらずどこに目をやっていいのかわからないぴっちりとした服を着ている。
いつもはホットパンツなどの素肌がむき出しになった服の場合が多いが、今回の彼女の依頼はアンデッドの湧き出る墳墓の調査。
アンデッドはその特性上、血液や唾液などに強い毒を盛っていることも多い。
そんな相手に素肌だと流石にマズい。
というわけで今の彼女は、全身が黒いボディスーツでぴっちりと覆われていた。
いつもよりむしろエロいと感じてしまうのは、俺に下手に前世知識があるせいかもしれない。
「おお、お帰り」
「きゅうっ!」
「わあっ、スカイ、また大きくなったね!」
スカイは魔力を使用するようになると、以前の何倍もの食事を取るようになった。
今では俺が個人的に自律魔法の訓練も行っているため、こいつは今、魔力を使う度に食事を取りまくっている。
その異常なほどのハイペースのおかげか、スカイは順調に育っている。
「ちょっと育ちすぎじゃない?」と疑問を持ちたくなるくらいにその成長スピードは早い。 まぁ、飛竜なんていうファンタジー生物を常識に当てはめる方がおかしいのかもしれないけれど……。
今のスカイは、俺が軽くまたがることができるまでくらいに大きくなっている。
その背中には、俺が乗るための鞍がつけられている。
俺が取ってきたフロストリザードという氷を吐く蜥蜴の革を使って作られており、乗り心地は案外悪くない。
ごつごつとしたワイバーンの背中で安定した乗り心地と耐久性を追求するのはなかなか難しかったが、革を補強する形でマザートレントの木材も使わせてもらっている。
耐久性だけ考えれば全部マザートレント材を使った方が良かったんだが、それだと座骨のあたりがすぐに悲鳴をあげてな……。
「墳墓の方はどうだったんだ?」
「それがさぁ、聞いてよ! 率いてるのがリッチってところまでは聞いてたんだけど……」
いつもの調子で話を続けようとしているフェイトは、至って自然な動作でボディスーツについているチャックに手をかける。
そして躊躇なくジッパーを下ろそうとし始めた!
「ちょ……お前、いきなり脱ぎ出すな!」
「えぇ、別にいいじゃん。窮屈なんだもん、この服」
俺はくるりと振り返り、ついでによくわからない様子で首を傾げているスカイも180度回転させる。
冒険者の中には常在戦場の心構えを持つ者も多く、特にいつ魔物に襲われるかわからない迷宮などでは女が男の前で着替えるのも当たり前のことだと聞く。
今までは俺もそのあたりのことは大して気になってなかったはずなんだが……前世の記憶を取り戻してからというもの、どうにも恥ずかしさが勝ってしまう。
現代日本の倫理も、マジキン世界では善し悪しだ。
着替え終わってパジャマ姿になったのを確認してから、くるりと振り返る。
そこにはさっきまで黒のボディスーツを着ていたとは思えないほどかわいらしい水玉模様のネグリジェを着たフェイトの姿があった。
「それで、墳墓の方はどうだったんだ?」
「ああ、そうそう、本当に貧乏くじを引かされたよ! なんせアンデッド達を率いてるリッチが、特異種だったんだもん! 集められた人達のランクが一つ違うって!」
リッチはBランク相当の強力な魔物だ。
万全の用意を持ってなんとか倒そうとフェイト以外にも複数のBランク冒険者を用意して挑んだらしいが……どうやらそこにいたリッチが特異種だったらしく、無からアンデッドを生成するという特殊能力を持っていたらしい。
そのせいで同じくリッチと戦ったBランク冒険者の中にも多数の犠牲が出たという。
フェイトが白の巨人族の力を使ってゴリ押しして、相性差でなんとか倒せたらしいが……。
しっかし、また特異種か……。
飛竜の特異種であるスカイ。
ゴブリンキングの特異種に、スリーピィトレントの特異種、それに今回のリッチの特異種。
ここまで連続して特異種ばかりが現れるというのは、流石に偶然ではないだろう。
考えられる可能性はいくつかあるが、やはり本命は――と、俺が真面目に考えることができたのは、ノックが聞こえてくるまでのことだっただった。
「アルド、ただい……ま……」
部屋のドアを開いたのは……しっかりと手入れの行き届いた鎧に身を包んでいるエヴァだ。
いつものように控えめなノックの後に入ってきた彼女の視線が、パジャマ姿のフェイトに固定される。
「……アルド? もちろん詳しい事情は説明してくれるのよね?」
「せ――先生! 現地妻!? また現地妻作ったの!?」
ひ……人聞き悪いことを言うな!
だが……さて、この状況をどう打開すべきだろうか……(震え声)。
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