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今さらだけど異世界満喫! 〜気づけばアラサー冒険者ですが、ゲーム知識で強くてニューゲーム〜  作者: しんこせい(『引きこもり』第3巻2/25発売!!)


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スリーピィトレント


 マジキンにはアイテム作成も存在している。

 ただ流石はマジキン、アイテムの作成方法においても一番大切なのはあくまでも魔法陣だった。


 作成方法自体は非常にシンプルだ。

 魔法陣の上に素材を載せ、そして錬成を行うだけ。


 ただシンプルながらも奥が深く、魔法陣自体が特殊な効果を持ったり、使う素材と魔法陣の相性によって完成品の品質が大きく変わったりする。


 当然ながらこちらの魔法陣知識に関しても俺は網羅している。


 劣化エリクサーを作る時には素材のうちの一つがなくても作れる代わりに極低品質のアイテムとして完成させることができる『悪魔の一匙』を使っているが……あれは使い捨てかつ、作るのにかなり面倒な素材が必要になる。まだいくつかは残っているが、流石に劣化エリクサーを作るのに取っておきたいところだ。


 特殊な魔法陣作成のために必要な素材は足りていないため、俺は普段は現状作れるものの中で一番マシな『速成錬成陣』を使うことが多い。


 こいつは簡単に言うと、使う素材の状態を錬成時に弄ることができる魔法陣だ。


 たとえば作るのに乾燥させた薬草を必要とする場合や、熟成された魔物素材を必要とする場合でも、この魔法陣を使えば新品の状態のそれらから同様のアイテムを作成することができる。

 つまりとりあえずアイテムの状態を気にせずとも……


「こんな風に気付け薬が作れるわけだな」


 俺は『悪魔の箱』の中から取り出した素材を使い、大量の気付け薬と強壮剤を作っていく。

 作成に必要なもののうち、素材自体を作るのがめんどくさい熟成されたアグーの肝、乾燥して粉末状にしたベルベット草、腐りかけたオークの睾丸。


 そういった本来であれば手間のかかる素材も、この錬成陣があれば新鮮な状態のものをぶち込むだけでサクサク作ることができる。

 あっという間に薬の作成が終わった。


「きゅう……zzz」


 ご飯を食べて既にうとうとしているスカイの頭を撫でてから、俺は一人ベッドの中へ入るのだった。


 ……え、一緒に寝ないのかって?

 スカイはめちゃくちゃ寝相が悪くてな……一度死にかけてからは、絶対にしないと決めてるんだ。






 次の日。

 俺達は村を出て、スリーピィトレントのいる森へとやってきた。


 村から歩いて数分もすると、妙に甘ったるい匂いが漂い始める。


 更に歩くと、ピンク色の靄のようなものが見え始めた。

 色がピンクで妙にけばけばしいが……以前テレビで見た、目に見えるほど大量に舞う花粉に良く似ている。


 本当にかなり近くまで浸食されてるな……村の人達にこれ以上の被害が出ないためにも、一刻も早く討伐するべきだろう。


「きゅうっ!」


 俺は今回のために買ってきていたゴーグルでしっかりと目を守り、口元に布を当てて花粉を吸い込まないようにしている。

 気休め程度にはなるといいんだが……。


 気付け薬の効果はしっかりと出ているようで、しばらく歩いていても眠気はやってこなかった。

 とりあえずこれなら問題なく進むことができそうだ。





(しっかしおんなじ景色が延々と続くと……流石に気が滅入りそうになな)


 帰りの際に道に迷わないよう、目印として樹に傷をつけながら歩き続ける。

 念のために口元に布だけ巻いているスカイの方も問題はなさそうだった。


 スリーピィトレントを討伐するためには、他の樹をスリーピィトレントに変えた最初の一本――マザートレントを倒す必要がある。

 樹は密生しているとはいえ、俺達が通れるくらいには隙間もある。

 目立つ樹があれば見えてきてもおかしくないと思うんだがな……。


 それから歩いていくことしばし。


「おいおい、嘘だろ……」


 間違いなく真っ直ぐ進んでいたはずだ。

 にもかかわらず……なぜか俺の目の前には、傷のついたスリーピィトレントの姿があった。

 間違いなく、さっき俺がつけたものだ。


 ということは同じ場所をぐるりと一周してもらったことになる。


 それならばと今度はスカイに空から偵察をしてもらいながら、細かく確認をしながら歩いていくが……結果はまたしても同じ。

 また同じ場所へ来てしまっていた。


「おいおい、どうすりゃいいんだよ……」


 自慢じゃないが、俺は自分の方向感覚には結構自信がある。

 もしかするとスリーピィトレントの森には、方向感覚を狂わせる効果があるのかもしれない。たしかにそんなものがあるなら、気付け薬を持っていても対策はできない。


 同業者がこの魔物の討伐依頼を受けようとしない理由がわかった気がした。


(とりあえず……このまま同じ場所を何周もしていても埒があかない。一旦戻って作戦を立て直そう)


 俺は念のために用意しておいたある魔法陣に発動ギリギリまで魔力をこめながら、再び歩き出す。


「きゅう……」


 見ればスカイはどこか元気がないようだったので、強壮剤を飲ませてやる。

 俺も一本使ってからあたりを歩き始める。

 そして歩いていると……突如としてがくりと身体から力が抜ける。


(マジかよ、気付け薬の効果は効いてるはずだぞ!?)


 スリーピィトレントが使ってくるのは眠りと幻惑の状態異常だけだったはずだ。

 この二つの薬で防げないはずがない。


 だとすればもしかするとこいつは……スリーピィトレントの特異種なのか?

 行く場所行く場所で特異種に出会うとは……もしかすると俺は呪われているのかもしれない。


「――ちいっ、間に合うか!?」


 俺はすんでのところで魔法陣に残る魔力を流し込んだ。

 それが間に合ったかどうかを確かめることもできぬまま、俺は夢の世界へと落ちていくのだった……。


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