vs『綺羅星』 後編
剣を水平に構えながら、相手の攻撃を受けていく。
相手の攻撃手段は剣に留まらないため、手数の差は圧倒的。
故に受けるのではなく、流す。
最低限の動きで最大限の効果を出すために攻防一体となる動作を積極的に使用していく。
だがそもそも身体強化の出力はアレクセイの方が高く、また相手のブロックの攻撃も食らってしまうため必然俺ばかりが手傷を負うようになっていく。
周囲からはやっぱりこうなったか……といった感じのため息が聞こえてくるのがわかる。
(なるほど……見えてきたな)
俺は自律魔法を使うことなく、ただひたすらに見に徹していた。
そのおかげで相手の攻撃パターンがおおよそ見えてくるようになる。
まず大前提として、アレクセイは軽戦士型の魔法剣士だ。
得意とするのは土精魔法、その中でも土を生み出すより今ある者を操作する方面を得意としているようだ。
得物の片手剣は、どちらかと言えば手数を重視。
そしてその威力の低さを補うために、死角を土精魔法で潰す。
(だったら空いてる手の方へ攻撃を加えればいいと思い攻撃をしても……)
アレクセイの左側へ回り、片手剣の範囲から逃れたところから一撃を叩き込む。
すると割り込むように飛んできたブロックがその表面を薄く伸ばしながら、即席の盾となって攻撃を防いでみせた。
(土のブロックを使って防がれる)
盾となったブロックには、妙に粘り気があった。気にせず切り払うとわずかに動きが鈍る。 するとその隙をつくように硬質なブロックがこちらに襲いかかり、腹部を強撃してみせた。
「……存外粘るな。流石は腐ってもCランク冒険者、ということか」
アレクセイは盾を持たず、土そのものを防御手段として用いることもできる。
強い一撃を入れるとわかれば複数のブロックを防御に回されれば、しっかりと攻撃を受けきられてしまう。
俺が放つことのできる全力の振り下ろしでも、この防御壁を貫通するのは無理そうだ。
なるほど、これは本人も言う通りたしかに『攻防一体』だ。
更に言えばアレクセイは土を同時に操作するだけでなく、その形状や粘度も変更することができる。
ブロックを切り払おうがすぐにくっつけられてしまうし、斬る時の感触も細かく変わるため妙に感覚を狂わされる。
恐らく本気で攻撃をする際には、土を針のようにして飛ばしたり、鋭利な形状に変更して刃物のように振るうのだろう。
(流石はBランク冒険者……ただ、つけいる隙はある)
人間には脳みその都合上、処理能力に限界がある。
どれだけ土精魔法に熟達していようとも、八つのブロック全てを自分の手足のように動かすことはできていないのだ。
恐らく任意に動かすことができるのは三つ前後で、それ以外のブロックは防御なら防御、攻撃なら攻撃とあらかじめ決めている行動をオートで取っているようだった。
敢えて攻撃を食らうことで、オートでのブロックの動きもおおよそ掴めてきた。
あそこをかいくぐって一撃を加えることはできる……はずだ。
俺は傷を負い何度もブロックを叩きつけられながら、千載一遇のチャンスを探っていた。
自律魔法による勝負は、基本的に一撃でつけるのが好ましい。
頬に受けた一撃で切れたのか、口の中は鉄さびの味がした。
「ちっ、だが……これで終わりだっ!」
埒があかないと焦れたアレクセイが、こちらに飛び込んできた。
彼の周囲を回るように八つのブロックが踊り出す。
形状を変えているブロックは四、周囲を周回しているものが四。
よし、これなら――いけるっ!
まずはオートで動いているブロックを受け流す。
流された側から後ろへ戻り再射出されるが、それらも問題なく弾いていく。
ただマニュアルで動いているものはかわしきれず、何発もいいのをもらってしまった。
より衝撃が通るようにか球場に変わった土塊を頭にもらうと、思わず身体がふらついて倒れそうになる。
その隙を狙い、しゃがみこむような前傾姿勢になっていたアレクセイが剣を振り上げる。
俺の胸を裂くような一撃だ、全力を出しているからか結構シャレにならない威力が出ている。
だがこの程度なら問題ない。
自律魔法『千編の鎧』を発動させ、アレクセイの一撃を完全に防いでみせた。
生み出された鎧を構成していた光は花吹雪のように散っていき、アレクセイの振り上げは弾き飛ばされる。
一撃をすかされ、上体が無防備になった。
その隙を消すために一斉にブロックが飛んでくる。
それに合わせ、手に持っている剣すらもこちらへと飛んできた。
……柄に土でも練り込んであるのかもしれないな。
だがその全ての攻撃を『対価の鎧』を発動させ弾いた。
発動までに時間がかかり発動中は他の魔法は使えないというデメリットこそあるものの、あらゆるものを寄せ付けぬ圧倒的な防御力は強力にして無比だ。
『対価の鎧』が切れる頃には、手を伸ばせば触れられところまで近付けた。
この距離なら――外さない。
「『茨の棘』」
俺はポケットに入れている魔法陣に魔力を注ぎ込み、術式を発動させる。
透明なトゲ付きの茨が、触れるほどの距離に近付いたアレクセイの全身を縛り付ける。
突如として感じるダメージと拘束感にアレクセイがひるむ。
そのチャンスを逃さぬために、新たな布に魔力を注ぎ込む。
この後の魔力消費を考えなくていいからこその大盤振る舞いだ。
俺は周りに聞こえないほどの小声で、その魔法の名を唱えてみせた。
「『汚泥の縄』」
魔法が発動し、アレクセイの全身が縛り付けられる。
自律魔法、『汚泥の縄』。
この効果は簡単で、ただ相手を束縛することのできる縄を発生させるというもの。
ただしこの縄の強度は、己が受けたダメージに比例して強くなっていく。
汚泥をすすった敗者の拘束は、勝者すら縛り付けて放さない。
「くっ、なんだこれは、くそっ……」
アレクセイが必死になって拘束から逃れようとするが、『茨の棘』によって動けば傷がつき、『汚泥の縄』によってほどけぬ拘束をつけられた上体では、ただ陸に揚げられた魚のように跳ねることしかできない。
俺はそんなアレクセイの首筋に、ピタリと剣を押し当てた。
「そこまでっ! 勝者アルド!」
勝負は決まったと判断したのだろう、受付嬢の叫び声が聞こえる。
そして数拍遅れて、己の持っている券がただの紙切れになった冒険者達の怒号じみた悲鳴が練兵場を満たした。
「きゅっ!」
「おっと」
はらはらした様子でこちらを観戦していたスカイが勢いよく飛んできたので、抱き留めてやる。
「ふぅ……なんとかなったな」
こうして俺は無事決闘に勝利することに成功し、王都の冒険者達から一目置かれる存在になるのであった――。
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