真価
「さて……どうするか……」
一通り試し終えてから、俺は『止まり木亭』へ帰ってきていた。
少し落ち着いて考えたいと思ったからだ。
幸いエヴァは帰ってきておらず、ゆっくりと落ち着くことができた。
「とりあえず……飯食うか」
狩りをして満腹なスカイと違い、俺は対して上手くもない携行食料をいくらか食べただけなのでめちゃくちゃ空腹だった。
腹が減ってはなんとやら、頭を回すためにも食事を胃の中に詰めていく。
(自律魔法は魔力さえ流せば誰でも使える……けどまさか、魔物も使えるようになるとは)
飛行ユニットを手に入れるための飛竜の子が、まさかこんなことになるとは。
嬉しい悲鳴というやつなのかもしれないが、自律魔法こそが寄る辺の俺としては少々複雑な気分である。
スカイは俺なんかよりはるかに上等な脳みそを持っているらしく、一度魔法陣を見せればそれをあっという間に使えるようになった。
ただ簡単な紋章であれば覚えることができるが、難しい紋章となると固定化させて空中に滞留させるまでに魔力が流れていってしまうため、使うことはできない。
また、俺の持っている魔法陣に魔力を流し込んでも自律魔法は発動しなかった。
どういう原理なのかはよくわからない。
恐らく魔精魔法が精霊魔法によく似た別のものであるのと同様、スカイが使う自律魔法もまた自律魔法によく似た何かなのかもしれない。
見た目と威力が完全に一致しているから、ほとんど同じようなものだとは思うんだけどな。
今のところは簡単な自律魔法がいくつか使える程度だが……多少効果を落とす代わりに魔法陣の構築を簡素なものに俺の方でデチューンしてやれば、まだまだそのバリエーションは増えるだろう。
これは特大の爆弾ではあるが、同時に鬼札にもなる。
相手もまさか飛竜が自律魔法を使うとは思ってこないだろうから、間違いなく不意をつくことができるはずだ。
初見殺し、わからん殺しの多い自律魔法ならば、不意をつくのにはうってつけだし。
ただそのためにはいくつか取り決めをしておかなくちゃいけない。
もちろんスカイは聡明だから、理解してくれるとは思うけどな。
「スカイ、今日教えたあれは俺が許可するまで使うのは禁止だ」
「……きゅうっ?」
『なんで?』という感じで首を傾げられる。
たしかに飛竜側からすると理屈がわからないかもしれないな。
「あれは自律魔法と言ってな、本来であればごく限られた人間しか使うことができない技なんだ。それをスカイが使えるとなると、多分……どこかに連れて行かれて、俺とは離ればなれになると思う」
「――きゅきゅっ!?」
『そんなのやだ!』と思いきり抱きついてくる。
その頭を優しく撫でながらもう一度言うと、俺の許可が出ない限りは、絶対に人目につかないところでしか魔法は使わないよう約束してくれた。
これくらいしっかり言い含めておけば大丈夫だろう。
実際問題、自律魔法の使える飛竜ってどれくらい脅威認定されるんだろうか……。
飛竜の凶悪な性能に自律魔法の意地悪さが加われば、かなり強くなるのは間違いない。
とりあえず戦力の底上げのためにも、スカイに有用そうな自律魔法も見繕わなくちゃいけないな。
俺は自律魔法を大量に使えることをあまりおおっぴらにはできないので、その辺の冒険者とパーティーを組むのは難しい。
そのせいで足りなかった手数を、自律魔法を使えるスカイなら補ってくれるかもしれない。
スカイに出会えたのは、記憶を取り戻したことの次くらいの幸運だった。
幸せを噛みしめながら思いながらスカイの脇腹をくすぐってやる。
「おりゃっ、こちょこちょこちょっ」
「きゅうきゅうっ!」
楽しそうに鳴いているスカイとしばし戯れていると、隣から物音が聞こえてくる。
どうやらエヴァの方が帰ってきたようだ。
気にせずスカイと遊んでいると、控えめなノックの音。
ドアを開ければそこには、装備をつけたままのエヴァの姿があった。
「今……ちょっといいかしら?」
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