前世
「きゅっきゅきゅーっ!」
スカイはイノシシの魔物であるグレイトボアーを倒し、勝ちどきを上げていた。
心なしか、獲ったどーといっているように聞こえてくる。
スカイのその足下には、自身の身体より大きいイノシシが倒れている。
スカイの育成の方は順調で、最初は戦うことに抵抗のあったスカイも今では普通に魔物を狩ることができるようになった。
今では中型くらいまでの魔物なら問題なく倒すことができる。
「きゅっ! ……きゅう~っ」
スカイがグレイトボアーを頬張り始める。
どうやらモツが美味しいようで、食べる度に目を細めながらしっかりと味わっている。
俺が育てているせいか、どうにも人間くさい所作をするようになってきている気がするな。 別に悪いことではないんだろうけど。
既に日も暮れ始めているので、今日はこのあたりで夜営することにしよう。
スカイが戦っている間に集めていた火口と枯れ枝を規則的に並べ、火精魔法を使って点火していく。
火精は適性が高くないせいか、点火するだけで自律魔法何発分もの魔力を持っていかれるんだよな。
「きゅっきゅっ!」
スカイが臓物を食べ尽くしたグレイトボアーを引っ張ってくる。
人間のいる街で暮らしているおかげで、素材が調理によって化けることを覚えている。
グルメになりつつある腹ぺこ飛竜に、大きめの肉塊を切り分け、軽く炙ってから渡してやる。
表面だけをさっと焼いたほぼ生のレアが、スカイの一番好きな焼き加減だ。
「きゅんっ!」
ワイルドに肉塊を頬張るスカイ。
ちなみに俺達も食べていいと必死にジェスチャーで伝えてきたので、ありがたくご相伴に預からせてもらう。
串に肉を刺して焼いていると、フェイトの視線が肉ではなく火に固定されていることに気付く。
「はあぁ~、やっぱり精霊魔法って便利だよねぇ……」
そう口にするフェイトは、炎をジッと見つめていた。
その圧倒的な身体強化で鉄より固い魔物を殴り殺せる巨人族にも、当然ながら欠点がある。
――巨人族は精霊に嫌われているため、身体強化以外の精霊魔法が使えないのだ。
たしか公式設定だと、体内の精霊と外に居る精霊の中が悪いから……ということだったか。
一応自律魔法は使えるんだが、比較的新しく王国に所属するようになった巨人族に貴族がいないからな。
必然的に自律魔法使いもいないというわけだ。
そんな体質のせいで巨人族は生活のためには、魔石を使って魔法的な効果を発揮させる道具――魔道具を使う必要がある。
あ、ちなみに魔石は魔物から採れる。
俺達冒険者がお目こぼしされてるのも、いくらあっても困らないエネルギー源の供給をしているからという部分も大きかったりする。
ちなみに大して強くない魔物の場合、魔物の部位の中で一番高く売れるのは魔石だ。
ゴブリン討伐してからの魔石をほじくるのはそれはそれは大変だったよ……(遠い目)。
「そういえばフェイトの故郷には魔法使いはいなかったのか?」
「いないよ。そもそも巨人族しか住んでない隠れ里みたいなところだったから」
「……そうだったのか」
フェイトの故郷はかなりの田舎で魔道具の整備もできないようなところだったらしく、未だに火打ち石で火を起こすようなかなり原始的な暮らしをしていたらしい。
巨人種や龍人種、エルフ種などの特殊な種族の中には、未だに人間との関わりを持とうとしない者達もいる。
フェイトはそういうのが嫌で、故郷を飛び出してきたクチらしい。
フェイトは背負っていたテントを取り出し、設営を始めた。
俺の方も夜営の準備を整える必要があるんだが……そのためには『悪魔の箱』を出す必要がある。
フェイト相手に今更隠す必要もないため、普通に使わせてもらう。
おどろおどろしい宝箱のような見た目をしている『悪魔の箱』が突然現れたことにフェイトは仰天し、そしてその中から生活用品が飛び出したのを見て更に仰天した。
「ねぇ先生、やっぱりそれって……」
「……ああ、そうだ。自律魔法だよ」
二人でテキパキとテントの準備をしてから、一度きちんと話をしておくことにする。
あの時俺が自律魔法を使っているのはもう色んなやつらに見られている。
自分から吹聴する必要もないが、下手に隠し続けて妙な疑いをかけられるのも面倒なのである程度は周知してもらうつもりだ。
ちなみに、一応ある程度のカバーストーリーは作っていた。
表向きのやつと親しいやつ向けの二つをな。
え、フェイトにはどっちを話すのかって?
そりゃ……。
「――前世の記憶を取り戻してな。使えるようになったんだ」
後者だよ、わざわざ言わせんな。
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