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野性を取り戻せ!


 マジキン知識としてテイムの方法を知ってはいても、俺はこの世界での一般的な飛竜の子の育て方を知っているわけではない。


 ただ一つ間違いないのは、多分だが生後一ヶ月のスカイは竜騎兵が育てている飛竜と比べると、大分甘やかされた育てられ方をしているということだ。


 しつけのやり方とかもまったくわからなかった俺も悪いんだが……こんなことになるんなら、前世でペットの一つでも飼っておくべきだったかもしれない。


 その見た目がファンシーなせいで、スカイは飛竜にもかかわらず皆からの愛情を受けてすくすくと育っている。


 もちろんそれは悪いことではないんだが……俺がこいつに求めているのは飛竜の持つ飛行能力と高い戦闘能力だ。


 このままでは狩りの一つもできない軟弱飛竜になってしまう。

 ということで気合いを入れるために、スカイ育成プログラムを発動させることにした。


「では何からやるんですか、先生!」


「ああ、まずは弱い魔物を探す。戦っても負けなさそうなやつをしっかりと狩って、得物を得る喜びを教え込むんだ。というわけで早速行くぞ!」


「サー、イエッサー!」



 なぜかノリノリで手伝ってくれるフェイトと一緒に、スカイの獲物になりそうな野生動物を探していく。


「きゅうっ?」


 パタパタと翼を動かしながら宙に浮かんでいるスカイは、不思議そうに首を傾げていた。

 どうやら何をするのか、まだわかっていないようだ。


 にしても、こいつはこの翼の大きさで、なんで空を普通に飛べてるんだろうか。

 多分魔法を使ってるんだろうけど……見れば見るほど、不思議な生き物だよなぁ。


 自律魔法の『光点探査(アービキュラ)』を使えば魔力のある魔物を探すのは簡単だ。

 捜索は一瞬で終わるので、厳選して手頃なやつを見つけることまでできた。


 俺達が栄えあるスカイの最初の獲物のは……一角ウサギという魔物である。


 こいつは名前そのまま、額に角がついているウサギだ。

 サイズは普通の野ウサギとそう変わらず、体重を乗っけて放たれる角の一撃さえ食らわなければ比較的簡単に狩ることのできる、駆け出し冒険者御用達の魔物である。


「ぴいっ!」


「ほいっと!」


 一角ウサギの一撃をひょいっと避けたフェイトは、そのまま両手でウサギの首元を掴む。

 こうすれば角を振り回すこともできないため、完全に無力化ができるのだ。


 俺とフェイトは向かい合い、そして頷き合う。


 俺は空を飛んでいるスカイのお尻を押し出し、フェイトは窒息しかけていた一角ウサギを地面に放つ。


「きゅう?」


「ぴっ!」


 向かい合う形になったスカイと一角ウサギがお互いに視線を交わした。

 スカイは首を傾げ、ウサギは小さく鳴いた。


 お互いが近付いていく。

 そのままスカイは相手に首筋を見せた。


 何度か見たことがある、スカイの親愛表現の一つだ。

 ……いや、なんで親愛表現?


 ウサギは出された首筋に思い切り鼻をこすりつける。

 そしてそのまま……角を振り回してスカイに攻撃を加えた。


「きゅいいいっっ!?」


 いきなり攻撃されて驚いたスカイが、大きく後ろに下がる。

 その隙だらけの様子を好機と見たからか一角ウサギは駆け出し、スカイ……ではなく反対側に駆けだした。


「ぴっ!?」


 そして逃げ出すことがないよう、『茨の棘』を使って作られた即席のロープに引っかかり、ひっかき傷を作る。


 逃げだそうとしていたウサギは、逃げ場がなくなったことを理解し、目の前にいるスカイを倒すべく駆けだし始めた。


「ぴいっ!!」


 一角ウサギはリングの端ギリギリまで行ってから、助走をして勢いをつける。

 そして一番前に向けている頭を使い、頭突きを放った。


「きゅっ!」


 スカイはその一撃を――空を飛んで避けた。


「おおっとスカイ選手、ここで空に飛んだあっ! 地面をいかに早く駆けることができる一角ウサギであっても、空に逃げられてしまえば打つ手がない! 一角ウサギ選手、万事休すか!?」


 なぜか実況を始めたフェイトのことはおいておき、戦いを見つめる。

 一度空に上がったスカイはパタパタと翼をはためかせながら、ジッとこちらを見つめていた。


 何をすればいいかわかっていない様子だったので、俺はなるべく甘くならないようにしかめ面を作る。


「スカイ、これが今日のお前の餌だ。もし倒せないなら、今日はご飯抜きだぞ」


 人間の言葉を理解できるらしいスカイは、その言葉を聞いてがびーんと絶望の表情を浮かべた。

 それからそっと、下に視線を下ろす。


 そこには殺意マシマシで、スカイに角を突き刺してやろうとぴょんぴょんと飛び上がる一角ウサギの姿があった。


 親愛表現を仇で返されたことを思い出したのだろう。

 スカイの瞳に決意の炎が宿る。


「きゅっ!!」


 バサッと大きく翼を動かし、急降下を開始。

 そして一角ウサギの手前で、大きく口を開いた。


「きゅああっっっ!!」


 スカイの口から、透明な何かが飛び出す。

 あれは……魔力の塊か?


「おおっとスカイ選手の必殺技だぁっ!!」


 魔力の塊は一角ウサギへ激突。

 軽い爆発を引き起こし、ウサギをリングの端まで吹っ飛ばした。


「一角ウサギ選手ダウーン! ワン、ツー、スリー……試合終ー了っ!」


 一撃を食らい完全に気を失っているウサギの下へ、パタパタと飛んでいく。

 もう一度こちらを見るスカイに、俺はきっちりと頷いてやった。


「きゅ……きゅっ!」


 すると覚悟を決めた様子のスカイが、一角ウサギの喉元に噛みついた。


「きゅうっ!」


 殺生への忌避とかは別にないらしく、ら美味しそうにらしく、バリボリと骨ごとウサギを頬張り始める。

 どうやら角は食えないらしく、吐き出していた。


 ぺろりと一匹を平らげてしまったスカイに近付いていき、べったりと口の周りについてやる血を拭ってやる。

 これで少しは野性を取り戻せた……かな?


「良くやったな、スカイ」


「――きゅっ!」


 こうしてスカイは初めての戦いに無事に勝利することができた。

 獲物を己の力で手に入れる喜びを知ったスカイは、今までの遅れを取り戻すかのように、王都に向かうまでの道中で次々と魔物を仕留めてみせるのだった。


 おじさんは、スカイが成長してくれて嬉しいよ……年を取ったせいで、最近どうにも涙腺がゆるんでいかんな。


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