悪魔の箱
旅の準備自体は、あっという間に終わった。
とりあえず不測の事態が起きた時のために食料は多めに、テントや着替えなどの生活用品一式を揃えていく。
少しスパルタだが、スカイの食料は現地調達するつもりなので最低限にしておく。
こいつ、ファンシーは見た目なのに食事の量はしっかり飛竜なんだよな。
「しっかし……ちょっと買い込みすぎたかな」
大金を手に入れて財布の紐が緩くなったのもあって、買い集めた物資の量が思っていたよりも大分多くなってしまった。
下手に記憶を取り戻したせいで、以前より清潔に関する基準が大分厳しくなったのも結構デカい。
記憶を取り戻すまでは何日同じ服を着ても平気だったが、少なくとも今は毎日着替えてしっかり水浴びをしないとどうにも落ち着かないんだよな。
ちなみに金に余裕があるから、石けんや着替えのパンツなんかもしっかりと用意してある。
獣臭いのも苦手だから、スカイもしっかりと洗ってるぞ。
ちなみにスカイはお湯よりも水を浴びる方が好きだ。
必要だと思うほど物を取り揃えると、当然ながら鞄の中に入りきらないほど大量になった。 今、それら全てが床の上に並べられている。
けどまぁ、荷物はどれだけ増えようが問題はない。
「『悪魔の箱』」
魔法を発動させると、影から荷物を全てを包み込めるほどに巨大な黒の宝箱が飛び出してくる。
そして得物を狙う魚のように荷物を全て飲み込むと、そのままバタンと口を閉じる。
宝箱はそのままズズズ……と影の中に沈んでいき、そのまま消えていった。
自律魔法『悪魔の箱』。
こいつは簡単に言えば、真っ黒な宝箱の中に荷物を収納できる魔法だ。
取り出すためにいちいち魔法を使い箱を出し入れする必要があるのと、最低でも毎日一度は取り出さないとそのまま荷物が影取り込まれてしまうというデメリットがあるが、前世の小説でいうところのアイテムボックスのような形で使うことのできる魔法である。
さて、これで準備は完了。
王都での暮らしがどれくらい長くなるかはわからないけれど、まぁそれほど長くはならない予定だ。
別に別れの挨拶とかはしにいく必要ないだろ。
リエルやフェイトに話して、下手についてこられる方が面倒だしな。
日が暮れる前にさっさと街を出ようとドアを開くと……なぜかそこには大きなリュックを背負っているフェイトの姿があった。
「話は聞かせてもらったよ! 僕もついていく!」
「……一体どこから嗅ぎつけてきたんだよ」
「Bランク冒険者の力を舐めないことだねっ!」
なるほど、どこかで聞き耳を立ててた冒険者から話を聞いたんだろう。
自律魔法をガンガン使うつもりだったからなるべくなら同行者は連れてかないつもりだったんだが……既にある程度力を見せてるフェイトならいいだろう。
「旅の道中、詳しい話を聞かせてもらうからねっ!」
「……ああ、わかったよ」
根負けした俺は同行をなくなく受け入れることになり。
俺達は二人と一匹でルテキの街を抜け、王都へと歩き出すのだった。
街を抜け出した俺達は、早速かねてからの懸念を払拭することにした。
それはもちろん――スカイの野性復活プログラムである!
「きゅうううううううううううっっ!?」
広い草原に、戸惑うスカイの叫び声が轟く。
俺を恨むなスカイ、全てはお前を思ってのことなんだ……。
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