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大賢者の千年紀  作者: テディという名の虎
1/1

異世界に転生して大賢者と呼ばれた男、千年後に魔王を追って現代に戻ってくる

⚫︎リエアルス暦 1225年 魔王城最下層ーー


「あと少しだ! みんな、力を振り絞れ!」

 大きな広間。そこには豪華な玉座しかない。その玉座の前で魔王サデティヴァルンはパーティの前に立ちはだかっていた。

 とはいえ、そのサディティヴァルンは4本あった腕の3本を失い、全身は傷だらけ。部下であった四天王もすでに滅ぼされていた。

「最後だ! 全ての補助魔法を攻撃に全振りで頼む!」

「わかった!」

 僧侶や魔法使いらしきものたちが呪文のようなものを唱えると最初の声をかけた男に光が集まっていくーーー

「行くぞ!」


『まさかここまで強いとは…』

 魔王サデティヴァルンは焦っていた、ここまで勇者と呼ばれたパーティに追い詰められたことを。今代最強の魔王と呼ばれ、前勇者をも返り討ちにしその勢力はリエアルスの半分にも届いていた。なのにーーー

「まだだ、我は最強の魔王! ここで滅んでいいわけがない。いい訳がないんだーー!」

 魔王が絶叫したその時、魔王の胸から、黒い宝石のようなものがゆっくりと現れた。

 宝石は周辺の空気を吸い込み始め、やがて人1人通れるような空間を作り出したーーー


「ふ、ふはははは…!!」

 サデティヴァルンは高笑いしていた。

「なんだ!?この空間は! おおっ、何かが見えるぞ。違う世界のようだ」

 この空間の先に別の世界があった。魔王の目には緑の大地と青い空、広い海が見えていた。

「まだ我は見捨てられておらんーー」

 サデティヴァルンは勇者たちパーティを一瞥し、

「ここでお主らに負けるのは癪だが、この世界はくれてやる。我は違う世界で魔王になるとしよう」

 そう言うと魔王は空間の中に吸い込まれていったーーー


「逃げられ、た?」

 最初の声の男は振り絞るように言った。魔王が消えてしまい大広間に自分達パーティだけとなって力が抜けてようで急に崩れ落ちて剣で身体を支えるのがやっとのようだ。

「大丈夫?アレン?」

「ああ、エリス」

 僧侶風の格好をした少女エリスがふらふらと駆け寄った。彼女も限界なのだ。

 アレンは考える。魔王サデティヴァルンはリエアルスからはいなくなった。しかしーーー

「勇者アレンは魔王を撃退したってことであろう?」

 竜の顔をした人型の種族、竜人はやれやれと言った表情でそう言った。しかし勇者と言われた男、アレンはまだ考えていた。そしてぼそっと、

「確かに、魔王はいなくなった。でも違う世界で魔王になる、とも言っていた。この世界が平和になるのは嬉しい。でもそれでいいのだろうか…」

 そんなアレンの独り言をよそに、

「俺は竜人の長として里の皆が暮らせる世界を守れたら良いのでな」

「ガリウスはそれでいいけど、アレンはそういうことを考えているんじゃないってば!」

 先の僧侶が竜人ガリウスに突っかかる。

「言いたいことはわかっておる。しかしどうすると言うのだ?」


 皆が黙ってしまったその沈黙を破ったのは小柄な少年、ホビットの一言だった。

「まだあの空間の歪みみたいなのが消えないね」

 その声に歪みにゆっくり近づく背が低いが筋骨隆々の男ドワーフが覗き込んで言った。

「ふむ、もう先ほどのように吸い込んだりはしないようじゃ。ミントの言うようにすぐには消えぬようじゃの」

「ダゴス、何か見えるの?」

 ホビットのミントが聞いている。ドワーフのダゴスは目を凝らして続ける。

「確かに中に違う世界が見えるのおーーー」


「本当に違う世界に行ったってことかーーー」

 アレンはため息まじりにそう言った。しばらく沈黙したあと、長い銀髪の長身の男の方に顔を向けて言った。

やはり魔王を放っておけません。ここが平和になっても次の世界というところが魔王に苦しめられるというは違うきがするんだ。師匠、どう思いますか?」


 私はアレンの顔をじっと見つめた。

 勇者とは魔王を倒すもの。アレンは魔王を倒そうとするのはごく自然なこの世界の理

 だが、アレンの理由はそれだけではなかった。父である前勇者を魔王に殺されているのだ。彼にとって魔王は仇でもあった。もし、復讐の気持ちで魔王のいる世界まで乗り込もうとするのであれば止めるところだが、私を見つめるアレンの瞳は透き通っていてまっすぐだった。

 前勇者よ、お前の息子はいい勇者に育った。


「わかった。行こう。だが、このまま乗り込むのは危険だね。」

 私がパチン!と指をならすと、黒ずくめの男が現れた。

「今あるだけの回復ポーションを用意してくれーー」


「よし、行くか」

 アレンの掛け声と共に空間の歪みに向かう。歪みは人が近づくとその大きさを変えてアレン達一行を飲み込んでいった。

 歪みの中は短い距離だがトンネルのようになっていた。だが壁のように見えるものは触れることができなかった。この空間自体を私は調べてみたくなったが今はその時ではなかった。先に光り輝くところがあり出口のようになっている。

 アレンは駆け足でひとり向かっていこうとするのでみんなが慌てて着いて行く羽目になった。そしてーーー



 出たところは山の頂上のようだった。山の内側は大きくへこんでいて煙が出ていた。火口付近かもしれない。そして山の外側は、雲が海のようにゆっくりと流れていてその下の方に微かに地表が見える壮大で綺麗な景色だった。

「かなり高いところだね」

 ミントが感心している。エリスはこの風景に見とれているようだ。

「少々寒いがの」

 ガリウスは少し寒そうだ。竜人は暑さ寒さには強いのだが、ヒト族の気持ちをいってみたようだ。

 みんなが思い思いに風景を楽しんでいる間、私は不思議な気持ちでいた。この風景は見覚えがある。いつだ? リエアルスではない。だとしたら1000年以上も前の時、それは前世の記憶ーーー


 もう遥か昔のことになってしまったが私には地球というところで平凡なサラリーマンとして生きていた記憶があった。仕事帰りの深夜に蛇行運転をしていた車に轢かれて死んでしまったようでリエアルスに転生したーーー

 あれから1000年が経ち、すっかり忘れていた風景。そう、ここは地球だ。

 1000年もの前にすっかり忘れていた記憶が色鮮やかに蘇り出す。そしてーーー

 つう、と涙が一筋こぼれ落ちていた。二度と戻ることはないと思っていた場所にこのような形で戻ってくることになろうとは考えもしなかった。

 しかしなぜ?



 !!

 アレンが空を見上げた。何かに気づいたようだが私の広範囲探知には何も反応がない、というか何か感覚がおかしいーーー

「ドラゴン!」

 目を凝らすと確かにドラゴンだ! ここが地球ならドラゴンなんているはずがない。地球に存在しない生き物。どういうことなんだろう? しかもここまでの接近に気づかないことにも違和感がある。

 魔王がきたことと関連性が? いや、来たばかりでわからないことだらけだ。


 しかし一行には考えている暇はなかった。あの赤黒い所々骨が見えるあの巨体、ドラゴンゾンビだ。誰彼構わず襲う危険な魔物だ。


「アレン! 見学は終わりだ。あのドラゴンゾンビをやらないといけない」

「ああ!」

 この山の頂上で足場は悪いがあれくらいなら問題ない。すぐさま無詠唱で炎を作り出そうとした瞬間!

 炎が突如暴発し、巨大なうねりと共に消えてしまった…

「ふえっ!?」

 あまりの出来事に気の抜けて声が出てしまった。


 どういうことだ? それから何度かマナを集めて何かを形作ろうとしてみたがマナがうまく集まらない。こんなことはリエアルスで初めて魔法を使った時みたいだーーー


「みんな! この世界はリエアルスのマナと何かが違う! だから魔法が上手く作動できない! マナに頼らず己の力だけで戦うんだ!」

 アレス達はきょとんとしたが、少ししてその意味に気付いたようで

「とりあえず今はマナは使えないみたいだ。スキルを駆使して戦うぞ!」

 アレスは言うや否や剣を横殴りに大きく振るった。剣先から無数の風の刃がドラゴンゾンビに飛んでいく。スキル かまいたち!

 しかしまだ距離が遠く届かない。今の状態では力の行使にマナが必要な僧侶も竜人も役に立てない。

「やれやれ、儂の出番かのう」

 ドワーフのダゴスがゆっくりと前に出る。そして体よりも大きな槌を肩に担いで握り部分にある突起を押した。

 ゴゴゴゴゴ…槌はパズルのように形を変えていく。

「くらえい! トールハンマー!」

 巨大なバズーカのように形を変えた砲身から電気の塊のようなものがドラゴンゾンビに向かって射出された!

 超高速で打ち出された光弾は見事ドラゴンゾンビに命中し、当たった瞬間にものすごい電撃が襲う! ドラゴンゾンビは感電したように黒焦げになって雲海の下に落ちていった。


「いっちょ上がりじゃな」

 満足げなダゴス。しかしーーー

「どこに落ちた?」

「雲の下じゃからのう。だがあの電撃じゃ、生きてはおるまいよ」

 ドヤ顔でホビットのミントと話している。雲の下に目を凝らしてみると雲の切れ目から炎や煙があちこちから上がる地表が遠くに見えた。すでに被害が出ていたのか…


「ドラゴンゾンビは地上をもう荒らしていたようだ。この世界には人が沢山いる。どれぐらいの被害が出ていることか」

「ん? 人が沢山いるとなぜすぐにわかったんじゃ?」

 ダゴスが私の言葉に反応した。このジジイは大雑把そうで細かいところをよく捉えている。

「ここはーーー」

 下からバラバラバラ…とプロペラの回転する大きな音がいくつも聞こえて私の声をかき消した。大型の軍用ヘリだ。昔なら目を輝かせていたことだが、このタイミングは…

 ヘリは山の頂上の平地らしきところにゆっくりと降下し、中から軍服の男達が出てきた。もちろん銃を持って。そして私たちに銃を構えたまま近寄ってきて

「あの竜種を堕としたのはあなた達ですか?」

 それは1000年ぶりの流暢な日本語だったーーー


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