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マジカル CITY POP!  作者: 地球と月と天王星が紡ぐロマンスを見上げて夢抱いた少年は空っぽの世界で文字だけを追い続けた
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B WORKING DEAD

焦土にポツンとオレンジ色の小さなテントが立っている。

他には何も見当たらない。


スケキヨ「生きてる?」


しらせ「おはよー。どした?」ひょこ


スケキヨ「仕事」


しらせ「えー」


スケキヨ「断って遊びに行こうぜ」


しらせ「内容による。私はお前を甘やかさないからね」


スケキヨ「ちぇ」


しらせ「私のとこにもギルドからメールきてたわ。て、夜中の三時かい。バカじゃないの」


スケキヨ「緊急事態だって。昨日の夜めっちゃ電話きたけどスマホの電源切ったから分かんなかった」


しらせ「あはは!そうそう、私も電源切ったんだった!て笑い事じゃないよ!!」


スケキヨ「そだなー」


しらせ「もうお昼前だし、この仕事は終わってるでしょうね」


スケキヨ「それが、さっきまた電話きた」


しらせ「先に言いなさいよ!」


スケキヨ「だから、わざわざ呼びに来たんじゃん」


しらせ「遊びの誘いにきたの間違いでしょ」じとー


スケキヨ「で、どうすんの」


しらせ「そうよ。あいつは?あいつが電話受けたんでしょ」


スケキヨ「ああーあいつクズだから、言い訳して遊びに行った」


しらせ「あんにゃろうめ……!仕事なめんなよ!稼いで家建て直さなきゃなんないのに!」


スケキヨ「それお前の問題じゃん」


しらせ「歳上に向かってお前って言わないの。あいつみたいなクズになりたいの?クソガキからクズに堕ちたいの?」


スケキヨ「クソガキじゃねーし!クズにもなりたかねー!」


しらせ「なら仕事に行くよ」


スケキヨ「町までどうする?」


しらせ「そうねえ。お前を連れて魔法で飛ぶのは大変だから……」


崖道を下って麓の和やかな浄土村を抜けて、穏やかな極楽町を通って、賑やかな大都会へ行くまでに車で一時間三十分は要するのである。

そこは悪が温かな床。

犯罪者の犯罪者による犯罪者のための大都会クリスタルクイーン。


しらせ「とほほ……二時間以上もかかっちまったよ」


スケキヨ「何で戦車?」


しらせ「こういうの好きだろう」


スケキヨ「かっけえから好き。怪獣とも戦うし」


しらせ「目的地はこの辺みたいだけど、先にお昼にしようか」


スケキヨ「お腹空いた。でも仕事が先じゃね」


しらせ「遅刻してるし何時に到着しようが一緒よ」


スケキヨ「悪っ」


しらせ「あのラーメン屋でいい?」


スケキヨ「小さいしボロじゃん。別にいいけど」


ということでラーメン屋ラーメン亭へ。

戦車は停めるスペースが無かったので駐車してあった車の上に半分重ねた。

まあまあ歩道にはみ出したけど仕方ないよね。


しらせ「よし、行こう」


スケキヨ「ひっでーことすんな」


しらせ「立体駐車よ」


ウィン


大将「あっしゃいまっしぇ!」


しらせ「二人」


大将「あいよ!拳骨ラーメン高菜炒飯セット二人前」


しらせ「注文ではありません」


スケキヨ「ひゃっひゃっひゃっ!おい見ろよ!」


しらせ「うっさいなあ、なに?引っ張んないでよ」


スケキヨ「いよーっ!朴さん」べしべし


朴「おや奇遇ですね」にこ


しらせ「なんで仕事から逃げて真っ黒焦げのブリーフ一丁?」


朴「え?何のことですか?あ、あーこれか、はは、ああこれのことですか。これなら気にしないで下さい」


しらせ「無理」


①コンビニに立ち寄ったら強盗に会った


②人質に取られて立て籠った廃墟で薬物取引現場に遭遇して、強盗犯と仲良く恐い人の車に乗せられた。


③表向きは化粧品を扱う会社のビルに連れて行かれたけれどそこはカラスの半獣人グループの巣で、隻眼の親玉に殺されそうになったところへセーラー服の少女が乱入してきて機関銃を撃ちまくり、その騒動のどさくさに紛れて強盗犯と脱出したところを警察に捕まった。


④そうしたらそいつが偽警官で、偽のダイナマイトで脅す現金輸送車強奪計画に巻き込まれた。


⑤その逃亡中に立ち寄ったガソリンスタンドで爆発事故が起きて、その隙に逃げてここへ潜伏した。


しらせ「不幸が重なるね」


朴「嘘偽りなく誇張なく。ほら、向かいのガソリンスタンドまだ燃えてるでしょう」


しらせ「あ、本当。気付かなかった」


大将「はいよ。生しらす丼とカレーお待ちどう様」


しらせ「強盗犯はどうなったの?」


朴「やだなあ。彼なら既に会っているじゃないですか」


しらせ「え?」


朴「大将ですよ。本物の大将は縛って倉庫に閉じ込めてあります。ワンオペが仇となりましたね。やはりワンオペは悪です」


しらせ「まだ強盗続けてたの!?」


スケキヨ「やべえじゃん。通報しようぜ」


しらせ「スケキヨ見なさい!お前のそのカレーの中!」


スケキヨ「これは……何!?」


しらせ「小型盗聴器よ多分」


スケキヨ「ジャガイモの中に入れてたのか。仕込みが丁寧だ」


しらせ「恐らく茹でた時に崩れて出てきたのね」


スケキヨ「ヤベーじゃん。衛生上よくない」


しらせ「お、難しいことよく知ってるね」


スケキヨ「まあな」


朴「あのさあ。私たち人質ナウなんですよ」


しらせ「毒入ってるかも!」


大将「う……うぐあっ」


しらせ「ほら!」


大将「かは……」ぱたり


しらせ「ほらー!」


朴「うーん。客の中に刺客が紛れているかもですね」


しらせ「どういう理由で大将は殺されたの?」


朴「知りませんよ。犯人はスケキヨじゃないですか?」


スケキヨ「何で俺なんだよ!んなわけねえだろ!」


朴「盗聴器本気で投げないで下さい。痛いなあ」


しらせ「分かった!二人目の強盗犯よ!」


朴「強盗犯は一人ですよ」


しらせ「はい?」


朴「現金輸送車の件なら危害を加えていないので窃盗。つまりは窃盗犯になります」


しらせ「どっちでもいいわ」


朴「いや大事なことでしょ」


しらせ「とにかく、そいつが真犯人よ。その動機は共犯者の口封じ」


朴「じゃあ私も間もなく死ぬじゃないですか」


しらせ「そうね」


朴「やだっ!もう死にたくない!死ぬの怖い!お前がしね!」


しらせ「うわあ凄いなあ。泣き方キモすぎて悪口が気にならない」


スケキヨ「マンションから飛び降りて死んだの覚えてるって言ってた」


しらせ「何でそんなことした。よほど前世で辛いことあったの?」


朴「お前の……」


ドンッ、カララン


朴「せいだあ!!」


しらせ「やめなさい。テーブルより、お前の拳が壊れそうだよ」


朴「お前が俺を訴えたから死ぬしかなかったんだあ!!」


しらせ「それってつまり……お前がそもそも誹謗中傷しまくったのが原因じゃん!!」


スケキヨ「うるさいから客がみんな帰ってく」


しらせ「ざーこ♡メンタルよわよわ♡ブーメラン刺さってかわいそー♡」


朴「煽るなあ!!」


しらせ「きゃは♡またブーメラン投げてる、かわいー♡」


朴「えああ……死にたくなかったあ……」


しらせ「お互い様よ。諦めなさい。私だってお前とお前」


スケキヨ「え、俺も?」


しらせ「アンチのせいで凄く死にたかったし、でも反対に凄く生きたかったよ」


スケキヨ「悪口なんて無視すりゃいいんだよ。二人とも子供だなあ」


朴「クソガキ、コロス」ちゃき


しらせ「バカ!こんなとこでロケラン撃つ気!?」


一時間後。


朴「ふ、やっと鎮火しましたね」


しらせ「お前の心もね。このヒツジメンタルめ」


スケキヨ「はっはっはっ。ラーメン屋無くなっちった」


しらせ「お前もヘラヘラしてないで感謝しなさいよ。一撃必殺のロケラン防げるの私くらいなんだから」


スケキヨ「それより犯人は?」


しらせ「さてね」


スケキヨ「ギルドの仕事は?」


しらせ「あ……」


朴「まさかやだうそ、あの仕事を受けたんですか?」


しらせ「受けたよ。大量の違法薬物が悪党の抗争の中で消えたから探せって無茶な仕事」


朴「アテはあるんですか?」


しらせ「メールに目当ての場所が書いてた」


朴「じゃあ行きますか」


しらせ「パトカーから降りたらね」


警官「あんたら、どこにも行けるわけないだろう。なにギルドの人?」


しらせ「そう、リクルートです。急ぎの仕事があるから手錠を外して降ろしてください」


警官「そうは言われてもねえ」


しらせ「私たちは、いや私とスケキヨは事件とはなんの関わりもありません」


警官「ズブズブに関わりあるから諦めなさい」


翌日。


しらせ「あともう少しね」


朴「ああー徹夜明けの仕事は辛い。あの強盗犯のように過労死しちゃいますよ」


しらせ「時代遅れのパワハラ警官め。思い出してムカムカする」


朴「あんなもんですよ。彼らにとって重要なのは見栄です。それが権力を生み金を稼ぎます」


しらせ「ふ、彼らと本気で戦う日は意外と近いかもね……」


朴「あなたが警察署を破壊したせいです」


スケキヨ「置いてくなよー!うわあーん!!」


朴「遅いですよ」


スケキヨ「めっちゃ撃たれたんだぞ!」


しらせ「ああーそう言えば、お前は無敵だったね。じゃあ昨日も守る必要なかったじゃん」


スケキヨ「無敵でも怖えーよ!」


しらせ「わかったわかった。もう泣かないの」


朴「あ、昨日のビルだ」


しらせ「そうなの。偶然ね」


スケキヨ「早く入って終わらせようぜ」


五分後。


スケキヨ「昨日のうちに終わってたな」


朴「まさか機関銃ぶっ放した後に、快感、なんて呟いたセーラー服の変態お嬢様がリクルートだったとは」


しらせ「あーもう!無駄に疲れただけじゃないのよ!」


朴「骨折り損のくたびれ儲けですね」


しらせ「どうしてこうなった……私はいつでも真面目に頑張ってるのに……どうして……」


朴「まあまあ。帰りに浄土村で黄泉の湯に寄ってリフレッシュしましょう」


スケキヨ「そこの温泉好き。全身が軽くなるくらい気持ち良かった」にこ


朴「天にも昇る心地でしたね」にこ


しらせ「あえ?ラーメン屋跡地まさかのビルの裏じゃない」


朴「なんと近くてラッキー」


しらせ「早く軽トラ乗って帰ろう」


朴「何だこの戦車。誰がやったコラ」


しらせ「はい私」


朴「何やってくれてるんですか?頭おかしいんですか?私の軽トラがバキンバキンのべキャスベキャスですけど?しかも焦げてますよ?」


しらせ「えへへ、ごめんね。駐車するとこなくて」ぺろ


朴「そういう時は路駐が基本でしょ」


しらせ「ダメでしょ」


朴「車の上に戦車乗せるのもダメでしょ」


しらせ「立体駐車よ」


朴「屁理屈言うな。というか、あなた無免許ですよね」


しらせ「ごめん」


朴「謝って済むなら、ごめん、は要らないんですよ。警察を呼ばれたくないなら土下座してください」


しらせ「はい戦車は消しました。軽トラもデコって見栄えを良くしたから許して」ぷんすか


朴「逆ギレできる立場かふざけてんのか。イルミネーションはいらねえんだよ。頭メリークリスマスか」


スケキヨ「今日めっちゃイラついてんな朴さん。へへ、ブチギレじゃん」


朴「当たり前だ!こいつは青春の軽トラなんだぞ!!」


しらせ「その話は歩きながら聞くよ」


朴「話しません。青春は胸に秘めておくべき宝石です。歩きもしません」


しらせ「やれやれ動くかな。お、エンジンかかったよ。やった」


朴「早く荷台に乗りなさい」


スケキヨ「やっと帰れるー」


朴「メスガキ。後でちゃんと修理してください」


しらせ「ギャグ小説だから明日には直るさ」


朴「今すぐ降りて下さい」


しらせ「やなこった」


朴「ふうー温泉とは素晴らしいものです」


スケキヨ「朴さん見ろよ!」


朴「おや、泳ぎが上手くなりましたね」


スケキヨ「だろ?」


爺「羊のあんた、こいつの友達かい!」


朴「違います」


爺「なら親かい!」


朴「違います」


爺「じゃあ何だい!」


朴「飼い主です」


スケキヨ「犬じゃねーよ!」


爺「あんた、この犬小僧が泳いで他人に迷惑がかかってるのが見て分からんのかい」


朴「かかっているのは温泉では?」


爺「そうだね」


おっさん「どっちもだ」


朴「なんですか。大人たちが子供を囲んだりして」


おっさん「半獣人が口答えするな。お前ら魔界から送られてきたスパイなんだろう」


スケキヨ「そうなん!?かっけえ!」


朴「時代遅れの昔話ですよ。バカにされているんです」


スケキヨ「んだと!」


朴「ああ、なんだか懐かしい感覚」


スケキヨ「朴さんは前世もクズで、ずっと嫌われてたもんな」


朴「ネトウヨ思想がこびり付いて哀れな子……」


若造「みなさん油断しないで。周囲をかえりみないムテキマンは何をするか分かりませんからね」


スケキヨ「いい加減にしろよ……朴さんはな……イキるだけのビビりのヘタレだぞ!何もできねーよ!!」


朴「悲しいなあ……」


スケキヨ「喧嘩なら俺が買ってやる!昔よくやってたからな!いくぜ体がでかいだけのおっさん、覚悟しろオラァ!!」


おっさん「ははは、元気いいな。よーしよしよし遊んでやろう」


スケキヨ「犬じゃないっての!」


若造「おっさんイケイケ!」


爺「犬小僧負けるな!根性見せろ!」


朴「これは一部の人が喜びそうな濃厚な絡みですねえ」


のこったのこった。

きゃっきゃきゃっきゃ。

ぱっちゃぱっちゃ。


窃盗犯「もうやめなさい」


朴「窃盗犯っ!!」


窃盗犯「んがべごぶぼぼ」


朴「おじさん離してあげて。上半身逆さまで温泉に浸かれば誰だって溺れ死にます」


おっさん「あ、こりゃ悪い、つい癖で」


スケキヨ「何の癖だよ」


おっさん「元ピーだからピーをピーする時によくこうしてたんだピー」


爺「逃げろおおお!」


若造「誰か警察を呼んで!」


こうして男湯には本物の悪しか残らなかった。


しらせ「ちょっと何の騒ぎ?うるせーよ」


スケキヨ「窃盗犯いた」


しらせ「マジで!?」

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