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もう一人のアホ毛は糸コン多めの肉じゃがが得意料理

以前に某作品のキャラクターをお借りしたーいと作者様に言った事がありまして……。ちゃっかりお借りしました。


「冬野つぐみのオモイカタ ―女子大生二人。トコロニヨリ、ヒトリ。行方不明―」より出演です。

作者のとは様にはこの場を持って頭をお下げします( *・ω・)*_ _))ペコリン


 鯖井の里に帰るなりニートになっちゃった。


 マツモトキヨスの城下町で一攫千金を成し遂げて、見事にミソニちゃんの借金を返済したらやること無くなっちゃったのよ。


 肝心のミソニちゃんは私に会うなり抱きついてきた。彼女のアホ毛が刺さって痛かったけど、そこは我慢した。


 側から見たらカブトムシの対決みたいでカッコ悪かったけど、そこは女子高生として我慢したのだ。彼女が言うには私のおかげで天下布武の人から感謝状が届いたらしい。



 オッケーな狭間で見事にナウ川さんを首チョンパできたって。


 私の天ぷらのおかげで将来幕府を開く人と仲良くなれたって、なんでも天下布武の人は未来の将軍様と同盟を結んだらしい。



 心当たりが無さすぎてよく分からなかった。



 でも私としても未来の鯖井家の借金が無くなって久しぶりに会心の仕事だったとミケの肉球とハイタッチしちゃった。だけど、そこからはなーんにもすることが無くてアホ毛之館でゴロゴロしてまーす。


 ミケも一緒にゴロゴロしてまーす。



「……暇」

「……にゃー」



 この時代は娯楽が無いから仕事しないとニートなのよ。


 今ならニートすぎて暇死ひきこもりにだって余裕でできるわ。


 ミソニちゃんに暇なら新しいサバ料理のレシピを開発してくれと頼まれたけど、ノータイムで完成させちゃった。またやる事が一瞬で無くなっちゃった。綿アメかってくらい一瞬で依頼ひまつぶしが溶けちゃった。


 だってミソニちゃんからのサバレシピ絡みのお願いだよ? サバの味噌煮で決定じゃん。


 家を出る時にサバの味噌煮缶をカバンに十年分突っ込んでおいて良かったわー。


 やることが無さすぎて噂のモテル君のお嫁さんを暗殺したくなっちゃう。



「……モテル君のお嫁さんか」

「にゃにゃー?」

「つぐみちゃんって言う子らしいよ? 得意料理は糸コン多めの肉じゃがだって」

「にゃー?」

「ミケの言う通りよ。その子はツボを心得てるわ、肉じゃがは糸コンを蕎麦みたいにズルズルーってすする料理なのよ」



 ミソニちゃんに聞いた話だとつぐみちゃんは圧倒的な母性の持ち主らしい。年齢は十九歳のJDでなんと彼女はアホ毛を生やしていると言う。


 本来アホ毛とは一時代に一人しか誕生しないもの。アホ毛の持ち主が死ぬと聖龍マザードラゴンが現れて次の世代にアホ毛を継承させるらしい。


 何処かで聞いたことのある設定じゃん。


 唯一の例外は子供を産む事だそうだ、これはパパが鼻くそをほじりながら泥酔状態で教えてくれた事だ。


 つまりつぐみちゃんの正体は……私が生き別れた実の娘?



「にゃー」



 ミケは「んな訳にゃいにゃい」と言って肉球を動かしてます。え? そんなに長いセリフだったかって? そんなものフィーリングじゃい、私とミケの仲だからこそ成せる技よ!!


 ま、それは今はいいや。


 うーん、とにかくつぐみちゃんの事を考えていると私のアホ毛がクルクルと回転しちゃうのよねー。そしてアホ毛とアホ毛は引かれ合うもの、引かれあったアホ毛は発光するみたい、ここのところアホ毛が敏感に他のアホ毛に共鳴して点滅するのよねー。



「はい、ピカーって光りましたー」

「あれ? あれれ? 私のアホ毛が光ってる?」



 ふっふっふ。


 この時を待っていたわ、私は何の考えもなしにニートをしていた訳じゃないのよ。ちょっとだけ二度と働きたくないとか思ったけど、ほんの冗談よ。ミソニちゃんのパパ活のおこぼれに預かろうか悩んだけど、アレは私の仮の姿。


 冬野つぐみ、アンタが罠にかかるのをずっと待ってたんじゃい。



「命が惜しかったら糸コン多めの肉じゃが、むしろ糸コンをよこしなさい」



 あまりにも糸コンが食べたくてアホ毛をナイフ代わりに舌なめずりしちゃう。



「……あなた糸コンが好きなの?」

「好きとか以前に主食でもいいくらいよ」



 糸コンを食べたくてずっと劇画タッチの表情を維持してるから疲れちゃった。むしろ私の顔面が筋肉痛になりそうなのよー。


 冬野つぐみめ、それを見抜いてわざと会話を長引かせてるんじゃないでしょうね? うーん、これは自分からアピールした方がいいのかな?


 糸コンはよー、プリーズ!!


 早く糸コンを食べないと私の顔面が完全に固まっちゃうから!!



「あれ? あなたのそれってセーラー服だよね? ……あなた、もしかして噂のハルちゃん?」

「あれ? そう言われてみればあなたもパーカーにジーパンじゃん」

「うん、ちょっとタイムトラベルに巻き込まれちゃって。もしかしてあなたも?」

「おーい、ハルちゃーーーーん。ちょっと相談があるんだけど……って、敵もいたんだ……」



 ん? またアホ毛が光った。


 今度はミソニちゃんが登場しちゃったのか。


 私のアホ毛が青く光って、つぐみちゃんは黄色。ミソニちゃんは赤色に光って点滅してる。これじゃまるで信号機じゃん。


 お、今度はミソニちゃんがつぐみちゃんに詰め寄っていく。


 ミソニちゃんってばつぐみちゃんに気づいた途端にメンチ切ってるんだ。メンチ切りながら百面相するなんてミソニちゃんも意外と器用ね。


 しかも右手には箸、左手にはサバの味噌煮缶をそのまま乗せた器を持ちながらもメンチ切り。きっとミソニちゃんは缶切りが無いから味噌煮缶を開けられないんだわ。


 アホ毛を缶切りに使えば良いのに。


 だけど私はメンチメンチ言いすぎてメンチカツ食べたくなっちゃった。



「……サバでメンチカツを作ったら美味しいかも」

「ハルちゃん、メンチカツってなに?」



 あ、ミソニちゃんがノータイムで私の呟きに反応してきた。



「肉じゃがはもういいのかしら?」



 今度はつぐみちゃんが話しかけてきた。ん? つぐみちゃんってばさっきまで手に何も持ってなかったはずなのに、いつの間にか肉じゃがの入ったタッパを持ってる!?


 で、できるわね。


 しかも戦国時代にタッパなんてあるはずがない。


 もしかしてつぐみちゃんは私と同じカラフルタッパのコレクターだとでも言うの? くっ、タッパコレクターに悪人はいない、きっとつぐみちゃんは私にそれを伝えたんだ。



 つぐみちゃんって無害そうな顔して意外と策士なのね?



 だけどそんな駆け引きとは関係なく肉じゃがの臭いが私の胃をくすぐってくる。おかげでまたヨダレがナイアガラになっちゃったじゃん。


 

「肉じゃがの糸コンを主食、サバのメンチカツはメインディッシュよ」

「そ、そうなんだ」

「ハルちゃん、メンチカツってなんなの!? どうせまた美味しいものなんでしょ!? 敵の作った肉じゃがなんてどうでもいいから意地悪しないで私に教えてよーーーーー!!」



 うーん、ミソニちゃんが私にしがみついて駄々こね始めちゃった。


 ミソニちゃんめ、私が味噌煮込みうどんで一攫千金を達成してみかどっちの借金を返済できたから味を占めたな? 私が帰ってきて、そのことを話したら急に領内の新名物開発をすると言い出したのよね。


 しかも自分の名前が入った料理がヒットしたからミソニちゃんは余計に興奮しちゃったのだ。


 きっと彼女は自分がマツモトキヨスでアイドルにでもなった気分なんだろうなー。


 実際の話、めんどくせー。前言撤回してずっとニートでいたいと心から願います。


 ミソニちゃんって私のご先祖様だけど最高にめんどくさい子でした。



「二人とも、冷静になって。タッパの中に入ってるのは肉じゃがじゃなくてお弁当で持ってきた『サバじゃが』なんだ。最近、私のアホ毛がサバ料理を欲しがるようになってちょっと試してみたの」

「「……何ですって?」」

「にゃにゃ?」

「え? え? どうして皆んなして私を凝視するのかな? それと皆んなで私の肩に手を置くのはどうして?」



 二人と一匹の眼光がギラリと光ってつぐみちゃんを射抜く。

 

 無人島ではサバがいなかったから我慢してたけど、私も鯖井家の人間だから無類のサバ好きなのだ。ミケも猫だから魚は大好物。


 ミソニちゃんについては確認するまでもないよね?



「はい、つぐみちゃん十二時二十分確保ー」

「にゃにゃー」

「え? え? ハルちゃん、急に私に手錠なんてかけてどうしたのかな?」

「ちょっと奥の厨房で今後について話し合いましょう。……アンタの返事次第で旦那の出世に響くわよん?」



 ミソニちゃんの脅しが怖ーい。


 脅しがリアルすぎて私もドン引きなんですけど。ミソニちゃんのこの顔は絶対に本気だ、つぐみちゃんが断ったら問答無用でモテル君をクビにしちゃうよ。


 サバが原因でモテル君が社会的にサバかれちゃうじゃん。


 つぐみちゃんも何が何だか分からないままズルズルと二人と一匹によって屋敷の奥へと引きづられて行く。まあ、当然だけど最低限の抵抗はするよね?


 つぐみちゃんはこの先が不安になったのか顔を引き攣らせながら私に話しかけてくる。



「あ、あのお? 私はサバ料理を作れば良いだけだよね? ね? そ、そうだよね? お願いだからお姉さんはそうだって言って欲しいんだけどなあ?」

「つぐみちゃん、私とバイクで風になっちゃう?」

「ハルちゃーん? ちょっと目が怖いんだけど……急に原チャリをカバンから出されてもお姉さんは何が正解か分からないんだけど?」

「にゃにゃー」

「え? 猫ちゃんはなんて言ってるの? って、どうして無理やり原チャリに乗せようとするの!?」

「にゃにゃー?」



 ミケは「お嬢ちゃん、喋ってると舌噛むにゃ?」と言ってます。



 ミケはつぐみちゃんにサバでねこまんまを作れと言ってます。ミケもママのサバイバルクッキングとキャットフードで育ったから基本的に好き嫌いはないけど、サバは特に大好物なのだ。


 ミケはダラダラと垂らしたヨダレを肉球で拭う。


 そして私は原チャリのアクセルをわざとらしく噴かす。ここは雰囲気を出すためにもリーゼント形状のカツラヘルメットでも被っておこうかな?


 よし、崖から落下させちゃったから心配だったけど、問題なくエンジンがかかったわ。エンジンキーを回すと『ブオオオオオオオオオオン!!』と、とても原チャリとは思えないエグゾーストが鳴り響く。


 けっけっけ、この原チャリは私の弟が改造した特注品、ロケットエンジンを搭載した最高傑作なのよ。そのあまりの馬力に原チャリかどうかさえ疑わしい逸品だ。


 唯一の癒しは原チャリのカラーリングがピンクと言う事だけ。



 ドッドッドッドッドッド!!



 よっしゃー、雰囲気出てきたーーーーー!! これはハルちゃんも腕が鳴るわー。



「ハルちゃん、屋敷の奥に行くだけなのにどうして原チャリで移動する……ひょええええええええええ!! 合図も無しに急に発進しないでーーーーーーー!?」

「ウッヒョーーーーーーーー!! 私は風になるのーーーーーーーーー!!」

「なんだかよく分からないけどイケイケーーーーーー!! ハルちゃん、限界まで踏めーーーーーーーー!!」

「オッシャーーーーーーーーー!! 五百キロの壁を越えてやるんだからねーーーーーー!!」

「原チャリって……そんな速度でないよねーーーーーーーー!? お姉さんの知ってる原チャリじゃなーーーーーーーい!!」

「にゃにゃーーーーー!!」



 つぐみちゃんは落っこちないように必死になって私にしがみつきながら「ひえええええええ」と情けない声をあげていた。


 そしてノー天気に私を煽るご先祖様と猫。


 こうして私たちは悲鳴と共にアホ毛之館の奥へ姿を消していくのだった。

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執筆の糧になりますので、どうぞよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 大いに、実に大いに大笑いをさせて頂いております。 つぐみが五百キロの壁を越えて2人と一匹と共に伝説に参加できたことを作者として嬉しく思います。 つぐみが話すであろう話し方。 相手がJKとい…
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