ご先祖様の借金は三億石
ハルちゃんとミソにちゃんの発言する人物が伝わりづらいと不安になってます(`;ω;´)
なんとかカオスな状況を収めて今は地図と睨めっこ。
モテル君が持ってきた地図を床に広げてくれた。何も知らない私にこの世界と地域の事を地図を使って色々と教えてくれてると言う事らしい。
そして粗方を知って素直に思ったこと。
鯖井、ヤベーじゃん。
南にはオッケーな狭間で首チョンパされるナウ川な武将さんがいて、なんと北には風林火山でお馴染みの日本初水洗便所を開発した武将さんがいるのだ。
トイレに引きこもってガリ勉して暗殺防止に広々としたトイレ設計にこだわった、まさにトイレの神様的武将。
このオッサンの軍は日本最強の騎馬隊を誇っていたはず。昔一度だけ単身で戦った事があるけど壊滅するのにかなり苦労したのよねー。
確か十秒もかかった記憶がある。
因みにトイレおじさんの死因は私です。
仲直りの証にと私の作った業務用ナポリタンをトイレおじさんが美味い美味いと言って食べすぎて死にました。その時は家来の人たちがナポリタンを食べて口の周りがケチャップでベチョベチョになったトイレおじさんを見て吐血したーとか大騒ぎになって大変だったのよねー。
てへぺろ。
とまあそんな裏話は今はいいとして、とにかくこの立地はヤベーよ。
アホ毛之館の間取りを詳しくは知らないけど、この領地の立地が駅から徒歩三十分以上のワンルームアパート以下ですよ。因みに前日戦った油ギットギトのオッサンたちはなう川のお仲間さんだそうです。
マジでーーーーーーーー?
因みにミソニちゃんがここに居城を置くのは宇宙市が農作物が育たない地域だからそうだ。それを憐れんだみかどっちが特別にミソニちゃんにこの領地を与えたのだとか。そしてアホ毛之館は鯖井家の生命線、ここにミソニちゃんがいて初めてサバたちは井戸に迷い込むとか。
ミソニちゃんがここにいないとサバたちは暴走して他の領地を襲撃してしまうらしい。
周辺の武将たちはサバを恐れている。ミソニちゃんの自宅がここにあるのはそう言う事らしい。因みにそんな理由で前回みたいなイザコザに発展してもミソニちゃんは領地を奪われる事はないそうだ。
負け戦で要求される条件は決まってミソニちゃんのお酌だそうで。
最初からお酌だけど許す気があるならそもそも合戦にまで発展させる必要無いじゃん。
「この立地って原チャリがトラックに挟まれた様なもんじゃん」
「にゃにゃー」
「ハルちゃん、原チャリって何? トラックも知らないんだけど?」
「うーん、ミソニちゃんが本来一人しかいないはずのモテル君のお嫁さん二人に挟まれてオラオラされた状況を想像してみて下さい」
「感じ悪」
ミソニちゃんが渋い表情でボソッと呟く。
私も自分で言っておいてムカついちゃった。このままだとモテル君のお嫁さんと会った瞬間に問答無用にアホ毛で引っ叩いちゃいそう。
「あのお、人の嫁を悪者にしないで頂きたいのでござるが?」
「ミソニちゃんはナウ川おじさんとトイレおじさん以外からもお金借りてるの?」
「無視……。既婚者と知った途端にハルちゃん御前からの扱いが……」
「にゃー」
ミケは「全部お前が悪いにゃ」とモテル君に釘を刺してます。
私も他人の男の子に夢中になる程安くはないのよ。モテル君のお嫁さん処遇については後日考えるとして今はミソニちゃんの事をもっと知らないといけないのだ。
ん?
ミソニちゃんが人差し指をツンツンしてる? これはきっと何か隠してるわね。
「ミソニちゃん、素直に話すなら今だよ?」
「……ナウ川さんとトイレっちだけじゃなくて……マムシちゃんとかその義理の息子さんにも借りてます」
「え? マムシちゃんってもしかして油売りから大名にフリーランス転職した人?」
じゃあその義理の息子さんって天下布武の人だよね?
「はい……、それと将軍ちゃんとみかどっちにも少々……。後は有名な茶器を持ってるおじさんからも借りてるのよねー」
「有名な茶器ってもしかして平蜘蛛の事?」
「……うん。これで総額……三億石(約八十一兆円)」
「因みにミソニちゃんの年収は?」
「……池面介の年収も合わせてやっと百五十石」
おお……、ミソニちゃんって借金まみれじゃん。
しかも平蜘蛛を持ってるおじさんって天下布武の人に三回も謀反を起こしたあのオッサンで確定じゃない。平蜘蛛おじさんはケチで有名のはずなんだけどなあ。ミソニちゃんもよくそんな人からお金を借りられたものね。
ある意味で政治手腕がすごいって事?
それに将軍ちゃんとかみかどっちからも借金してるとか。
あの二人も基本的に金欠だから他人に貸せるお金なんて無いはずなのに、どうやって借りたの? と言うかウチのパパが『鯖井家はみかどっちに借金をした由緒ある家柄なんだよー』と言っていた気がする。
えー?
それってミソニちゃんが原因なの?
「私、可愛いくて偉いからウィンクしながらあっはーんって言えば大抵のオッサンはお金貸してくれるよ?」
「……それってパパ活じゃん」
「にゃー」
ミケは「血のつながりを感じるにゃ」と言ってます。
ミケも失礼ね。
だけどやっぱりミソニちゃんの政治手腕はボロッボロなのは事実。でもあっはーんだけで戦国時代を乗り切るあたりは天才だったりするのだろうか?
ミソニちゃんは天才的なパパ活大名でした。
そして現実は更にヤベー状況みたい。
これはミソニちゃんだけの問題ではなく未来の鯖井家にも関わる大問題。ご先祖様が残した借金はこの場で返済しないとえらい事になる。
主にママがブチギレそう。
だってパパが言ってたみかどっちへの借金、確か金額は数百年分の利子のせいで国家予算を軽く超えていると言う話だった。
ママもわたしのお小遣いが月に三千円なのはそれが原因だって言っていた。私のお小遣いが少ないのは全てミソニちゃんのせい、そして勝手にお嫁さんをもらったモテル君が全て悪い。
「にゃにゃー」
「え? 責任転嫁も甚だしいけどモテル君のせいにするのはオッケーなの?」
「にゃ」
ミケが眩しい笑顔で親指を立ててます。
ま、今はミケの笑顔なんてどうでもいいや。笑顔なんて所詮はプライスレスよ。問題はどうやってミソニちゃんの借金を無かったことにするか。
どうせ返せる額じゃないし返済じゃなくて無かったことにするかが問題なのよね。最初から返済を諦める時点で私もミソニちゃんの子孫だと思い知らされる。
セルフで凹むわー。
なんか借金にフラれた気分になっちゃう。
「うーん、ナウ川おじさんと平蜘蛛おじさんの借金は天下布武おじさんに殺されるからスルーするとして……マムシちゃんも自滅するでしょ? トイレおじさんは近いうちに寿命でしょ? あ、将軍ちゃんも誰かに殺されるからスルーでいいか」
「……そうなの?」
「私のアホ毛がそう言っているのだよ」
「……ハルちゃん、後ね毘沙門天のおじさんがよく仕送りしてくれるんだけど……」
ミソニちゃんめ、私が大丈夫と言い切ったからここぞとばかりに隠していた借金をカミングアウトしたな? ミソニちゃんってある意味ですげー。
この戦国時代をパパ活だけで生き残って来たとかとんでもない女傑じゃん。
「毘沙門天のおじさんって敵に塩を送る人?」
「うん」
「じゃあしらばっくれましょう。何だったら今後も都合良く利用しちゃえばいいのよ、とりあえず追加でもう一万石くらい借りといて。借りたお金で天下布武のおじさんに借金返すから」
「拙者にはハルちゃん御前が悪魔に見えて来たでござるよ」
「ハルちゃん、みかどっちの借金はどうするの?」
「流石に毘沙門殿おじさんがいい人でも借りたお金で借金返すのは一人が限界じゃん? あまりやりすぎると戦になっちゃうし」
「また無視……」
「にゃー」
ミケがガックリと肩を落とすモテル君に勝ち誇った表情を浮かべてる。一枚の紙をピラピラと見せつけてるけど、どうしたんだろう?
ああ、アレって子供の頃に遊びで私とミケが名前を書いた婚姻届じゃん。
ミケがニヤッと悪い笑みを浮かべて「男女の関係はクリーンでないとダメなんだにゃ」と言ってます。この前、メス猫に浮気がバレて彼女猫に引っ掻かれてたくせによく言うわ。
ま、今はどうでもいいや。
まずは何がなんでもミソニちゃんの借金を返すのよ。
毘沙門天おじさんは何度謀反を起こしても許してくれる性格だけど内通とかには厳しいから、みかどっちの借金だけは自力でどうにかしないとなあ。だけどミソニちゃんを見る限りだと返すアテは無さそうだ。
……よし、こうなったら自力で稼ぐんじゃい。
だけど、この時代に一攫千金を狙える商売なんて金山を掘り起こすくらいしかないでしょー? ミソニちゃんの治める領地は狭いからそんな場所は無いし……どうしよう?
あまりの難題に思わず私のアホ毛がクルクルと回転しちゃう。
……あ、アホ毛が回転してくれたおかげで名案が閃いちゃった。
「ハルちゃん? どうしたの? 何か思いついたの?」
「ミソニちゃん、今日って何年の何月何日?」
「え? 永禄三年(1560)の四月二十一日だけどなんで?」
「……セーフ、オッケーな狭間合戦のギリギリ一ヶ月前じゃん」
確かナウ川さんは五月十二日に出陣するはず。
ここで天下布武の人に恩を売っておいて、それを足がかりに商売を進めちゃえば良いんだ。あの人って『鳴かぬなら殺してしまえ』の人だからみかどっちよりも先に借金を返しておかないと危険なのだ。
……そう言えば天下布武の人って何か大きな事件に巻き込まれた様な……。
何だったかな?
忘れちゃった。
側から見たらパパ活のお金でみかどっちに借金を返済すれば良いと思うじゃない? そうすれば未来の鯖井家の借金も無くなると考えるでしょ?
でもそんなに単純な話じゃないのよねー。
よっしゃ、善は急げだ。
「どっこいしょ。ちょっと出かけて来まーす」
「ハルちゃん、何処行くの?」
「ちょっとマムシちゃんの義理の息子さんに会って来るねー」
「ハルちゃん御前、流石それは止めた方がいいでござる。あそこは今、ナウ川さんと戦になりそうで物騒でござるから」
「ハルちゃん、今は止めた方がいいって。アソコは治安がすっごく悪くなってるの」
「平気だよー。私のアホ毛がそう言っているのだよ」
「ならいっかー。じゃあ頑張ってねー」
「拙者だけまた無視……」
こうして私はミケに跨がってアホ毛之館を後にした。笑顔で手を振るミソニちゃんにドバドバと涙を流すモテル君に見送られて、意気揚々と鯖井の里を出て行った。
目指すは尾張国マツモトキヨス。
日本の歴史上で最も有名な天下布武の人に会うと決意した私の頭部にはキラリと光るアホ毛が突き刺さっていた。
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