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ご先祖さまは寄せて上げるタイプ

正一位は封建的な日本社会の政治行政制度である律令制の中で位階及び神階で最高位になります。生存時に昇格した人は本当に稀で、どんなに実績や貢献度高くても通常はその下の従一位で留まる事が通例です。

徳川家康なんかも死後に贈呈された官位となります。

「はー、疲れた」

「ご足労ありがとうございます」

「にゃー」



 お屋敷に入るなりモテル君にご先祖様に会ってくれと言うから広い部屋で大の字になって寝そべりながら待っていた。だけど待てどもご先祖様は一向に姿を現さない。


 なんで?


 ミケなんて飽きちゃって私のアホ毛の手入れを始めちゃった。アホ毛を二等分にしたから後頭部のノリが悪いと言って、ミケはにゃーにゃーと唸りながらアホ毛の場所を試行錯誤してる真っ最中。


 ミケも生花感覚で私のアホ毛をイジるのよねー。



「にゃ」



 ついにベストポジションが見つかったらしくミケは汗を拭って私に親指を立ててくる。鏡で確認したらアホ毛は頭の片方に見事に寄っていた。


 かっちょ悪い。


 ミケの美的センスは微妙でした。



「ミケー、この髪型って子供っぽくない?」

「にゃにゃー」



 ミケが『カッコよく傾けてるにゃ』と言ってます。


 なんのこっちゃ。


 因みに傾くとは現代語で不良を意味するのだ。


 私とミケがそんなやり取りをしていると部屋に近づいてくる足音が聞こえた。これはきっとご先祖様の足音ね、この時代は部屋に入ってくる偉い人には平伏して頭を下げないといけないのだ。


 めんどくさいけど取り敢えず行儀良く頭を下げておきますか。



「にゃーにゃー」

「あ、ちょっと? ミケってばご先祖様が来るから大人しくしてよー」



 ミケがこのタイミングで部屋を飛び出してしまった。私がミケにそう注意をして下を向きながらミケを視線で追うと、そのタイミングで部屋に入って来たご先祖様にソッポを向く状態となってしまう。


 で、アホ毛は曲がって頭に刺さっているからご先祖様の正面を向いているのだ。


 アホ毛はマゲ扱いだからマゲが相手を向いて顔はソッポを向く。


 これって微妙に失礼じゃね?


 この状況を何処かで聞いたことのあるエピソードに感じるのは私だけ?



「……そこのアホ毛、私が誰か分かってるのよね?」



 ん? 誰かに話しかけられた?


 そう思って視線を上げると一人の女の子がピクピクとシワを寄せていた。この子、何処かで見たことがある気がするけど誰だったかな?


 肩まで伸ばしたボブカットに頭の上には立派なアホ毛。


 身なりはそこそこ立派な女性用の着物で胸のサイズはきっとBカップね。私はDカップよ。


 年齢は私と同じくらいかな? 何もかもが私の勝ちじゃん、もしかしてこの子が私のご先祖様なのかな?


 つい色々と考え込んでしまって私のアホ毛がクルクルと回転し始めてしまった。


 そんな私に助け舟を出してくれたのはモテル君でした、彼は私の後ろで頭を下げながら『ハルちゃん、その方がお館様です』と小声で教えてくれたのだ。


 モテル君、グッジョブ。



「もしかして鯖井ちゃん?」

「ほほお? 私が鯖井の当主と知って頭を下げつつソッポを向いたのね? 公卿の私にそんな傾いた態度を取っちゃったのね?」

「え? だって私は正一位だから従三位の鯖井ちゃんより偉いよ? マブダチだったみかどちゃんも何人かいたし逆に寝そべって鯖井ちゃんの話を聞きたいくらいなんだけど」

「「ふぁ?」」



 あ、鯖井ちゃんとモテル君の声がハモった。



「えー? ハルちゃんがアホ毛流剣術をみかどちゃんに認めれてハイタッチしながら官位をもらったって知らないのー? おっくれってるー」

「……そう言えばそんな話を聞いたことがありますね」

池面介いけめんのすけ、この話ってマジなの?」

「官位でしょー、可愛さでしょー、アホ毛の完成度に胸のサイズでしょー。私が鯖井ちゃんに負けてるものなんて一個もないんだけどー?」

「グッハア!!」



 あ、鯖井ちゃんが吐血しちゃった。


 きっと精神的なダメージを負ったのね。私より上だと思って話しかけたら、まさかの格上だったから言い返せないんだわ。そしてトドメは胸のサイズ。


 この手のネタは時空を超えても女の子には効果抜群なのよ。


 けっけっけ、気持ちいいーーーーーー。


 悔しかったらアホ毛のビット攻撃をマスターすることね。



「にゃー」

「ミケってばー、自由人なんだからー。え? 鯖井ちゃんの胸のサイズを確認して来たって? ……マジ? アレって寄せてるの? 寄せてあのサイズなの?」

「お館様?」

「ああああああああああ、池面介も憐れんだ目で私を見ないでよ!!」

「鯖井ちゃん、ドンマイ」

「にゃーにゃにゃ」



 あーあー、私とミケが同じタイミングで鯖井ちゃんの肩に手を置いたら泣き出しちゃった。ポンと歯切れのいい音が虚しさを強調させてくれる。


 鯖井ちゃんなんて「ドンマイって初めて聞いた言葉だけどなんかムカつくーーーー!」と言って私の首を絞めてくる。


 けっけっけ。


 絶対に負けない勝負ってどうしてこんなに気持ちがいいんだろー、首を絞められたって何ともないわー。むしろこの女はいくらご先祖様とは言え私の敵よ。


 だって鯖井ちゃんからはモテル君を狙う女の匂いがプンプンするの。


 ここは一つ私との格の差を見せ付けて二度と逆らわない様に叩きのめしておこうかな?



「けっけっけ、モテル君を狙うならせめてCカップはないとねーーーーーーー」

「何なの何なのーーーーー!! このアホ毛すっごくムカつくんですけどーーーーーー!! 池面介の嫁さんと同じくらいムカつくんですけどーーーーーーー!!」



 ……なんですと?


 今、聞き捨てならないことを聞いた気がするんですけど。え? モテル君って結婚してるの!?



「……モテル君?」

「あ、はい。つい先日嫁を貰いまして、本当にできた嫁なんですよー」



 モテル君がテヘヘと頭をかきながら照れるようにお嫁さんを自慢する。


 ギギギーッとお屋敷の門と同じ音を立てて私の首が回転していく。事実を問いただすためモテル君の方を向いて、答えを聞くと自動的に鯖井ちゃんの方を向いていた。


 ぎゃーーーーーーーーー!!


 私って既婚者にお付き合いを申し込んでじゃったのーーーーーーーー!?



「鯖井ちゃーん、私騙されたーーーーーー……」

「私もなのーーーーーー!! ハルちゃんは私と同志よーーーーーーー!!」



 もう泣くしかない……。


 同じ傷を負ったもの同士で泣いて傷を癒すしかないじゃん!!



「私と鯖井ちゃん、二人合わせれば噂のできた嫁にも勝てるんだから」

「言ってることがよく分からないし理由もなくムカつくけど、ハルちゃんの想いはこの鯖井家当主・鯖井鯖守御園似さばいさばのかみ みそにがうけとめるからねーーーーーーー!!」

「ミソニちゃーーーーーーーーーん!!」

「え? え? 何が起こったでござるか?」

「にゃー」


 

 ミケはモテル君の肩にポンと肉球を置いて「全部お前が悪いにゃ」と言ってます。


 こうして戦国時代にタイムトラベルして即刻失恋する羽目になった私は、同時に失恋仲間のミソ二ちゃんと同盟を組む事となった。恋愛で天下が取れない以上はガチで天下統一を目指そうと鯖井の血筋二人が固く握手を交わして誓い合う。


 話について来れないモテル君は「拙者、何か悪い事したでござるか?」と呟く。


 そう言うことを言われると余計に傷付くんじゃい!!


 この心の傷を全国の武将たちにぶつけない事には私も元の世界には戻れないと悟った。ミソニちゃんと二人で絶対にアホ毛幕府を開いて見返してやるーーーーーーーー!!

面白いと思ったら下の評価やブクマに感想など頂ければ嬉しいです。


執筆の糧になりますので、どうぞよろしくお願いします。

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