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戦国時代にこんにちわ

『とんでもガール・鯖井晴ちゃんの無人島失恋生活 with 愛猫=豪華客船が沈没して漂流した無人島の生態系がジュラってました=』の続編です。

https://ncode.syosetu.com/n7468hh/

前作は主人公の失恋から無人島生活でドタバタを展開するストーリーでしたが今回はタイムトラベルのドタバタ、無自覚に歴史を変えていくとんでもガールの物語をお楽しみいただければ嬉しいです。

「あーーーーーーれーーーーーーー」

「にゃにゃにゃーーーーーーーーー」



 そんな悲鳴をあげて私は謎の渦に飲み込まれていった。気が付けば見たこともない場所で倒れていた私は何処ぞの有名RPGゲームのモンスターみたいにムクリと立ち上がる。


 アホ毛のJKはムクリと起き上がった。


 大切なアホ毛が無事かを手でなぞって直に確認しながら私は周囲を見渡してみた。



「……この感覚、タイムスリップしちゃったみたいね。時代は……戦国時代かな?」



 私は何度かタイムトラブった経験があるから周りの雰囲気でおおよその時代が推測できる。アホ毛が直感でそれを感じ取るのだ。



 私の名前は鯖井晴さばい はる



 肩まで伸ばしたボブカットに燦然と輝くアホ毛がトレードマーク。


 東京都宇宙市に家族四人で暮らす『至って普通の』十六歳、女子高生だ。ちょっとアホ毛が便利すぎる『至って普通の』女の子。


 大体のアマチュア格闘技が十段、プロ格闘技のほとんどでプロライセンスを所持する少しだけスーパーな『至って普通の』女子高生。


 テレビでクマを殺せる女子中学生として取り上げられた事もあるあだ名が『クマ殺し』と言うだけの『至って普通の』十六歳。



 だけどそれは血筋が原因でパパがサラリーマン兼世界最高の殺し屋でママが専業主婦兼世界の格闘王と言うものだ。まあ、格闘王って時点でママが専業の主婦かどうかはこの際どうでも良い。


 だからアホ毛を日本刀代わりに居合切りが出来たって別におかしくもなんともない。



「にゃにゃー」

「そうね、ミケの言う通り時代に合わせてアホ毛は腰に差さないとね」



 そして相棒は猫のミケ。


 本名はミケランジェロ、パパが鍛えたIQが120のちょっとだけ頭がいい宇宙猫。『至って普通の』飼い猫よ。


 ミケは私と同じタイミングで意識を取り戻した様で、早速私にアドバイスをくれた。肉球で私に鞘を差し出してアホ毛をそれに収めろと言ってくる。


 仕方がないので脱着式のアホ毛を腰に差した鞘に収めてみた。ポンと響きのいい音がアホ毛の脱着と同時に鳴って私の心を癒してくれるのよー。



「久しぶりにタイムトラベブっちゃった。うーん、これからどうしようかな?」

「にゃにゃ」

「そうなのよねー、こう言う時はまず時代と場所を確認するのが鯖井家のマニュアルなんだけど……」



 ミケがウンウンと唸る私の肩を肉球で叩く。


 分かってますよー。ミケに言われんでも何をすべきか分かっとるわい。だけど問題なのはどうやってそれを確認するかなのよね。



 だって周囲はどう考えても合戦の最中なんだもん。



 私とミケの事なんてお構いなしに矢の雨が飛んでくる。周囲にはものすごい数の足軽たちが剣を振り回すんだもん。殺気まみれのおっさんたちが血まみれになって殺し合っている。


 危険な雰囲気に満ち溢れてるなー。



「やあやあ、我こそは……!!」



 おっとお?


 如何にも武将と言った格好のライトアフロなイケメンが私に向かってくる。合戦で興奮気味なのか剣を振り回してるけど、久しぶりに男の人から熱烈なラブコールを貰ってしまって私の方が興奮しちゃう!


 だって男の人が名前を名乗って近づくなんて、どう考えてもナンパじゃん。


 だけどどんなに興奮してたって女の子に剣を振り回したらダ・メ・だ・ぞ?


 どんな時代でもレディーはファースト。アフロが許されるのはヴァイオリニストだ・け・だ・ぞ?


 ここは一つ私がお仕置きついでに必殺のアホ毛居合術で目を覚ましてあげましょう、セーラー服を着てるだけにお仕置きよ。



「……アホ毛流壱の奥義・宇宙落とし!! からのお……エネルギー弾!!」

「にゃにゃにゃーーー!!」



 エネルギー弾は女子高生の嗜みよ。


 私とミケが放った合体技が巨大なドクロ形の煙を作り上げた。うん、分かってますよー。エネルギー弾を撃つなら居合切りの意味がないじゃんって話でしょ?


 それでもどんな時も雰囲気が大事だから。雰囲気を重視していれば何でもそこそこ上手くいくものよ。


 そもそも私がアホ毛を見捨てたら、この物語は土台から崩壊してしまう。



 ……あれえ?



 この時代の侍ってすっごく強いからこれくらいの攻撃は挨拶程度にしかならないと思ってたのに、簡単に吹っ飛んじゃった。


 何処ぞのサッカー漫画に登場するモブのディフェンダーみたいに『ぐっはーーーーー!』とか叫んでる。


 どうして?



「にゃにゃー」

「うーん、ミケの言う通りこの合戦ってただの弱小豪族同士の小競り合いかも」



 ミケが私の頭にピョンと飛び乗って肉球でペチペチと頭を叩く。


 この時代の侍はとにかく強くて戦闘のプロ集団として歴史的にも有名なのだ。そんなプロたちが私の放った居合切りとエネルギー弾にここまで派手に吹っ飛ばされるはずがない。


 じゃあ答えは簡単だ。


 この侍たちはメジャーな武将じゃなくてマイナーな武将の軍の所属なんじゃないかな? その辺りも含めてちょっとだけ聞いてみよー。


 さっき私の名乗ろうとした人なんてちょうど良さそう。名乗るくらいだからきっと身分もそこそこで年収も良くて、いいところに住んでるんじゃないかな?


 身なりのいいアフロイケメンが吹っ飛ばされてピクピクしてる。


 甲冑も一人だけデザインが違うから指揮官クラス以上である事は確定。


 きっと麻布あたりに住んでる高給取りに違いない。



「あっはーん、お兄さんって何処の中小企業にお勤めなんですかー? 年収はどれくらい?」

「にゃー!!」

「いったーい!! ミケってばそんなに強く叩かなくたっていいじゃん!! ちょっとだけ合コンっぽく聞いただけじゃん!!」



 ミケに「この時代は水着もNG」と怒られちゃった。


 ミケは私の保護者を気取る猫なのだ。



「せ、拙者は宇宙領を収める鯖井家が家臣。名は凄井池面介喪照すごいいけめんのすけ もてる。捨扶持は五十石にござる」



 意外とアッサリ年収まで聞けちゃった。


 確か現代の価値で一石が二十七万円だから……年収は一千万円以上!? この人ってかなりの優良物件じゃない。それも名前が凄井と言うことは……。


 この人ってモテル君のご先祖様!?


 場所も宇宙領って言ってるし、ここは私が住んでいた宇宙市とみて間違いない。


 あ、因みにモテル君と言うのは私のクラスメイトにして宇宙市一番のイケメン。私が高校生活初日に偶然隣の席になってホームルームの自己紹介の時に挨拶ついでに告ってフラれた初恋の人です。


 モテルくんにフラれた事で前作の無人島生活が始まったと言っても過言では無い。


 因みに私の初恋は千回まではフラれてもノーカンされます。


 モテル君が言うには『付き合って浮気したら殺されそうじゃね』だそうです、私が物理的に強すぎてビンタ喰らっただけで宇宙世紀みたいな悲鳴を上げそうで怖いのだそうだ。


 あれは酷い失恋だった、思い起こせばトラウマものの心の傷を負って無人島に漂流とかしたな。それでもアレはそこそこ良い思い出だった。



 ジュルリ。



 よく見ればこの人もモテル君並みの凄いイケメンじゃん。年齢は私と同い年ぐらいかな? まさかタイムトラブった先で運命の出会いを果たすと思いもしなかった。



 どうしよう、あまりの運命的な出会いにヨダレが止まりません。


 ヨダレはナイアガラ、モテル君と私は親しいアイダガラ。



 頭の上でミケが「にゃーにゃー」と咳き込んでるけどどうでもいいや、今は戦国版のモテル君に唾つけとかないと。



「モテル君、もしも私が敵を殲滅させたら付き合ってくれちゃったりする? 私の名前はハルちゃん御前、こう見えてアホ毛流剣術の開祖とかやってまーす」

「……かの有名な伝説の剣術の開祖?」

「あれ? 念のため前にタイムトラブった時にセクシーな肖像画も残してるんだけどなあ。それと秘伝書の『ハルちゃんの書』も書いたはずなんだけど……」

「はっ!? その独特なマゲはもしや……伝説のアホ毛? それにその召し物は伝説のセーラー服ではあるまいか? ……まさか……ホンモノ!?」



 アホ毛ってこの時代だとマゲ扱いなんだ……。


 もしかして腰に差すよりも頭にあった方が違和感ないのかな? 郷に入ったら郷に従えと言うし、アホ毛は二等分にして頭にも装着しておこう。


 分解して小さくなった分、アホ毛のノリが悪いなあ。でも、まあいっか?


 それでだ。


 せっかく運命の出会いを果たした訳だし、場所は宇宙市と分かった以上はモテル君のご先祖様の手助けをしない手はない。


 久しぶりにアタリのタイムトラベルだわー。


 ここは一つ、戦国時代でラブロマンスを叶えるのもやぶさかではない。喪照さんにこの熱い想いを伝えてみようかな?


 せっかくだからギャルピースでもしながら真剣に頼んでみよう。



「ハルちゃんはモテル君のお手伝いがしたいでーす」



 美少女がぶりっ子をして落とせない男の子なんてこの世にいないのよ。



「それは有り難いのでござるが……何故に?」



 おりょ?


 喪照さんが私のアプローチを怪しんでる?


 合戦の様子を見ると鯖井軍の方が押されてるみたいだから喜ばれると思ったら、警戒されちゃった。ミケと顔を突き合わせるとミケも二足歩行モードで「にゃー?」と言ってよく分からないと言ったジェスチャーをする。


 どうやら私は喪照さんに疑われている様だ、ここは適当にスピリチュアルな理由を言った方が良いだろう。


 この時代は適当に言ったもの勝ちの時代だし問題ないでしょ。



「私のアホ毛がそう言っているのだよ」

「にゃー」



 ちょっとだけ劇画タッチの表情になって適当な発言をしてみました。



「……アホ毛のお導き……。是非ともハルちゃん御前殿に助太刀をお願いしたい」

「ガッテン承知の助ときた」

「にゃー」



 モテル君はまるで神を崇める様に跪きながら涙交じりに私に祈りを捧げていた。


 ここで一発かませばきっとモテル君のハートを鷲掴みよー。


 きゃー。


 戦国時代にタイムスリップして、いきなりモテル君のご先祖様と出会って。こんな感じで私は合戦に参戦する事となりました。


 宇宙市に「エネルギーが原」と言う地名があったけど、今の私たちにはその地名の由来が自分たちにあると知る由もない。さらに因みにだけどこの合戦は「アホ毛合戦」と後の世の語り継がれていくらしいのだけど、これも私たちには知る由もないお話。



 火縄銃がやっと日本に伝来したこの時代で初めてエネルギー弾を戦の戦術に取り入れたのはハルちゃんとミケのコンビだったのです。

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執筆の糧になりますので、どうぞよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今回は戦国時代が舞台なんですね。 でも晴ちゃん、相変わらずマイペース。 だけど彼女なら戦国の世でも名を馳せそうですね! 先が気になるので、ブクマさせて頂きました。
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