幕間 1
ここは日本という国、そして戦争などない平和な日常を送ることが出来るコンクリートジャングル。
ジリジリと照りつける太陽が鉄板で作られた乗り物を焼く。
いや、本当に燃えている。
「親父ぃぃ! しんがりは俺が務める! はよう逃げてください!」
鳴り響く銃声、火薬の臭い。
平和だと思われていた日常は一発の銃声によって壊されていた。
反社会勢力である、いわゆるヤクザによる武力抗争。
弱肉強食の世界、縄張り争い。
決して都会とは言えないこの半端な町を縄張りとしている高田組の組長が、車で移動中のところ襲撃に遭ったのだ。
組長に対して実の父親以上の存在と言っても過言ではない恩を感じている男が、銃撃戦を繰り広げながら右肩を撃たれて呻いているその恩人に向かって必死に呼びかけている。
その傍らには部下が数名、組長を守りながら逃げる算段を整えていた。
「しかし兄貴! 相手の数がわからねえから兄貴だけ残して行くわけにはいかねえよ!」
まだ年若い部下の一人が叫んだがしかし、男はそれを一喝した。
「馬鹿野郎が! 親父あってなんぼの組だボケ! 俺一人の命で済むなら安いんだよこの野郎!」
男は真っ直ぐな瞳で父親のように慕う組長に向かって、最期となるであろう言葉を発した。
「今までありがとうございやした、親父。あんたのおかげで今の俺がーー」
最後まで言葉を紡ぐことも叶わず、男の体は光に包まれた。
「……え?」
直視することもままならない光に包まれたかと思いきや、次に目を開けた瞬間。
発光していた男は惚けた顔で口をぽかんと開けていた。
「あ、兄貴……?」
呼ばれた男はキョトンとした顔で、自分に向かって指を指す。
「はわわ?」
そんな中でも、銃撃音は鳴り止まない。
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