おかしなペンギン
とある寒い寒い氷の島に、ペンギンの四兄弟が住んでいました。
長兄・次兄・三兄・末っ子兄弟たちは、魚をとりに毎日、海へと出かけます。
ペンギンは泳ぐのは得意ですが、ずんぐりむっくりの体型のせいで歩くのは大の苦手です。
その為、海へと向かうのは大変です。
長兄ペンギンが言いました。
「危ないから、押してはダメだよ」
長兄ペンギンがそう言うと、ペンギン兄弟たちは海への行進を始めます。
末っ子ペンギンは、思いました。
なんで、押してはダメなんだろう?
押したら、どうなるんだろう?
あぁ、押してみたいなみたいなぁー、押してみたいなぁー
末っ子ペンギンは、長兄ペンギンの背中を押してみることにしました。
トンッ
突然、後ろから押された長兄ペンギンはバランスを崩します。
長兄ペンギンはスッテンコロリン。
ツルツルの氷の上を勢いよく海へと向かって滑っていきます。
スゥー
長兄ペンギンは、飛べない羽根をバタバタ、短い足をバタバタ。
しかし、止まることが出来ません。
海では大口を開けたシャチが待っています。
兄ペンギンは恐怖のあまり泣き叫びます。
「あばばばばばば・・・・・・」
しかし、残念、無念。
長兄ペンギンはシャチの口へと吸い込まれ、ゴックンと丸呑みにされてしまいました。
「ぶふぁー、うまい! 最高だ!」
シャチは腹ビレで、まん丸のお腹をポンッと叩いて言いました。
それを聞いた次兄ペンギンと三兄ペンギンのクリクリの瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちます。
そんな兄たちの姿を見て、末っ子ペンギンは聞きました。
「なんで泣いているの?」
次兄ペンギンが答えます。
「それは、悲しいからさ」
末っ子ペンギンは思いました。
僕も泣いてみよう!
しかし、末っ子ペンギンは悲しくないので、泣くことが出来ません。
末っ子ペンギンは、自分だけ泣けないことに、悲しくなりました。
こうして、ペンギンの四兄弟は、三兄弟となってしまいました。
とある寒い寒い氷の島に、ペンギンの三兄弟が住んでいました。
三兄弟たちは、魚をとりに毎日、海へと出かけます。
ペンギンは泳ぐのは得意ですが、ずんぐりむっくりの体型のせいで歩くのは大の苦手です。
その為、海へと向かうのは大変です。
次兄ペンギンが言いました。
「危ないから、かけてはダメだよ」
次兄ペンギンがそう言うと、ペンギン兄弟たちは海への行進を始めます。
末っ子ペンギンは、思いました。
なんで、かけたらダメなんだろう?
かけたら、どうなるんだろう?
あぁ、かけてみたいなぁー、かけてみたいなぁー
こうなると末っ子ペンギンは、我慢が出来ません。
末っ子ペンギンは、駆けてみることにしました。
タッタッタッ
末っ子ペンギンは、次兄ペンギンの背中にぶつかってしまいました。
ドンッ
突然、後ろからぶつかられた次兄ペンギンはバランスを崩します。
次兄ペンギンはスッテンコロリン。
ツルツルの氷の上を勢いよく海へと向かって滑っていきます。
スゥー
次兄ペンギンは、恐怖のあまり泣き叫びます。
「あびびびびびび・・・・・・」
しかし、残念、無念。
次兄ペンギンはシャチの口へと吸い込まれ、ゴックンと丸呑みにされてしまいました。
「こふぅー、うまい! 最高だ!」
シャチは腹ビレで、まん丸のお腹をポンッと叩いて言いました。
その言葉を聞いた三兄ペンギンは、クリクリの瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちます。
そんな三兄ペンギンの姿を見て、末っ子ペンギンは聞きました。
「なんで泣いているの?」
三兄ペンギンが答えます。
「それは、悲しいからさ」
末っ子ペンギンは思いました。
僕も泣いてみよう!
しかし、末っ子ペンギンは悲しくないので、泣くことが出来ません。
末っ子ペンギンは、自分だけ泣けないことに、悲しくなりました。
こうして、ペンギンの三兄弟は、二人の兄弟となってしまいました。
とある寒い寒い氷の島に、ペンギンの兄弟が住んでいました。
兄弟たちは、魚をとりに毎日、海へと出かけます。
ペンギンは泳ぐのは得意ですが、ずんぐりむっくりの体型のせいで歩くのは大の苦手です。
その為、海へと向かうのは大変です。
三兄ペンギンが言いました。
「危ないから、しゃべっちゃダメだよ」
三兄ペンギンがそう言うと、ペンギン兄弟たちは海への行進を始めます。
末っ子ペンギンは、思いました。
なんで、しゃべっちゃダメなんだろう?
しゃべったら、どうなるんだろう?
あぁ、しゃべってみたいなぁー、しゃべってみたいなぁー
こうなると末っ子ペンギンは、我慢が出来ません。
末っ子ペンギンは、三兄ペンギンに喋りかけてみることにしました
末っ子ペンギンは、次兄ペンギンの背中にぶつかってしまいました。
「ねーねー、兄さん。どうして、しゃべっちゃダメなの?」
三兄ペンギンは答えます。
「それは、危ないからさ」
その後も、ペンギンの兄弟はお喋りをしながら、歩き続けます。
そして、海へと到着。
しかし、ペンギン兄弟のお喋りはは止まりません。
その時です。
バッシャーン
大口を開けたシャチが海から飛び出してきて・・・
パックリ
三兄ペンギンは、お喋りに夢中で、シャチに気付かなかったのです。
まさに、残念、無念。
三兄ペンギンは、そのままシャチの口へと吸い込まれ、ゴックンと丸呑みにされてしまいました。
「あはぁー、うまい! 最高だ!」
シャチは腹ビレで、まん丸のお腹をポンッと叩いて言いました。
その言葉を聞いた、末っ子ペンギンは氷の上で立ち尽くします。
そして、思いました。
泣かなくちゃ!
しかし、末っ子ペンギンは悲しくないので、泣くことが出来ません。
末っ子ペンギンは、泣けないことに悲しくなりました。
こうして、末っ子ペンギンは一人ぼっちになってしまいました。
とある寒い寒いところに氷の島に、一匹のペンギンが住んでいました。
末っ子ペンギンは、ひとりぼっちでも魚をとりに海へと出かけなければなりません。
末っ子ペンギンは海への行進を始めます。
末っ子ペンギンの顔に、ヒューヒューと冷たい風が当たります。
「うぅ、寒いよ・・・・・・」
ペンギンは、羽毛と脂肪で寒さにも耐えられますが、寒いものは寒いのです。
末っ子ペンギンは、ガクガクブルブル、それでも海へと向かいます。
末っ子ペンギンが海へ着くと、シャチが今か今かと待っています。
末っ子ペンギンは、シャチに聞きました。
「なんで、ペンギンを食べるんだい?」
シャチは不思議な顔をしながら聞き返します。
「俺が、ペンギンを食べてはダメなのかい?」
「ダメに決まっているじゃないか!」
「でも、お前も毎日、魚を食べているだろ?」
「魚はいいんだ!」
「なんで、魚は良くて、ペンギンはダメなのさ?」
「それは魚は、美味しいからさ!」
「それを言ったら、ペンギンの方が、魚の何百倍も美味しいぞ」
「えっ? そうなのかい?」
「そりゃ、そうさ。一番うまいのがペンギンさ」
シャチの大きな口からは、溶けたバターのようなよだれが、ドローっと垂れて止まりません。
そんなシャチの姿をみて、末っ子ペンギンは思いました。
ペンギンって、そんなに美味しいのかな?
どうな味がするんだろう? どうなんだろう?
あぁ、知りたいなぁー、知りたいなぁー
末っ子ペンギンは言いました。
「シャチだけずるいじゃないか! そんなに美味しいなら、僕も食べてみたい!」
「それなら、おまえもペンギンを食べてみればいいじゃないか」
「シャチが兄さんたちを食べちゃったから、氷の島にはもうペンギンは残っていないんだよ」
「何を言ってるんだ? まだ一匹、一番うまそうな奴が残っているじゃないか」
「一番うまそうな奴?」
「グフフフ、ほらほら」
「あっ! そっか!」
末っ子ペンギンは何かに気付くと、満面の笑みで自分のお腹を突き始めました。
グチュグチュブチュブチュ・・・・・・
グチュグチュブチュブチュ・・・・・・
グチュグチュブチュブチュ・・・・・・
勢いよく突かれた腹部は、段々と赤く染まっていきます。
末っ子ペンギンは、シャチに尋ねます。
「もしかして僕は死ぬのかい?」
末っ子ペンギンの問いに、シャチは嬉しそうに答えます。
「そうさ、お前は死ぬのさ」
「なんで僕が死ななきゃいけないんだい?」
「それは簡単なことさ。お前は、間違えちゃいけない運命の二択を、ことごとく間違えてきたからさ」
「うーん、僕には難しくて、よくわからないよ」
「わからないことが、わかったじゃないか」
「そうか! わからないことが、わかったよ!」
「それは、良かったじゃないか。では、俺もご飯を探しに行くとしようかな。じゃあな!」
シャチは、海のギャングにふさわしい決め台詞を言うと、海中へと帰っていきます。
末っ子ペンギンの瞳からは、自然と大粒の涙がこぼれ落ちてきました。
ポタン・・・
ポタン・・・
ポタン・・・
落ちた涙の意味はわかりません。
こうして、氷の島にはペンギンがいなくなってしまいました。
昔々なのか、それとも遠い未来なのか。
それはわかりませんが、とある寒い寒いところに 氷の島がありました。
その島には、ペンギンの四兄弟が住んでいましが、もういません。
おさない。かけない。しゃべらない。
お・か・し の約束を守らなかったからです。
おかしなペンギンのおかしな話。
おしまい、おしまい。
夢には利子がつく。
利子は5年後、10年後に返済を求められる。
愚かな多重債夢者は、その時になって気付くのだ。
自分が夢を追っていた時に、周りの奴らは勉強をして、真面目に働いていたのだ。
多重債夢者に残された道。
それは残りの人生をかけて利子を払うか、自己破産をするか。
もう夢をみることなど許されないのだ。