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勇者パーティを追い出された器用貧乏~パーティ事情で付与術士をやっていた剣士、万能へと至る~【Web版】  作者: 都神 樹
第二章

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53.再見② 二人の信念

「それじゃあ、次はローガンだ。お前はどうして探索者になったんだ?」


「……僕は、故郷に仕送りをするために、努力次第で金を稼げる探索者になりました。故郷の村は痩せた土地で、明日食べるものにも困っているような村です。そんなところで生まれた僕は、幸か不幸か魔術の才能がありました。村のみんなは、そんな僕が村でくすぶっていてはダメだと言ってくれて、なけなしの金を集めて、ツトライルに送り出してくれました。だから僕は、村のみんなが飢えなくて済むように、探索者として成功して、みんなにお腹いっぱいのご飯を食べさせてあげたい」


 ローガンにも信念はちゃんとあったな。

 恐らく《夜天の銀兎》加入時は必死に努力をしていたんだろう。

 教導探索の時の戦いを見れば、ちゃんと努力していたってことはわかる。


 ローガンの才能は飛び抜けている。

 周りが期待を寄せるのは無理もない。

 その結果、悪い方に転がってしまったんだな。


 でも――


「それなのに、僕は、自分を見失っていました……。天才だと、周りから言われて、完全に、舞い上がっていました。調子に、乗っていました。恥ずかしい話、僕は自分の実力がSランクパーティでも、通用すると、思っていたんです……。でも、全然違った。黒竜に睨まれた時、僕の中には、恐怖しかありませんでした。Sランクの実力がある、なんて思っていたのに、頭の中は真っ白になるし、足は(すく)むし、何もできませんでした。そんな相手に、オルンさんはたった1人で挑んで、倒してしまいました。オルンさんの戦いを見て、僕は、何も見えていなかったんだと、痛感させられました。実力不足だとか、居なくても同じだとか、何度も失礼なことを言って、本当に、申し訳ありませんでした――」


 ローガンが瞳に涙を溜めながら、懺悔するかのように言葉を吐き出す。


 ――もう大丈夫そうかな。


「――もう、僕は自分を見失いません! 村のみんなが必死になって、僕をここまで連れてきてくれたんです! 村のみんなを楽にさせてあげる。それが僕の目的です! 僕は心が弱い、実力が足りていない! 目的を達成するには、もっともっと力がいる。だからお願いです! ――僕に探索者のイロハを教えてください! お願いします!」


 ローガンが頭を深々と下げて頼み込んでくる。

 さっきのお願いよりも鬼気迫るものを感じる。

 言葉にして、より一層目的が明確になったのかもしれない。


(それにしても、似ているな。今のローガンの目は、俺が好きな目をしている)


「……わかった。俺の知っていることは、お前に教えていく。それを力に変えるのはお前の努力次第だ。それと、もしもお前がまた自分を見失ったとしても、その時は俺がぶん殴って目を覚まさせてやるから安心しろ」


「あはは……、それなら安心ですね。よろしくお願いします!」


  ◇


「最後はキャロラインだな。お前はどうして探索者になったんだ?」


「んー、あたしには、二人みたいな理由は無いんだよねー。魔獣を殺せる。魔獣を殺せば周りの人が笑顔になってくれる。だから探索者になった。それだけのことだよー」


 この子が何か深い闇を抱えていることは、なんとなく想像できる。

 以前は部外者ってことで触れないようにしていたけど、これからはそうもいかない。

 いずれ、この闇と向き合うことになると思う。


「それだって立派な考えだと思うぞ。今の生活に魔石は必要不可欠だ。キャロラインは人の笑顔が好きなのか?」


「うん! 大好き! だって笑っている人は、あたしを殴らないんだもん! 魔獣が存在するとみんなから笑顔が無くなっちゃう。だから、魔獣を殺すんだ」


 …………相当に根が深そうだな。


「そうか。それなら、ソフィアやローガンと協力していこう。そうすれば、お前たちは笑顔でいられると思うぞ」


「んー、確かにあの黒竜はすごく強かった。あんなのに勝てるようになるには、お兄さんくらい強くないといけないけど、今のあたしじゃ無理だなー。私が合わせるようにすれば、あの黒竜も殺せるようになる? あたしは、みんなから笑顔を奪ったあの害獣を殺したい」


「断言はできないけど、みんなで協力すれば、それだけ勝てる可能性は上がるはずだ」


「そっかー、うん、それなら考えてみる」


 キャロラインの今の目的は黒竜を倒すことみたいだ。

 ひとまず、これからは、自分からも連携に参加してくれるようになるかな。

 黒竜を倒すときに一人であるこだわりは無さそうだし。


「みんなの探索者になった理由はわかった。今言った初心を忘れないようにしてほしい。自分の原点って意外と自分の支えになってくれるものだから」


 俺も、黒竜と戦うときの最後の決め手は、探索者になる時の誓いだったしな。


「あの、オルンさんの、夢とか目標ってあるんですか?」


「勿論あるよ。俺は、『理不尽なことがあろうと何も失わないように、どんな状況にあろうとも大切なものを守れるくらいに強くなる』、そう決意して探索者になったんだ。弱いままだと何も護れないから、俺だってまだまだ強くなるつもりだ」


 そう、まだまだ強くならないといけない。

 大迷宮を攻略するには今の俺の実力じゃ足りない。

 これから先、黒竜よりも強い魔獣が出てくるんだ。

 黒竜を倒せたくらいで満足していちゃいけない。



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[気になる点] 主人公は器が大きいけど、自分としては、 相手が強いと判ってから態度を改められても虚しいだけ そんな奴は信用できない。権力者に媚びてるだけじゃないか 主人公がなんらかの理由で戦えなくなり…
[一言] ローガン結構良い子だった! 今回の経験はきっと将来の糧になることでしょう。
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