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勇者パーティを追い出された器用貧乏~パーティ事情で付与術士をやっていた剣士、万能へと至る~【Web版】  作者: 都神 樹
第九章

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305/323

303.その名を、忘れて

 霊舞祭が終わって、街はようやく静けさを取り戻していた。


 あれほど賑やかだった太鼓や笛の音も、今は遠い記憶のように消えている。


 闇に浮かぶ街灯の光だけが、祝祭の名残をそっと照らしていた。


 ナギサが用意してくれた旅館の縁側で、湯上がりの夜風にあたっていると、近づいてくる気配があった。


「何をしているんですか?」


 ルーナが濡れた髪をタオルで拭きながら、俺の隣に腰を下ろす。


「風にあたってただけだよ。少し、気持ちを落ち着けたくてな」


「そうでしたか。色々と激動でしたからね」


 そう言ってルーナは、静かに息をついた。


 予定とは大きく異なる展開だったが、キョクトウを取り戻すという目的は果たせた。

 だが、国内にはまだ教団の残党が潜んでいるはずだ。

 それをあぶり出す必要がある。


 そして、それと並行して、ようやく明日からは不死鳥の社――術理の調査を始められる。


 振り返れば、ここまで来られたのは本当にみんなのおかげだ。


 俺一人では決してここまで来ることができなかった。


「ここまで、長かったようであっという間だったな」


「そうですね。つい数か月前はまだツトライルで探索者をやっていたというのに、ずいぶんと遠くまで来ましたね」


「特にこの一年間は濃密だったからな。本当に色々あった。大変な思いもたくさんしたけど、それ以上に多くの人の優しさに触れられた」


「私もです。オルンさんに救われたから、私は今ここに居ることができています。改めてですが、ありがとうございます」


「……いきなりだな。そんなことを言うなら、俺の方こそルーナが居てくれて助かった。〝あの日〟ティターニアが協力してくれたのは、ルーナが彼女と良い関係を築いてくれていたからだと思――」


 そう言った瞬間、ルーナの手が止まった。


 タオルを握る指がわずかに硬直しているのが、月明かりの下でもはっきりと分かった。


「……ルーナ?」


 不思議そうに振り向くと、彼女はきょとんとした表情でこちらを見ていた。


 まるで、言葉の意味が分からなかったかのように。


 あるいは、知らない名前を聞いたかのように。


「あの、オルンさん……」


「……どう、した?」


 知らず知らずのうちに声が震える。


 ルーナはゆっくりと首を傾げた。


 


「――ティターニアって、誰ですか(・・・・)?」


 


 聞こえた瞬間、頭の中で何かがゆっくりと崩れていく感覚があった。


 まさか、そんなはずはない。

 でも確かに今のルーナは、心の底から不思議そうに、その名前を口にしていた。


 夏の風が、ひどく冷たく感じられた――。


最後までお読みくださりありがとうございます。

これにて第九章は完結です。

第十章の投稿開始日ですが、10月24日を予定しております。

もしかしたら前倒しになる可能性もありますが、後ろ倒しにはならないと思いますので、しばらくお待ちいただけますと幸いです。


ここで一つお知らせがあります!

本日(9月19日)本作書籍版第二巻のオーディブル版が配信されました!

ぜひチェックしていただけると嬉しいです。

ページリンク ⇒ https://www.amazon.co.jp/dp/B0F2T7Q7BP



以下、簡単なあとがきとなります。


改めまして、ここまでお読みくださりありがとうございます!

第九章はいかがだったでしょうか。

個人的には、かなり刈り込みながら物語を進めたので、思いのほか早く第九章が終わったなぁという感想です笑

キョクトウを舞台に描きたいエピソードはまだたくさんあるので、第十章以降に盛り込めればと思っています。

例えば、露天風呂でまったりしているエピソードとか。


今話の展開からお察しかとは思いますが、第十章はルーナがメインとなる物語を予定しています!

これまで何度か彼女を主役に据えようとしながら、気づけば他のキャラにスポットが当たってしまったので、今回はしっかりルーナを描き切りたいと思います!(描けると、いいなぁ……)


ルーナの他にも、おとぎ話の時代のエピソードや、ソフィアやセルマの近況なども描ければと考えていますので、どうぞお楽しみに。


最後に一点だけ、真面目なお話を。

キャラクターが語る言葉や思想は、あくまでそのキャラクター自身の価値観です。

作者である私個人の思想や信条を反映したものではなく、また特定の思想や信条を推奨する意図も一切ございません。

その旨ご承知おきいただけますと幸いです。

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― 新着の感想 ―
えぇ···
2つの存在を消費して今がある事にようやく知ったオルン
初めて感想出します!3日前に小説版を初めて読み始めたのですが、この作品がすごく好きになりました!!10章以降もすっごく楽しみです
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