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勇者パーティを追い出された器用貧乏~パーティ事情で付与術士をやっていた剣士、万能へと至る~【Web版】  作者: 都神 樹
第一章

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29.【side勇者パーティ:ルーナ】強制送還

 大迷宮を出た私たちは、急いでギルドへ向かいます。


「《黄金の曙光(おうごんのしょこう)》です! ギルド長、もしくは副ギルド長を呼んでください! 事態は一刻を争います! 至急お願いします!」


 ギルドの建物に入るなり大きな声を上げました。

 はしたないですが、今はそのようなことを気にしている状況ではありません。


「《黄金の曙光》って、勇者パーティ!? 誰か急いでギルド長を呼んできて!」


 私たちに気づいたギルド職員の一人が、他の人に声を掛けてくれました。


 《黄金の曙光》とは、私たちのパーティの名前です。

 九十四層に到達してからは、勇者パーティと呼ばれることの方が多くなりました。

 しかし、九年前に私とオルンさん、オリヴァーさんの三人でパーティを組み始めた新人の頃から、この名前は一度も変えていません。


 このパーティ名の由来は、まぁ、機会があったら話します。

 今はそんな時間がありませんので。


「ルーナちゃん、慌てちゃってどうしたの? ひとまず会議室に移動しましょ? ギルド長もすぐに来るから」


 私たちの突然の乱入で喧噪な雰囲気になっている中、それを意に介さないギルド職員の女性が、声を掛けてきました。


 彼女はエレオノーラさん。

 私たちのパーティを担当してくれているギルド職員で、《黄金の曙光》結成時からお世話になっている方です。

 エレオノーラさんを見たら、焦っていた気持ちが少し和らぎました。

 この人の、他人に安心感を与える雰囲気や包容力は、見習いたいものです。


 エレオノーラさんに案内された部屋は結構広めでした。

 恐らくギルド長以外のギルド幹部の人たちも来るのでしょう。

 さすがは勇者パーティの発言力ですね。

 一声(ひとこえ)でギルド幹部を集めることができるなんて……。


 この発言力はあの人がもたらしてくれたのに、私たちはその恩を仇で返してしまいました。

 どう償えば良いのでしょうか……。


 そのようなことを考えていると、ギルド長を含め、ギルド幹部数名が会議室に現れました。


「いきなりお呼び立てしてしまい、申し訳ありません。本日はお願いしたいことがあり、(まい)りました。今すぐに大迷宮に潜っている探索者を全員、強制送還で地上に戻してほしいのです」


 本来、このような交渉事は、オルンさんかオリヴァーさんが行っていました。

 オルンさんがいない今、オリヴァーさんが行うべきですが、先ほどから黙っていて使い物になりません。

 デリックさんとアネリさんは交渉事に向いていませんし、加入したばかりのフィリーさんに任せるわけにもいきません。

 そのため消去法で私が代表して話しています。


「勇者である君たちがそう言うんだ。相応の理由があるのだろう。だが、強制送還をしてくれと言われて、二つ返事で対応することはできない。まずは理由を話してくれないか?」


 ギルド長が理由を聞いてきました。

 強制送還はかなりコストの掛かる魔術だと聞いています。

 頭ごなしに却下されず、助かりました。


「詳しく話している時間はありませんので、簡潔に説明します。詳細は事が済んだらお話しすることをお約束しますので、ご了承ください」


 ギルド長が首を縦に振ったことを確認してから、再び話し始めます。


「今回強制送還を依頼した理由は、九十二層のフロアボスである黒竜が、下層以上のボスエリアに移動した可能性が極めて高いためです。今こうしているうちにも黒竜と出会った者がいれば、抵抗する間もなく命を落としてしまうでしょう。強制送還したのち、私たちが黒竜の討伐に当たります。まずは人命優先のために強制送還をお願いします!」


 私の発言にギルド幹部たちに動揺が走りました。

 それはそうでしょう。フロアボスがその場所から移動するなんてことは、前代未聞のはずですから。


 普段から温厚で、常に笑顔を絶やさないギルド長すらも、信じられないといった表情をしています。

 でも、それも一瞬のこと。


 すぐさま強制送還をするかの決議に移りました。

 ギルド幹部の全員が賛成し、強制送還をすることが決定しました。


 少しは揉めるものと思っていました。

 こんなに早く決まるとは……。


「あっ、四十五層から五十層にいる人たちだけ、別の場所……そうですね、大迷宮近くの広場に転送させることは可能ですか?」


 私が入手した情報を(もと)に考えれば、《夜天の銀兎》は今ごろ四十五層を探索しているでしょう。

 ただ、彼らは優秀なクランで、そこにオルンさんもいる。

 昨日も予定より早く終わっていたようですし、今は四十五層から五十層のどこかにいるはずです。


 そこにいる人たちだけを別のところへ移動することが可能であれば、オルンさんをより早く見つけることができます。


「それくらいなら造作もない」


 私の願いを聞き入れてくれたギルド長は、見たこともない魔法陣を出現させました。

 正直私には構造が全く理解できませんが、オルンさんなら理解できるのでしょうか?

 私の異能すらすぐに理解した彼なら、こんなことも造作も無い気がします。


 その魔法陣にギルド幹部全員が、魔力を流し込んでいるようです。


「強制送還は完了した。《黄金の曙光》は黒竜の討伐を頼む。我々は急な強制送還で混乱している探索者のサポートを。総出で当たりなさい!」


 ギルド長の号令で幹部全員がすぐに動き出しました。


「さて、私たちもオルンさんを探しに行きますよ」


「……なぁ、本当にあんな器用貧乏が必要なのか? そもそもさっきのルーナの話だってどこまで本当なのか、わかったもんじゃねぇし。 ()らないだろ」


「そ、そうよ! さっきは不意打ちに近かったから負けたのよ! 黒竜と戦うって最初から分かっていれば、あんなのに後れは取らないわ!」


 この期に及んでデリックさんがオルンさんの再加入に文句を言い、それにアネリさんも同意しています。



最後までお読みいただきありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ここまで読んでてチラホラと表現されていたけど、 どうやら先生はオリヴァーに関しては、 デリックとアネリの2人よりかはマシなキャラに描くつもりらしい この話で確信を持った 幼馴染だから、主人…
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