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勇者パーティを追い出された器用貧乏~パーティ事情で付与術士をやっていた剣士、万能へと至る~【Web版】  作者: 都神 樹
第八章

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262.【sideフィリー】不死鳥の社

 

  ◇

 

 ベリアに連れられてやってきたのは、かつてこの国を治めていたシノノメ家の屋敷の裏手にある山林だった。


 この国の住人はこの山林を〝霊山〟と呼んでいる。


 霊山はこの島に国が出来た時からシノノメ家が管理し、普段はシノノメ家とその分家であるテンドウ家、アサギリ家の者しか立ち入ることができない禁足地となっている。

 そんな場所にわたくしたちが入れているのは、数年前の内戦を経て教団がこの国を支配下に置いているため。


 普段は関係者以外立ち入れないところだけど、年に一度、夏に国主導で行っている祭りの最終日だけは、一般人もこの山への立ち入りが認められているけど、アレに何の意味があるのかしらね。


 石畳の参道を道なりに進むと、大きな鳥居が見えてきた。

 さらに進むと、その鳥居の向こうに巨大で荘厳なる神社が姿を現す。


 キョクトウに暮らす人間のルーツを辿ると、外の世界にある東洋の島国に辿り着く。

 この国は他の国とは違う独自の発展を遂げてきた国だと聞いている。

 そして、彼らは自然界や人間の営みに関するものなど、ありとあらゆるものに神が宿っているという考え方が主流だったらしい。

 それだけ多くの神がいるのだから、当然それらを祀るための場所である社も国中に多く存在していたとのこと。

 その文化の名残なのか、キョクトウにもいくつか社が存在する。


 この世界が作られて数百年。

 今ではキョクトウの人間は、社の存在理由を忘れている。

 それでも、社が未だに壊されず残っているのは、かの国の考え方が深層心理に根付いているからなのでしょうね。


 ……そんなにたくさんの神が本当に存在するなら、是非とも彼らに、どうして人間なんて不完全な生き物を放置しているのか問いただしてみたいわ。


「これが、不死鳥の社なのかしら?」


 奥にそびえたつ神社を見ながらベリアに問いかける。


 わたくしは長年不死鳥の社を探していた。

 おとぎ話の時代末期に、《おとぎ話の勇者》アウグストと共にこの世界を創った仲間である《剣仙》と《姫巫女》の子孫が、先祖代々護り続けてきたこの神社が怪しいことは火を見るよりも明らか。


 キョクトウを押さえたわたくしは、最初にこの神社を調べた。

 しかし、手掛かりは何も見つけられなかった。

 この神社は立派ではあるけれど、入念にここを調べても〝普通の建物〟でしかなく、術理に関わる建物のようにはどうしても思えない。


 だからこれは不死鳥の社をから目を逸らさせるための建物だと思っていたのだけれど。


「あぁ。ここが不死鳥の社への入り口だ」


 ベリアが鳥居の前(・・・・)で足を止め、わたくしの質問に答える。

 そのまま鳥居へと手を伸ばすと、鳥居に囲われている空間が水面のように揺らめいた。


「……これは」


「不死鳥の社は迷宮の内部と同様に、この世界とは空間を隔てた場所に在る。そしてこの鳥居が、ここと向こうを繋ぐ門だ。奥にある神社は、この門と自然に溶け込ませるための見せかけの建物に過ぎない」


 こことは違う別の空間……。

 なるほど、普通に探しても見つからないのも道理ね。


 ベリアが鳥居を潜ろうとしていたため、わたくしもその後ろを付いていく。

 すると、彼に制止された。


「ここから先、フィリーを入れることはできない」


「何故かしら? ここまで来てわたくしに隠すことなんて無いでしょう?」


 往生際の悪いベリアに苛立ちを覚える。


「フィリーを信用していないとかそういう話では無い。この中は事実上、外の世界と同じ環境だ。超越者でないフィリーにとっては猛毒が充満されている空間と言って差し支えない」


「……そう。そういうことなら仕方ないわね」


 確かに考えてみれば当然のことね。

 本当は前もって中の状況を確認しておきたかったけど、入ったら死んでしまう場所に足を踏み入れることはできない。


 後日、《雷帝》に中を確認してもらいましょう。


 鳥居に足を踏み入れたベリアの姿が虚空の中へと消える。


「……ひとまず、この場所を知れただけで良しとしましょう。それにしても、ここまで長かったわね」


 本格的に行動を起こしてから今日まで、本当に長く感じた。

 ベリアの機嫌取りは本当に面倒くさかった。

 それも、ようやく終わる。


「もうお前は役割を果たしたわ、ベリア。もうお前自身(・・・・)に用はない。とっとと退場してもらいましょうか」


 この場に誰もいなくて良かったわ。

 自然と口角が上がってしまい、笑みを隠すのが難しかっただろうから。

 

  ◇

 

 しばらくベリアを無力化する方法について考えを巡らせていると、 鳥居の向こうからベリアが帰ってきた。


「おかえりなさい、ベリア様。無事に終わったのかしら?」


「……あぁ。迷宮の規則を書き換えた。現在進行形で世界各地の迷宮が氾濫(・・)しているはずだ。それと、先ほどヒティア公国の首都セレストから第二農場(セカンドファーム)のある島へ長距離転移した者が居ることも確認できた。十中八九オルンだろうな」


 迷宮は魔獣を産む出す空間のこと。

 そして、迷宮は術理によって、原則魔獣をその階層から移動させてはならないと定められている。

 様々な要因が絡まって、稀にその法則が破られて魔獣が地上に現れることがあるけれど。


 《シクラメン教団》も、この法則の穴を突いて人為的に氾濫を起こしていた。

 氾濫が起こっても、その時の状況によって掛かる時間は異なるけれど、最終的には術理によって迷宮の機能は正されて氾濫は収まる。


 だけれど、ベリアが術理を操作したことで、『迷宮内の魔獣が階層間の移動を禁止する』という規則が取っ払われたため、この迷宮の氾濫は半永久的に続くことになる。


 それは、世界の状況を一変させることと同義。

 これまでは魔獣と戦うのは探索者だけであり、戦うのも迷宮の中だけであった。

 しかし、これからはそうはいかない。

 人間と魔獣による生存権争いが各地で起こることになる。

 人間だろうと魔獣だろうと、弱い者から死んでいく世界になった。


(ふふふ。面白い世界になるわね。この混沌とした状況こそ、わたくしが求めているものよ。所詮人間は近いうちに滅ぶのだから、それまでの束の間の時間でわたくしを楽しませて頂戴)


最後までお読みいただきありがとうございます。

次話もお読みいただけると嬉しいです。


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