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23.引率者 VS. 50層フロアボス

 なんだかんだで、五十層のボスエリアまで到着してしまった……。

 ここまで大きな問題も発生せずに来られるとは、正直思っていなかった。

 新人パーティが敗北しそうになって、引率者が代わりに倒すという機会は階層が深くなるにつれて増えていったけども。

 それは仕方のないこと。

 それでも新人たちもこの三日間で迷宮探索に慣れたのか、今日は予定が大きく前倒しになっている。


「では、フロアボスをサクッと倒して打ち上げと行こうか!」


 セルマさんが引率者に声を掛けながら各種バフを掛ける。


「「「おぉ!!!」」」


 五十層のフロアボスは巨大なカニの魔獣だ。

 全体的に大きくなっているが、左のハサミだけが体と同じくらいに大きく、非常にアンバランスな姿になっている。


 今回の戦闘で俺には大きな役割がある。

 ――厄介な左のハサミを斬り飛ばすという役目が。


 カニのハサミは非常に硬いため、斬り飛ばすのには時間が掛かる。――普通なら。


 俺が先陣を切り、カニに向かって突っ込む。


 駆けながら自分に必要なバフを掛ける。


 カニが俺に攻撃するために左のハサミを振り下ろそうと、ハサミを上にあげる。


 自ら斬り飛ばされるためのお膳立てをしてくれるとはありがたい。


 ハサミが振り下ろされるよりも早く、カニの頭上ギリギリを飛び越えるように地面を蹴る。


 カニと交差するときに左のハサミの付け根を目掛けて剣を振る。


 刀身が当たる直前に【瞬間的能力超上昇(インパクト)】を発動する。


 【瞬間的能力超上昇(インパクト)】とは、俺のオリジナル魔術の一つだ。

 効果は単純。

 一秒にも満たない一瞬だけ、この魔術を付与した装備の性能や耐久力、魔術の威力を、強引に最大で百倍(・・・・・)まで引き上げることができる。


 魔術について深く知っていく過程で、俺は魔術のバグ(不具合)を見つけた。

 不具合と言っても、普通に魔術を使うのであれば、何ら影響の無いものだ。

 俺はこの不具合を利用したチート(ズル)によって【瞬間的能力超上昇(インパクト)】という魔術と、ある一つの技術を確立した。


 後ろめたい気持ちも多少はあるけど、これらを使うことによって人の命を脅かすといった致命的なデメリットは存在しない。

 術式構築の難易度は非常に高いけど、術式構築はとことん極めている技術の一つだ。

 だから、術式構築の難易度は俺の障害にならない。


 支援魔術の上昇値の低い付与術士である俺が、深層でも生き抜くための(すべ)の1つと割り切って、遠慮なく使っている。

 これは俺のアイデンティティだ。

 そして、いくら有用だと言っても、要はズルだ。

 だから、この魔術を公開することは無い。

 よって、俺だけが使える、俺だけの魔術だ。


 俺が振るった剣は抵抗感も無く、ハサミを付け根から斬り飛ばす。


 そのままカニを飛び越え、背後に着地する。


「マジかよ!? 本当にハサミを一撃で斬り飛ばしやがった!」


 カニの向こうから、バナードさんの興奮気味な声が聞こえる。


 初撃で斬り飛ばすって言ってたのに、信じてなかったな?


 カニが俺に攻撃をするために振り向こうとするが、その前にディフェンダーの二人が接近して、カニの敵対心(ヘイト)を稼ぐ。


 一番厄介なハサミが無くなれば、あとは硬い甲羅に覆われているだけの弱い魔獣だ。


 ディフェンダーの二人が正面から、俺が背後から足を中心に攻撃して、その場に釘付けにする。


 セルマさんとキャシーさんが上空から甲羅に攻撃魔術を集中させる。


 甲羅にひびが入ったところで、俺がひびに剣を突き刺す。


 五分と経たずにカニはその体を黒い霧に変えた。


  ◇


 ディフェンダーの二人が、魔石と魔獣素材を回収すると新人たちの元へと戻った。


 みんなが満面の笑みを浮かべながら、今日までの三日間を称え合っている。


(良い雰囲気のクランだな)


 その光景を見ていると、心が温まる。


 だけど俺はその輪に加わらず、カニを討伐してから、その場を動くことができなかった。


(それにしても、なんだ、この感覚は……。まるで深層にでもいるときのような……)


 中層には似つかない周囲の雰囲気に、嫌でも緊張感が高まってしまう。


 そんなことを考えていると、突如ボスエリアの中心の空間が歪む。











 ――その直後、雷鳴のような咆哮と共に黒い巨大な何かが現れた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 一応説明してはいるのだろう、ただ相手に理解させようとはしていない様に思う。今回のもそうだが剣士としての実力では一歩劣る人間に一撃で切り落とす何て言われても信じられる訳ないですし、オルンも公開…
[一言] そんな気はしてたが、やはりそうなるのね()
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