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22.並列構築

「並列構築、ですか?」


 ソフィアへのレクチャーは未だに続いている。今はAランクの魔術士には必須と言っても過言ではない技術である、『並列構築』を教えるところだ。


「そう。意味は読んで字のごとくなんだけど、二つ以上の術式構築を同時に行う技術のことを言うんだ」


「二つ以上同時に……。そんなことできるんですか? とても難しそうですが……」


 確かに並列構築は難しい。魔術士が挫折するポイントの一つと言われるくらいには。


 そもそも術式構築は膨大な計算を脳内で行うことだ。同時進行で複数の計算をするには慣れが必要となる。


「慣れれば二つくらいならできるようになる。中には数十個の術式を同時に構築できる人もいるからね」


「数十個……。私には無理ですね……。しかし、なぜ並列構築が必須の技術になるのでしょうか? その、特級魔術が使えれば問題なさそうな気がするのですが」


 攻撃魔術は初級、中級、上級、特級の四段階に分けられている。

 階級が上がるほど、威力が上がったり、範囲が広がったりするが、当然ながら術式構築の難易度も上がるため、術式構築に時間が掛かる。


「下層の魔獣ともなると、たとえ特級魔術でも一撃で仕留めるのは難しくなるんだ。魔術士が魔術を発動してから次の魔術を発動するまでの時間をインターバルと呼ぶのは知ってるよね? ほとんどの魔術士がインターバル中は無力になる。そこで、並列術式が役に立つんだ。基本的な活用法は、1つの魔術の術式構築が半分ほどできたタイミングで、別の魔術も同時に構築を始める。そうすることで単純計算で、インターバルの時間が半分になる」


「な、なるほど。確かに何もできない時間が短くなるのは魅力的です。それと、下層の魔獣は特級魔術でも倒せないくらい強いんですね……」


「単純に威力の高い魔術を連発していればいいってわけじゃない。Aランクの魔術士でも中級魔術をよく使ってるよ。流石に初級を使う人はほぼ居なくなるけど。要は使い方次第だ。確かに特級魔術は威力が高いけど、範囲も広い。そうすると前衛の仲間も巻き込む可能性がある。初撃に特級魔術を発動して、以降は中級や上級の魔術で仲間と連携しながら戦う、というのがAランク魔術士の王道の動きになるかな」


「勉強になります! 私は早く特級魔術を使えるようにって思っていました。でも、特級魔術だけ使えても魔術士はダメなんですね。頑張って並列構築ができるように努力します!」


「うん、頑張って。ソフィアには既に中層で戦えるだけの実力がある。だから、今の内から下層でも戦えるよう並列構築を練習してみるといい。幸い《夜天の銀兎》にはたくさんの先輩がいるんだ。先輩たちに教えて貰いな。それこそセルマさんなら喜んで教えてくれると思うよ」


 大衆料理店でのセルマさんのソフィアに対する溺愛っぷりを見れば、間違いないだろう。


「わかりました! で、でも、教わるならお姉ちゃんじゃなくて、オルンさんがいいな、なんて……」


 ソフィアが顔を真っ赤にして俯きながら、小さな声で呟く。

 小さすぎて危うく聞き逃すところだった。


「……俺に?」


「は、はい、ダメ、でしょうか……?」


 ソフィアが潤んだ瞳で、上目遣いこちらを見てくる。

 正直すごく可愛い。

 わ、わざとやってるわけじゃ、ないよな?


 それにしても俺に教えてほしい、か。教えること自体はできるけど、部外者の俺が教えていいものだろうか?

 《夜天の銀兎》にも教育方針はあるだろうし、セルマさんに確認するか?

 ……いや、なんか、ものすごく面倒な展開になりそう。

 とはいえ、勇気を出して俺に頼んできたこの子の意志も尊重してやりたいしな……。

 仕方ない、面倒な展開にはなりそうだけど、セルマさんが許可をくれたら応じることにしよう。


「セルマさんがいいって言ってくれたらいいよ。部外者の俺が無許可で指導するわけにはいかないからね」


「ホントですか!? お姉ちゃんは私に甘いから大丈夫です! ありがとうございます!」


 セルマさん、妹さんにそう思われているみたいですよ……。



最後までお読みいただきありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[一言] ソフィアちゃんもお姉さんのこと大好きみたいなのに、お姉ちゃんは私に甘いってさらっと口にするのに笑ってしまいました。 正確な認識ができててえらい(笑)
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