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勇者パーティを追い出された器用貧乏~パーティ事情で付与術士をやっていた剣士、万能へと至る~【Web版】  作者: 都神 樹
第六章

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218/323

216.月華の下で

 

  ◇ ◇ ◇

 

 祝勝会を終えてからしばらく経ったところで、俺はクローデル家の屋敷のバルコニーへとやってきた。

 ちなみに俺たちはマリウスさんの厚意でクローデル家の屋敷の一室に泊めてもらえることになっている。


「あ、オルンさん、こんばんは! すみません、こんな遅い時間に呼び出してしまって」


 俺がバルコニーに到着すると、そこで月を見上げていたソフィーが俺に気づき、声を掛けてきた。


「全然構わないよ。それにしてもソフィーは本当に月が好きなんだな」


「そうですね。月は《夜天の銀兎》のモチーフですし、やはり、見上げていると力を貰えるような気がするので」


 そう言うソフィーの表情はすごく明るいものだった。


「……既に分かっていると思いますが、私、さっきまでお兄ちゃ――あ、マリウスさんと話をしていたんです。彼ときちんと話をしたのは生まれて初めてだったかもしれません」


「……祝勝会で呼ばれたやつだな。彼のことを『お兄ちゃん』と呼んでいるということは、マリウスさんと和解ができたのか?」


「はい。私はずっとお兄ちゃんに嫌われていると思っていました。でも、お兄ちゃんと話をして、実は助けられていたと分かったんです」


 それからソフィーはマリウスさんと話したことを教えてくれた。


 実際のマリウスさんは、 情の深い人物であったらしい。

 彼はセルマさんと良い兄妹関係を築けていたそうで、 ソフィーとも同様の関係を築きたかったらしいが、環境がそれを許してはくれなかった。

 マリウスさんとセルマさんの実母は元伯爵夫人であるが、ソフィーの実母は使用人で、尚且つ出産時に亡くなってしまっている。

 血統主義のきらいがある元伯爵夫人には、クローデル伯爵家に平民の血が入ったことを面白く思っていなかった。

 そんな状況でマリウスさんまでソフィーと仲良くしていたら、更にソフィーの立場が悪くなると考えて、彼は無関心を貫くとともに、両親の負の感情がソフィーに向かないように水面下で動いていたらしい。


「……私は、自分の家族がお姉ちゃんしかいないと思っていましたが、それは違いました。私は生まれた時から、お姉ちゃんだけじゃなくて、 お兄ちゃんともきちんと家族でした。それがようやくわかって、今はすごく幸せな気持ちです! 私の居場所も帰る場所も《夜天の銀兎》ですが、もう一つ、そんな場所ができました」


「それは、良かったな」


「はい!」


 俺にはもう家族が居ないから、家族との付き合いというものがいまいちピンと来ていない。

 だけど、家族が居るのに疎遠になっているというのも、それはそれで辛いものだろうことは察しが付く。


 だからこそ、ソフィーが兄と和解できて本当に良かったと思う。


「それで、ですね。オルンさんに来てもらったのは、お伝えしたいことがあったからなんです」


「俺に伝えたいこと……?」


 ソフィーの言葉の真意がわからず、オウム返しをしてしまうと、彼女は一つ頷いてから口を開いた。


「オルンさんが私たちの師匠になってくださった日、オルンさんは私たちに質問しましたよね? 『私たちの夢や目標を教えて欲しい』、と」


「あぁ、聞いたな。よく覚えているよ。俺の質問に対して、ソフィーは『夢や目標を見つけるために探索者になった』と答えてくれた。……今この話をしているということは、夢や目標が見つかったということか?」


「はい。見つかりました。――私は、夜を照らす月のように、みんなを照らせる人になりたいです」


 俺の問いかけにソフィーは満面の笑みで答える。


「……私やキャロルのように、過去に辛い経験をしている人は多くいると思うんです。それに、これから王国と帝国の戦争が激しくなれば、今の子どもやこれから生まれてくる子たちには、厳しい環境が待っているかもしれません。そんな人たちの闇を祓って、そして導ける存在になりたいです」


「人を導く立場になりたい、か。立派な夢だな。でも、その分大変な道のりだぞ」


「はい。わかっている、つもりです。でも、もう決めました。そのためにも私はもっと強くなります。心も体も。そして、オルンさんやお姉ちゃんを追い越してみせます!」


 ソフィーが真っ直ぐな目を俺に向けてくる。

 その目は、出会った頃の彼女からは想像できないものだ。

 そうか、もうソフィーは自分ひとりで進めるだけの力を持っているんだな。

 俺の力なんていらないくらい、な。

 それは寂しくもあるが、やはり喜ぶべきことなんだろう。


「言うようになったな。簡単には追い越させないからな?」


「そうじゃなきゃ追いかける甲斐がありませんし、むしろ望むところです!」


 煌々と照る月の下で笑う彼女の表情は、俺が見てきた中で一番晴れ晴れとしたものだった――。


最後までお読みいただきありがとうございます。


これにて第六章は終了となります。

当初思い描いていたよりも長い道のりでしたが、ようやくここまで来ることができました!

第五章のあとがき的なものでも書いていましたが、第六章は助走で、ある意味では第七章からが本番です。

ここまで匂わせてきたことに対する答え合わせも徐々にしていく予定ですのでお楽しみに!


次回の更新日は11月3日(金)となりますのでよろしくお願いいたします!

更新を楽しみにしていただいている読者様には申し訳ありませんが、ご承知おき頂けると幸いです。


今後とも拙作をよろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 第六章終了ですね。 個人的には、オルン達には休暇でも取って、のんびり街を散策したり、大自然の中で遊んで疲れをとって欲しいですね。 そして、そんなお休み中に、新たなる敵と遭遇する(笑)。
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