141.【sideローガン】師から弟子へ
◇ ◇ ◇
先月、師匠に成人祝いとして高そうな料理店に連れて行ってもらった時のこと。
「成人祝いを色々と考えていたんだけど、やっぱり俺から渡せるものはこれしかなかった」
師匠に自分の悩みを吐露してからしばらく経った頃、師匠が自虐気味に苦笑しながら数枚の紙を僕に手渡してきた。
それを受け取った僕がその紙に視線を落とすと、そこにはびっしりと術式が書いてあった。
「……師匠、これ、一つの魔術ですか?」
僕がそう質問してしまうのも無理はないと思う。
紙に書かれている内容を見れば魔術の術式だってことはすぐにわかる。
でも、その記載量が尋常ではない。
以前、魔術の中で最高難易度と言われている【空間跳躍】の術式を見せてもらったことがあるけど、今の僕では到底実戦で使用できるレベルのものではないとすぐに悟った。
この紙に書かれている内容は、それに匹敵するレベルの術式だ。
「そうだ。本当は六分割にしたかったんだが、時間が無くてな。中途半端なもので申し訳ない」
「いえ、そんな! でもこの魔術って、もしかしなくても師匠のオリジナル魔術ですよね? 基本六種の支援魔術に似ているような気もしますが」
「流石付与術士、正解だ。俺が自分にしか使えない独自のバフを使用していることは知っているよな?」
「はい。通常の支援魔術よりも上昇値が高い師匠のオリジナル魔術ですよね?」
「あぁ。その魔術を俺は【重ね掛け】って呼んでいるんだが、この魔術は他人に作用しない魔術でな。最近までその原因が分からなかったんだが、ようやく原因が分かったんだ。そして、今ログに渡した術式が自身だけでなく他人にも発動できるアレンジを加えた【重ね掛け】になる」
「これが、師匠が普段使っているバフの術式……」
「かなり改変しているが、効果は同じであるはずだ」
「……すごく有難いんですが、オリジナル魔術ですよね? 僕はオリジナル魔術を開発したことが無いから想像することしかできませんが、相当な労力を要することはわかっています。そんなものを僕なんかにこんなあっさり渡しちゃっていいんですか……?」
「『僕なんか』なんて卑下するな。お前は優秀な付与術士だ。それにその魔術は近いうちにクラン内でも公開する予定だが、その前段階としてテスターをしてくれる人を探していてな。ログが適任だったというのもある。だから遠慮なく使ってくれ。それで使用感を定期的に報告してくれると助かる。ま、使いこなせるなら、だがな」
師匠はからかうような口調でそう言ってきた。
恐らくテスター云々は僕の罪悪感を減らすための方便だろう。
「……師匠、ありがとうございます。僕は絶対にこの魔術を使いこなしてみせます!」
「あぁ、期待している。それからログに一つ助言だ――」
◇ ◇ ◇
【二重掛け】を発動したことで少年のデバフを相殺できた。
「……?」
付与術士である少年も僕の雰囲気が変わったことに気づいたようで、少しだけ警戒の色を覗かせた。
【二重掛け】で多少のコツを掴めた僕は、更に術式を構築して魔術を発動する。
「………………【三重掛け】!」
師匠はこれを戦闘中に何度も使っているのか。
どれだけ高いんだろうか、僕が乗り越えないといけない壁は。
【重ね掛け】をする度に頭痛がひどくなっていく。
今の僕ではこれが限界だ。
これ以上の【重ね掛け】はできない。
つまりバフの更新もできない。
でも僕は、幸か不幸か支援魔術の効果時間が平均よりもかなり長い。その時間は約四百秒。
――この四百秒で二人をぶっ飛ばす!
「――っ! フレッド、下がりなさい!」
「……え?」
僕が地面を蹴ると同時に少女が声を上げた。
少年との距離を一気に詰めて、手に握っている槍で突きを繰り出す。
少年は全く反応できておらず、このまま急所を避けて突き刺そうとしたが、少女がすごい速さで僕たちの間に割って入ってきた。
槍の穂先を少女が刀身で受け止める。
僕はそのまま槍に力を加えて思いっきり押し出すと、少女とその背後に居た少年を吹っ飛ばした。
「すごい。デバフも受けているのにこんなに力が湧いてくるなんて……」
「なんて力……。フレッド! 私にバフちょうだい!」
受け身をとった少女が少年に声を掛ける。
【重ね掛け】は術式構築の難易度が異常に高いからもう使えないけど、他の魔術なら多少は使える。
頭痛なんてキャロルが傷つけられる未来を回避できるならいくらでも我慢できる!
と言っても使いすぎれば戦闘ができなくなるから、バンバン使える状況ではないけど。
冷静に客観的に自分の状況を把握しながら戦闘を進める。
それが自己バフで戦う者の必須条件だと、師匠からも口酸っぱく言われている。
腸が煮えくり返るくらい怒っているけど、そのまま戦うんじゃだめだ。
複数の【雷矢】を発動して二人を攻撃する。
それを少年が魔術で迎撃しながら、それと同時に少女へのバフも行っていた。
バフを受けた少女が肉薄してくる。
(剣士との模擬戦は師匠のお陰で嫌というほどやっている。師匠よりも弱いお前には負けない……!)
槍の利点は剣の間合いの外から一方的に攻撃できること。
それを難なく潜り抜けてくる師匠がおかしいのであって、普通の剣士なら技量が多少劣っていても勝てる。
それに今の僕には、【重ね掛け】によるバフもあるんだ。
そう考えていたが、少女は例外だった。
「――っ!?」
最初こそイーブンであったが、徐々に劣勢に持ち込まれる。
その理由は少女の剣だ。
剣士が持つ剣の適切な長さは、自身の身長の半分から三分の二と言われている。
だけど少女の剣の長さは少女の身長に迫るもので、適切の長さから逸脱している。
本来ならその剣に振り回されるはずだが、少女はその剣を自在に操るだけの技術を持っていた。
その結果、槍の間合いのはずが、踏み込まれれば少女の切っ先が僕に届きそうになる。
更には刀身が長いために一般的な剣士が振るう剣に比べてテンポがわかりにくい。
いつもの調子で剣を受けようとすると、まだ刀身が遠くにあるといったことも起こってしまって、すごく戦いづらい。
「ぐっ……!」
少女が僕の隙を突いて剣を振り下ろしてくる。
僕はそれを横にした槍の柄で受け止める。
剣自体の重さと少年のバフを受けた少女の膂力が僕に圧し掛かる。
【重ね掛け】のお陰でどうにか拮抗しているけど、長く持ちそうにない。
(どうにかしないと……!)
そう考えていると左右から雷の矢が僕に向かって飛んできた。
少年による攻撃魔術だ。
「――っ!?」
少女に押さえつけられ、動けない僕に迫ってくる雷の矢が突然空中で静止した。
そしてその矢が向きを変えて少年へと飛んでいく。
「なんでっ!?」
少年は驚きの声を上げながらそれを躱す。
「今の私でもログのフォローくらいはできる……!」
背後からソフィーの声が聞こえた。
どうやら今のは【念動力】によるものみたいだ。
攻撃魔術を反転させるなんて、そんなことまで可能なのか……。
やっぱり異能はすごいな。
僕も異能が欲しいけど、無いものをねだっても仕方ない。
今あるものだけで戦わないと!
と、決意したはいいけど、今の状況はかなり悪い。
攻撃魔術による追撃の心配は無くなったけど、少女に押し潰されそうになっていることには変わりない。
(どうやってこの状況を変えれば……!)
――『それからログに一つ助言だ。絶体絶命だって思った時は、『自分は影だ』と心の中で繰り返し呟いてみるといい。そうすれば状況を好転することができる、かもしれない』
どうにか打開策を考えていると、先月師匠に言われた言葉が頭に浮かんだ。
師匠がなんであんなことを言ったのかはわからない。
でも今の僕にできることは少ない。
このまま叩き斬られるくらいなら……!
(……僕は、影だ)
小さい頃からネガティブな感情のときに何となく思っていたことを、しっかりと心の中で呟く。
「え――」
すると、突然地面が無くなったような感覚に陥る。
そして僕は地面に――いや、影の中に沈んだ。
◇
次の瞬間、僕は真っ暗な暗闇の中を、まるで水の中のように漂っていた。
「ははは……。ホント、師匠には敵わないなぁ……」
僕が小さい頃から持て余していた感情、それが僕の異能の取っ掛かりだったなんて、欠片も考えたこと無かった。
そのことを師匠に言ったのは、成人祝いをしてくれたときが初めてだった。
それなのに師匠はそれが僕の異能の正体だとすぐに見破っていた。
真っ暗で何もない空間なのに何故か落ち着く。
しばらくここに居たい気分だけど、そんな時間はない。
「よし! 行くか!」
◇
少年の背後に伸びる彼の影の中から飛び出す。
僕の気配を察したのか、少年が驚きの表情で振り向いた。
その顔面に全力で拳を叩き込む。
「フレッド……!」
数メートルほど飛んで地面に横たわる少年を見て、少女が僕に殺気を向けながらすごい速さで接近してくる。
「……コイツはお前の弟なんだろ? ならどうして……、どうして弟を傷つけられて怒れるお前が、妹であるキャロルを傷つけてるんだよ!!」
少女が剣を振るってきたため、その刀身に槍を打ち付けながら声を上げる。
「……っ! うるさい……。何も知らない他人が出しゃばってくるなっ!」
「他人じゃない! 仲間だ! 仲間が傷つけられているのに黙っていることなんてできない!」
僕の言葉に少女が怒りの表情を覗かせる。
それから何度も剣を振るってくる。
僕はそれを槍で防きながら自分の影に干渉する。
僕から伸びる影がうごめくと、オオカミのように形を変えて実体化した。
影のオオカミが少女に接近する。
「なにそれ」
オオカミの動きに合わせて僕も槍で攻撃を繰り出すけど、少女は意に介した様子もなく僕の攻撃を捌きながらオオカミを両断する。
するとオオカミが形を崩し、黒い液体をぶちまけたように周囲に飛び散る。
その一滴ずつが小さな針に形を変える。
何かを察した少女が背後に跳んで剣を構える。
無数の針が少女に飛来すると、少女は剣を振るいその剣圧で針を吹き飛ばし、更にはその斬撃が僕への攻撃となっていた。
その斬撃を躱しながら魔術を発動する。
「【土壁】!」
少女の側面に彼女の身長を優に超える高さの壁を隆起させた。
この壁は何の仕掛けもないただの土の壁だ。
だけど、突然現れた壁に注意を向けてしまうのは仕方のないこと。
少女が壁の方に視線を向けた瞬間、僕は影の中に潜る。
そして、土の壁によって作られた日影から飛び出す。
先ほど少年を殴った時と同じ方法だ。
少女はすぐさま反応して、振り向きざまに剣を振るい両断した。――影で作られた僕を。
「分身っ!?」
少女が動揺した瞬間に彼女の足元の影から飛び出し、少女の剣の間合いの内側に入ってから彼女を地面に組み伏せる。
そして影から実体化させたツタのようなもので少女を拘束して離れる。
「……僕の勝ちだ。殺しはしない。でも、キャロルに謝ってから人を殺した罪を償ってもらう」
「……甘いね。私を殺すチャンスだったのに拘束で済ませるなんて」
僕が少女にそう告げると、少女は冷めた目をこちらに向けながら投げやりな口調で言い放った。
「そうかもしれない。僕だってキャロルを傷つけたお前のことは許せない。でも、人殺しはしたくないから」
「あっそ。フレッド、お願い」
少女がそう言うと目の前から少女の姿が消えた。
「――っ! 【空間跳躍】!?」
すぐに少女が消えた理由が【空間跳躍】によるものだと看破した僕が周りを見渡すと、いつの間にか復活していた少年と少女が気を失って倒れているアベル様のすぐ傍に居た。
そして少女がアベル様に振り下ろしている剣が寸でのところで静止している。
ソフィーが力んだ表情をしていて、少女の剣を【念動力】で止めていることが分かった。
僕はすぐさま影に潜り少年から伸びる影から飛び出す。
「それ、三回目」
「ぐあっ!」
僕が影から飛び出すと少年の声が聞こえ、僕は衝撃波を受けて吹っ飛ばされた。
バフのお掛けで致命傷にはならずにすぐさま受け身をとって二人を視界に入れる。
「はぁ……はぁ……」
影の中を移動するたびに体力がごっそりと持っていかれる感覚だ。
ソフィーが異能を使ってすぐにバテてしまうのと同じか?
「お前みたいな甘ちゃんを見ていると反吐が出てくる。さぞ平和な世界で過ごしてきたんだろうね」
少年が怒りを孕んだ声で呟いてから魔術を発動しようとしたところで、
「――フレッド、帰るわよ」
少女が突如口を開いた。
「…………いきなり過ぎない? それに、《博士》から指示された仕事終わってないし」
「その《博士》がとっとと帰ってこいって言ってきたのよ。どうやら向こうが色々面白いことになってるようで、領主の息子はもうどうでもいいみたい」
「えぇ……、なにそれ……」
少女の言葉に少年が脱力したような態度を見せる。
「《博士》に振り回されるのはいつものことでしょ。とっとと術式を組みなさい。あの人が機嫌を損ねる前に戻らないといけないんだから」
「は~い……」
「おいっ、待て! キャロルに謝れって言ってんだろ!」
二人がどこかに去ろうとしていることは、会話でなんとなく察せた。
僕のバフももうじき切れるし、頭痛や体力を考えると正直なところ助かった部分も大きい。
でもキャロルを傷つけるだけ傷つけてそのまま退散なんてさせてたまるか!
「…………」
僕の言葉を聞いた少女が冷めた目で僕をしばらく見つめてから、その視線をキャロルに移動させた。
「……キャロライン」
「……っ……」
「第三研究所。そこが今の私たちの活動拠点よ。この情報をどう使おうがアンタの自由。でも、敵に回ると言うなら容赦はしないから」
少女がそう言うと、少年が発動した【空間跳躍】によって二人の姿が再び消える。
警戒を解かずに周囲を見渡すが、二人の気配は全くない。
念のためソフィーにも周囲を確認してもらったが、同じく二人の気配は感じ取れなかったらしい。
◇
それから僕たちはデバフが切れることとアベル様が目を覚ますのを待った。
「迷惑を掛けてしまってすまなかった」
目を覚ましたアベル様に事のあらましを説明すると、アベル様から謝罪された。
「滅相もありません。こちらこそ、最初の爆発から護っていただけなければ死んでいたかもしれません。助けていただきありがとうございます」
「きみたちはオルン君の大切な弟子だからね。彼に過酷な役目を押し付けた挙句弟子たちを死なせてしまったら、オルン君は勿論僕自身も自分のことを呪っていただろうから。きみたちを護ったのは僕自身の保身のためだよ」
そう言いながらアベル様は自虐気味な笑みを浮かべている。
「過酷な役目、ですか? 師匠は今何をしているのでしょうか?」
「……本当は話すべきではないんだろうけど、こんなことになってしまった以上話すしかないよね。でもその前に屋敷に帰ろう。屋敷も危険ではあるけど、あそこなら防衛用の魔導具もあるからここよりはマシだと思うしね。悪いけど詳しい話は屋敷に戻ってからでいいかな?」
「わかりました。あいつらがまたやってこないとも限りませんしね。ソフィー、悪いけど周囲の警戒を頼んでもいいか?」
「うん、勿論! ログは、大丈夫……?」
「あはは……。正直頭は痛いし体は酷使したためか少し痙攣しているし、とても良い状態とは言えないかな。でも、大丈夫」
「そっか。ログ、私たちを助けてくれてありがとう!」
その一言で救われた気がした。
ここ最近は二人に劣等感を持っていて、僕が二人と並び立っていて良いのかと思ったことも何度もあった。
僕は弱い。覚悟も、足りなかった。
だけど、少しは自分を認めてもいいかもしれないと思う。
まだまだ課題はたくさんあるけど、ひとまずは仲間を失わないで済んだことを喜ぼう。
諸々の後片付けを終わらせてから、僕とソフィー、アベル様が屋敷に戻るために歩を進めようとしていたが、キャロルは捨てられた子犬のような表情のままへたり込んでいた。
「キャロル、何してるんだ? 一緒に帰るぞ」
「…………ぇ……」
僕がキャロルに声を掛けると心底驚いたような顔したキャロルから間抜けな声が漏れた。
キャロルとどう接するのが彼女にとって良いのか、正解なのか、それはわからない。
だけど【重ね掛け】の術式構築中に必死になっていた時に出た言葉、あれが僕の本心なんだ。
キャロルは〝何にも代えがたい大切な仲間〟である、と。
「『え』じゃないって。屋敷に戻るって言っただろ?」
「で、でも、あたしは、二人から離れようと……」
「あー……、そんなことあったっけ?」
「……え?」
僕がとぼけると、キャロルが理解できないと言いた気な顔をしている。まぁ当然か。
「僕、魔術の使い過ぎで今すごく頭が痛いんだ。だからさっきキャロルがどんな行動取ろうとしていたかあんまり覚えていないんだよね。確か僕とソフィーを助けようとしてくれてたんだよな? ソフィー?」
僕がソフィーに話を振ると、彼女は僕の考えを理解したようで満面の笑みを浮かべながら口を開く。
「うん。私もデバフ受けちゃって頭がボーっとしていたせいか詳しく思い出せないけど、キャロルが必死に私たちを護ろうとしてくれていたのは覚えてるよ!」
「そうだよな。だからキャロルが僕たちと一緒にいても何の問題もない。キャロルは僕たちの大切な仲間で、《黄昏の月虹》の一員なんだ。――だから、一緒に帰ろう」
僕がそうキャロルに声を掛けると、キャロルから一筋の涙が流れた。
「…………うん……!」
そしてキャロルから、小さく、でも力強い返事が返ってきた。
◇ ◇ ◇
『ま、及第点と言ったところかな』
ローガン・ヘイワードの戦いの一部始終を見終えたウチは感想を漏らした。
『何か言いましたか、ティターニア』
迷宮の入り口から次々と湧いてくる魔獣を魔術で迎撃しているルゥ子が問いかけてくる。
『いや、何でもない。氾濫はもうすぐ終わりそうだよ。それが片付いたらエディントン家の屋敷に向かって』
『……なぜ屋敷なんですか?』
『ルゥ子とパーティを組んでいる子たちが賊に襲われたみたいで、護衛と馬車を失ったんだよ。それで今屋敷に帰ってるところなの』
『ど、どういうことですか!?』
『そのまんまの意味よ。ま、パーティを組んでいる子たちと領主の息子は無事みたいだから。でも精神的な疲労は溜まっていそうだし、とっとと終わらせて合流したほうがいいかもね』
『そんなの当り前です! ティターニア、力を貸してください! 精霊魔術で一掃します! こんなところでこれ以上無駄な時間を使っている場合ではありません』
『仕方ないね。それじゃあとっとと終わらせましょうか』
それから文字通り魔獣共を一掃したルゥ子はすぐさま屋敷へと走った。
そんなルゥ子に付いて行きながらウチは別の場所を視ていた。
そこではオルン・ドゥーラが南の大迷宮九十二層のフロアボスである黒竜を筆頭に、数十体の竜種と対峙していた。
『わかっていたけど、やっぱり動き出すのが遅かった……。もうこの流れは止められない、か』
最後までお読みいただきありがとうございます。
これにてローガン視点は終了です。
次話からは再びオルン視点に戻り、第四章も最終盤へと突入します。