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1話

新しいお話を開始しました。

投稿頻度はまじで少なめです。

 よく街に行くと、白馬に乗った王子様が迎えに来てくれないかなーとか、

お姫様に生まれたかったーとか、いろんな話を聞くけど、実際王子も姫もそんなに良いものじゃない。

確かに、贅沢はできるし、王位が低ければそれこそ一生遊んで暮らせるってことも

出来るかもしれない。でもさ、一生見世物みたいな扱いを受けて生きるのって、窮屈じゃない?


 まあ、俺には関係ないけどね。これらは全部昔にとある王子が言っていた事。

その王子は暗殺されたけど、良い奴だった。

で、俺は誰かと言うと今は護衛。オルアン王国の第3王女のレイラーナの護衛をしてるんだけど、このお姫様がまあわがまま。しかも俺だけに。お姫様が小さい頃から護衛してるからって言うのもあるけど、このお姫様は甘えん坊だからなぁ。だから偶に城下町に来てはカフェで息抜きしてないと…ってこれは言い訳みたいなものなんだけど。


「どうかしましたか、リクさん」


「うん?いやー、なんでもないよ〜。今日もスミレは可愛いねぇ。」


「そ、そんなっ可愛いだなんて、えへへ…」


 いやー、この可愛さ…純情さ、お姫様にも分けて欲しい。姫様も姫様で苦労してるけど。

公の場では派手派手コーデだけど、実は野に咲く花が好きとか、いろいろあるんだよね。

お姫様は今15歳なんだけど、来年度からシャルトル学院に通うんだよね、確か。友達できるのかなぁ、心配。


「むぅぅ、リクさん、どなたか他の人のこと考えてませんでした?」


「ありゃ、バレちゃった?仕事の上司みたいな人のこと考えてたよ。まあスミレと違って可愛げがないと言うかなんと言うか。慣れたけどね。」


「そうなんですね…。リクさんはそういえばなんのお仕事をなさってるんですか?」


 色々なんだよなぁ。護衛もするし暗殺もするし、頼まれればスパイ活動だってするし。

1回家庭教師もやったことあるな。今は護衛だけど、聞かれてもめんどくさいし…。


「んー、事務仕事かな。書類整理とか。」


 嘘はついていない。だってたまに文官に頼まれて書類の山を片付けたりするし。


「なんだか似合いません…。」


「大丈夫、俺もそう思ってる。…っと、そろそろ行かないとわがままな上司が怒っちゃう。じゃあね、スミレ。今日も癒しと元気をありがとう。」


「はい、いってらっしゃい!」


 やっぱり女の子はいいね、目が安らぐ。くそー、今から仕事とかしたくねぇ。

できれば可愛い女の子に囲まれながら…いや、それもそれで嫌だ。女の子っていうのは怖いからな。特に仕返しとか悪質すぎて引くわ。いつだか忘れたけど遊んでやった女の子が俺の仕事を嗅ぎつけてきて姫を殺そうとした時は本気で殺したよね。その頃の姫は幼女なのに。

覚えていないみたいだからあえて刺激しないように言ってないけど、姫には血とかまだ早いからね。


 あの箱入り娘は果たして魔術が使えるようになるのだろうか。

無理でも魔法にシフトチェンジしたらいいか。

魔法っていうのは自分の魔力のみを使って生み出す色々な力のことで、魔術は自分の魔力と何かしら自分の体の一部を代償にして使う色々な力のこと。


魔法は使いこなせれば機動性がいいから相手をさっさと倒せるし、罠にも持ってこい。

ただデメリットはやたら詠唱が長いものもあること。

実力さえあれば詠唱を省略したり破棄したりすることができるけど、あんまり破棄まで至る人はいない。


 魔術は魔力に加えて自分の体の一部を使うから機動性は悪くても性能はいい。俺たちはいつでも使える血を触媒にすることが多い。量が多ければ多いほど威力は上がる。

デメリットは、演算処理が死ぬほど大変。ある程度の魔術までは簡単に処理ができるけど、それを超えると頭がオーバーフローする。最悪死に至ることもある。


 だからどっちもどっちって感じかなー。

俺は状況によって使いこなしてる。でもやっぱり苦手だから肉体戦でやったりする。

そっちの方が楽だしね。


「よっ、リク!今から当番?」


「よう、カシュー。子守だよ。あぁー、めんどくせぇー!」


 カシューは俺の友達で同僚。特筆すべき点は他にはないかな。見た目は濃緑の短髪に若草色の瞳。背は175センチあるらしい。


「はっはっはー、遊びたい盛りの俺たち19歳には仕事はきついよなぁ!」


「本当だよ。お前は今から何があんの?」


「んー、訓練生の稽古。いやー、ひ弱なやつばっかでさ、しかももう1人の指導役が氷の貴公子なんだよ。くっそ、楽しくねえなー。」


 言ったほうがいいかな、その氷の貴公子が後ろにいるぞって。

しかも右手に錬成した氷の剣が握られている。


「あー、カシュー。頑張れよ、あとゼルスも。」


「ああ、感謝する。リク殿。」


「ぜ、ゼルス…お前いたのかよ…。じゃ、じゃあ、行くか!」


 あ、逃げた。逃げ切れるといいな…無理だと思うけど。ゼルスは10キロ先の標的も逃がさない氷魔法を使うから。

あー、捕まった。悲鳴が聞こえる。悪口は周りに本人がいないかちゃんと確認してから言おうな。言わないのが一番だけど。


「リク!!そんなところで何をしているのです!レイラ様がお待ちです!」


「あーはいはい。ご苦労様―」


 くーっそ、こいつまじで苦手だ。キーリエって言って、姫様第一なんだよなー。何かあったら姫様姫様、俺を見つけては何してるんだ!って、俺が何しようと関係ないじゃーん。

俺にはガミガミいうくせして姫様の前ではいい子ちゃんしてるからなぁ、策士なのかもしれない。


「リク!だらだら歩くな!さっさと走れ!」


「わかったわかった、起こりジワついちゃうよ〜」


「ははは、お前らまたそれか、仲良いなぁー」


「いやいや、それほどでも〜」


「仲良く無い!」


 キーリエの声が大きすぎて城のみんなに「なかいいねぇ」なんて温かい目で見られる始末。

人生で一番困惑したわ、その時。慣れたけど。慣れって怖いね、いつのまにか浸透してるもん。


「姫様、入りますよー」


「どうぞ、入りなさい。」


 ありゃ、怒ってる。もしかしてさっきキーリエと話してたの、聞こえたかな。

だったらあれはキーリエのせいなんだから俺に怒らないで欲しい。


「あー、姫様?」


「なんですか?怒ってませんよ。別にあなたが私を置いてキーリエと仲良くしていようが私には関係ありません。」


「いやぁ、怒ってんじゃないですかー。姫様、こっち向いて。」


 こういう機嫌直しは姫様がもっと小さい頃からしてきたからもうどうしたらいいかなんて息をするのと同じくらいわかる。


「なんです。わっ!」


「はい、姫様“フラワー”のワッフル食べたいって言ってたでしょ?今日買ってきたよ。」


 姫様は甘いものに弱いから、何かしら甘いものを常備してれば許してくれるんだよね。

今日は少し前にさっきまでいたカフェ“フラワー”のワッフルを食べてみたいって言ってたからそれを買って来てた。これはまじでうまい。俺なんか初めて食べた時、「!?」状態になったもんね。さぁ、機嫌を直せー


「そ、そんなんじゃ私は機嫌を直しませんよ!私は子供じゃないんですから、もう甘いものには釣られません!」


「ありゃ、じゃあ俺が食べますね。やった、これうまいんだよね!」


 くくく、悩んでる悩んでる。姫様が甘いものに勝てる日なんてまだ来ないんですよ、諦めなさい。


「わぁぁぁ!リク、意地悪!私が食べたいのにー!」


「あたた、せめてパーにして!グーはお腹に入る、パーで!…はぁ。はい、あげますよ。そもそも俺はこれを姫様に食べて欲しくて買ってきたんですから、姫様が食べないとこのワッフルが泣きます。」


「やったぁ!いただきます!…んうぁぁ!」


 あーあ、はしたない。これを王妃様に見られてたらご指導が1時間は入るかな。

王妃様はマナーに厳しいからなぁ。


「どうです、美味しいでしょう」


「うん!…リク、私2人の時は名前で呼んでって言ったじゃん。なんで破ってるの!」


「そんなこともあったなぁ。じゃ、レイラ。」


 あんまりこっちに依存させたらいらない感情を姫様が抱きそうでちょっと嫌なんだよなぁ。だからある程度歳がいってきたら護衛を当番制にしてもらったし、王妃様に頼んでマナー講習も時間を増やしてもらった。

9世代ほど前の姫様の護衛をしてた時、1人でほとんど一年中してたらその子俺以外とは結婚しないとか言ってすっげぇ困ったんだよねぇ。

でも姫様にめっちゃ懐かれちゃった。何故?


「レイラー、今から何すんの?」


「自分から言っておいてなんだけどあなたいきなり砕けるからびっくりする…。今日は一緒に勉強してもらいます!」


「うげ、まじすか」


 勉強は嫌いなんだよね…。無知ってわけじゃないけど、書物を読むのが嫌だ。

俺は歴史そのものを見てきてるから、著者が脚色を加えたりしているとかなりイライラする。ただ、証拠がないもんだから文官に言っても侮辱罪だとか言われるんだけどね。(実際言われたし)


「もしかして、リクは護衛でありながら勉強もできないの?まさか、そんなことないよね?」


 クッソこの姫腹立つなぁ!そういうのは自分が勉強できてから言えよ!

まあ、成長段階だし仕方がないか。


「そんなことないですよ、でも教科書と違っても文句は言わないでくださいよ。俺教科書読むの久しぶりだからもしかしたら改訂されてるってことがあるかもしれないし。」


「わかったけど…リクって今何歳なの?私、カシューと仲がいいから19歳だと思ってたんだけど。」


「ん?んー、19歳ですよ。ちゃんっと19歳です。なんなら身分証見ます?多分持ってると思うけど。」


 実際俺は19歳じゃないんだけど、身分証は国王が代替わりする時に年齢が同じままで発行し直してもらってる。

俺がこの国にいて、こうやって護衛をしてるのは国を守るため。オルアンという国ができた時に初代オルアン国王と約束したんだ、国が身分を保障し、俺が国を守るって。

そいつは俺が不死身ってことを聞いて気絶し無かったんだけど、後の国王は何代になっても気絶するんだよね。なんか…度胸がないんじゃないかな。大丈夫か?


「ううん、いいよそこまでしなくて。あれ…?でもそれじゃあ私が3歳の時にはいなかったはずよね?確か私が3歳の時にリクが護衛をしていた気がするんだけど…。」


 は?なんで覚えてんのこのお姫様。

なんでそんなしょーもないこと覚えてんのに勉強とかマナーとか覚えらんないんだ!?


「それはきっと夢ですね。」


「夢?」


「はい、夢。さ、勉強しましょう。入学までに基礎は抑えときたいんでしょ?」


「あ、うん。じゃあ数学から…」


 ふう。姫様は集中すると周りの声が聞こえなくなるからこれで数時間は話をしなくて済む。しかし…姫様よく覚えてたな。これは少し距離をとったほうがいいかな。

キーリエと当番少し変わってやろう!そしたらあいつは喜ぶし!

よし、今度交渉しに行こう。


「失礼します…。あら、リク様。レイラ様はお勉強なさっていましたか。」


「ああ、うん。どうしたの?」


 ノックして入ってきたのはメイドのエルト。キーリエと仲がいいんだけど、なんであんなのと仲良くできるのか信じられない。しかもキーリエはエルトの言うことすんなり聞くし。

エルトの良いところは、姫様付きのメイドだけどどっかの護衛さんと違って俺を毛嫌いしていないところだ。


「今日のおやつは何にするか仰っていなかったのでお聞きしたかったのですが。後にいたしましょうか。」


「ああ、おやつなら俺がさっきあげたワッフルがまだあるからワッフルにあうお茶をお願いして良いかな。」


 実はまだ1個買ってあるから、勉強のご褒美にでもあげようかなと思っていたところだ。

ナイスエルト!


「承知いたしました。…ああ、それからリク様。キーリエがすみません。また突っ掛かったみたいで。いつも注意しているんですけどね…。」


「んぁ?気にしてないからいいよ。いつものことだしね〜。」


「はあ。キーリエは普通の護衛ですから、きっとリク様が当番制を利用して遊びに出かけていると思ってるんです。そういえば国王がお呼びでした。レイラ様の護衛の当番が終わられたら顔を見せろ、と。」


「げぇ、わかった。ありがと」


 失礼しました、とエルトが出ていく。

国王に呼び出されたのは忘れることにしよう。うん、俺は何も言われてない。


 キーリエのことを話しておこうか。

キーリエは、一般枠の護衛だ。護衛には2種類あって、1つはキーリエみたいに募集をかけた護衛試験に受かって護衛になった人。もう1つは特別な機関や野良だったスパイ、暗殺者を集めた護衛。こっちは護衛も仕事だけど諜報員からの報告で挙げられた、王族の暗殺を狙っている輩などを逆に暗殺する仕事もしてる。たまーに暗殺を依頼されてその対象が王族だったってこともある。ああ、もちろんさっきのエルトみたいにメイドをしながらっていうのもいる。

キーリエはもともと暗殺を家業にしている家に生まれたエルトが国にスカウトされてそれについて行くために護衛試験を受けたらしい。いやあ、度胸あるね。

俺はキーリエのこと嫌いなわけじゃないよ。苦手なだけ。長いこと生きてて色々な人と関わってきたけど、忠誠を誓いすぎてるタイプってだいたい周りが見えてないことが多いし、すぐに潰れちゃうんだよね。そういう人を何人も見てきたから、キーリエみたいなノリで絡まれたらだいたい「あぁ、またか。」ってなる。

俺は何も忠誠を誓うことが悪いって言ってるわけじゃないよ。ただ、いきすぎると自分を滅ぼすよって。確かに忠誠心で生きてる人もいる。けどさ、もしも守れなかった時キツくない?「俺があの時こうしていれば…」って、何年も落ち込むんだよ。

じゃあ初めから忠誠はあまり誓わないほうがいいじゃないって結論になっちゃうよね。

まあ、あくまで俺の見解だし、他の人に強要する訳でもないんだけどね。



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