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1-25 大いなる女神フィーナの鎧


心の中で高笑いをしながらフィーナのリアクションの想像をしていたら、いつの間にか夕食が終わっていた。

食事を片付けて、先日取り付けた風呂釜に湯を張って、それぞれに風呂も堪能した。


普段だとこのまま寝るだけなのだが、俺にはこのあと一仕事が残っていた。

そう、フィーナのための革の鎧を作成するのだ。


「よし、ようやくだな!」


昼間苦労して集めたギュードトンの革の束を作業台に置いて、クラフトモードに入る。

そして革の鎧の作成画面を立ち上げると、装備作成時に2種類の方法が選択できると提示される。

大まかに言うと下記の通りだ。


①普通に作成して誰でも装備可能な防具

②専用装備になってそのキャラ以外は装備できなくなるが、若干の数値ボーナスをもらえる防具


俺は迷わず②の防具作成を選択する。

元々フィーナ以外に持たすことを考えていないから当然だ。

すると次に【装着者にカーソルを合わせて採寸してください!】というテロップが出てきた。

あぁなるほど。

専用装備を作るんだものな。

確かにキャラ識別しないといけないよね。


フィーナの方を見ると、今はベットの上で髪を解かして寝支度をしているところだった。

俺はこっそりフィーナにカーソルを合わせ実行ボタンを押す。


【採寸のため装着者の衣服を脱がせてください!】


「え!?」

「・・・・?ゲンキさん、どうかしましたかー?」

「え、え、いや!何でもないよ。ごめんごめん!」


思わず漏れてしまった驚きの声にフィーナが反応する。


「そうですかー?」


そういうとフィーナは髪の毛を櫛でまた解かし始める。

俺は改めて装備作成カーソルをフィーナに合わせて実行ボタンを押す。


【採寸のため装着者の衣服を脱がせてください!】


意味もなく連打してみた。


【採寸のため装着者の衣服を脱がせてください!】

【装着者の衣服を脱がせてください!】

【衣服を脱がせてください!】

【脱がせてください!】


【 脱 が せ ! 】


当然、テロップ内の指示は変わらないはずなのだけど、俺の視界に入る文字がどんどん重要な単語にピックアップされている錯覚に陥る。


うーん・・・。

え、そういう感じ?

本当にここまでする必要あります?

どのキャラかを指定しないと専用装備にならないから選択するのはわかるけど、なんで衣服脱がして採寸することをロールプレイングしないといけないねん。

このシステム考えたやつの常識疑うぜ・・・!


しかしどうするべきだろう。

もう、専用装備ではなく通常装備にするべきだろうか。

何しろフィーナに服を脱げと要求することを考えると、多少数値が違うくらいなら妥協すべきではないかと感じる。


・・・だが、もし・・・もしも!


たった1のダメージの差でフィーナが死んでしまうようなことがあったら、俺は後悔をすることになるだろう。

あと1ダメージを、ミリ耐えてくれればなんとかなっていた!なんてこと、これまでのゲーム経験の中で何百回、何千回とあったことだ・・・!

妥協個体にした結果、深い後悔を招くことは何度もあったじゃないか!?


であれば、俺は潰せる危険性は全て潰しておかないといけないのだ。

もしものことがあった時に俺は、フィーナに裸になってくれと迫らなかったことを一生悔い続けることになるかもしれない。


そんなのは・・・いやだ!


確かに俺のためを考えているかもしれない。

だが!

それ以上に!


何よりも、フィーナのために!


そうだ!

全てはフィーナのために!

俺のちっぽけな世間体なんかで踏み出すことを躊躇うな!

捨てろ!

羞恥心を捨てろ!

常識と良識もかなぐり捨てろ!

俺はなんとしても作らねばならない!

フィーナに服を脱いでもらって専用装備をお作りせねばならない!

フィーナのために!

フィーナのために!!

フィーナのために!!!


俺の脳内で、フィーナの神兵たち(全部俺)が「フィーナ様!フィーナ様!」と大合唱でフィーナを讃えていた。

そうだ・・・。

そうなんだ・・・。

俺は鎧を作らなければならないんだ。


フィーナの、ために!



敬虔な神兵である俺は、崇め奉る大神フィーナ様の御元へ歩んでいく。

大神フィーナ様は櫛で丹念に御髪を解いて、タオルに水気を吸わせる作業にご執心であった。


「フィーナ(様)」

「ひゃっ!」


驚くフィーナ様もお美しい…!

足音をたてず静かに近寄ったため、俺の気配に全く気付けないでいたらしい。


「…びっくりました。どうしたんですかゲンキさん?」

「驚かしてしまった?(ようでしたら、大変申し訳ありません)」


俺は大神フィーナ様への敬意の言葉を心の中で末尾に付け足しながら、会話を続ける。


「実は、お願いしたいことがあって(御前に参上致しました)…」

「お願いしたいこと…ですか?」

「はい(どうかお聴き入れ頂けませんでしょうか女神様)」

「んー、なんでしょう?」


大神フィーナ様から直々に奏上の機会を賜ることが出来た。

恐悦!


「じゃ、じゃあ…実は…」


俺は誤解をされないように言葉選びをなるべくシンプルにして、

フィーナを動揺させないように親しみやすい笑顔で瞳を見つめて、

出来る限り努めてゆっくり穏やかな声色で…!


「服を、脱いで欲しい」


俺は要望を告げた。


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