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1-24 ギュードトンの生肉


仲直りをした後、俺はフィーナとテーブルを囲んで食事を摂る。

本日のディナーはそう!

いつものホワマリン。

幻の魚で伝説の美味とか言われる魚ホワマリン。

フィーナは三食これしか食べないで生きているが、果たしてそれで満足のだろうか。


「・・・?ホワマリン、今日も美味しいですねっ」

「ああ、そうだねー」


フィーナの食事の様子を観察していたら、さっきまでの泣き顔が嘘みたいな満面の笑みを返してくれたので、きっと満足しているのでしょう。

この世界に来てから「魚を焼いた料理」しか食べていないと思う。

あとは木の伐採をしている時に手に入ったよくわからない果実を何個か食べただけだ。


俺に味覚はないから別になんでも良いのだけど、フィーナも文句なく毎回食べてているあたりこの子の味覚がおかしいのか、それともホワマリンという魚の旨味が凄いのか。

ここまでくるとデジタル世界の食事を味わえない己の身が口惜しい。


話が少し脱線してしまった。


そう、俺もフィーナも、出会ってから魚くらいしかまともに食べていないのだ。

だが今日の俺は一味違う。


俺はアイテムボックスを開いて、今日の収穫物にカーソルをスライドさせる。


【ギュードトンの生肉】


これよ。

これ。

捕獲難度はホワマリンの比ではないくらい難しいため個数は5つしかないけれど、それでも何食分かには十分な量だろう。


年頃のお子さんがお魚好きですか?

好きな子もいるかもしれないね。

でももっと好きなものがあるよね?

それは何?

うんうん。

そう、正解、お肉です。

やっぱお肉なのよ。


そしてフィーナはここしばらくお肉の魅力に触れられていない。

お肉の魅力を知っているなら、本当は毎晩体が求めてしょうがないはずなのに。

可哀想なフィーナ。

そんな焦らされて火照った体に俺がお肉を差し出したらどうなっちゃうのかな?

ククク。

クククク。

ククククク!

まぁ、俺の目の前で呑気に魚を食べてるこのお嬢ちゃんの、足腰を立たなくしてやることぐらいは造作もないでしょうなぁぁぁ!?


「・・・なんですか?」


俺の気配を感じ取ったのか、食事の手を止めてどこか訝しむ目で俺を見てくるフィーナ。


「ん?んーん、なんでもないよっ」

「・・・なんか今のゲンキさん、ちょっと変態ぽかったです・・・!」

「ちょ、やーめーてーよー。そんなことないでしょー!俺もホワマリン食べてるだけなんだからさぁ?」


いけない、獲物に殺気を感じ取られては好気を逃す。

俺は満面の笑みで答えたが、フィーナの疑惑は薄っすらと残っている様子だった。


まあいいさ。

今晩はその時ではない。

既に魚を食してしまっていては最大のインパクトを与えることができない。


いいかいフィーナ?

君が空腹に喘ぐ満月の夜に必ずこの肉を見せつけて、美味しく食べさせてあげるからね。


クッ!

ククク!

ククククク!


来るべき日の惨劇を思い描いて滲んだ笑みを、フィーナに悟られぬよう手で隠す。

これはまだ俺の心に密かにしまい、来るべき日に備えるとしよう。

今夜は美味しい魚を頬張って幸せに眠ると良いさ。


クククククク!!

ハーッハッハッハッハ!!


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