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03.可愛いメイド

 廊下に出た私は、これからどうしようかとため息を吐いた。

 ここまで来るときはメイドに案内してもらったが、どこを通ったのか覚えておらず部屋への帰り方が分からなかったのだ。


「姫様、何をなさってるんですか?」

 声がした後、ぽんっと背後から肩を叩かれた。


 振り返ると、一人の女の子が立っていた。真っ先に目がいくのは、緩いウェーブがかかったピンク色のツインテール。メイド服もフリルとリボンが足されていてまるでロリータ服のようだった。そしてこちらを見つめる大きな瞳、綺麗な紅色で顔立ちも整っている。


 可愛い!

 思わず顔が綻び、まじまじと見つめてしまった。

 高校生くらいかな。キャラクターのコスプレとか似合うだろうな。


「姫様? どうなさったんですか?」

 首をかしげながら、数回瞬きをする。その動作も愛らしく、小動物を眺めているような気分にさせられた。

「何でもないわ。少しぼうっとしてただけ」

「と、いうことは、今お時間があるということでしょうか!?」

 先ほどよりも明るい声音で言い、私の両手を握った。

 私を見つめる目が光り輝いている。

「そうだけど…」

「ちょうどよかった。最近とてもお忙しそうでしたから、着ていただいていないお洋服がたーっくさん溜まっているんです」

 そう言って、私の手を握り歩き出した。


 廊下を進み、階段を五階分上がった。それから少し廊下を歩いたところで、彼女が足を止める。

 真っ白な両開きの扉。ノブには花の装飾がしてあった。


 メイドがドアがを開け、私を促す。

 部屋に入り中の様子を確認すると、おそらく始めに目覚めた部屋らしいことが分かった。

 よかった、戻ってこれた。


「では、姫様。少々お待ちくださいませ」

 慌ただしい様子で部屋を出るが、扉は音が出ないようにそっと閉めていた。若く見えるがメイドとしての教育がされているのだろう。


 起きたときは目ぼけていたから、しっかり見ていなかったんだよね。

 改めて部屋の中を見回す。

 部屋の中央に天蓋付きのベッドがあり、ドレッサー、ソファー、デスク、丸テーブル、椅子、すべて白い猫足の形で統一されていた。奥の壁は一面が本棚になっている。

 立派な部屋だな。本当にお姫様の部屋って感じだ。


 静かなノック、丁寧にドアを開けた後でメイドが飛び込んできた。

「お待たせいたしました」

 二、三十着は入りそうな大きさののキャスターが付きのドレッサーを押している。


 「ささっ、こちらへ」

 部屋にある鏡の前に誘導される。

 目覚めてから鏡に映る自分の姿を見るのは始めてだ。


 あれ、私のまま?


 写る姿を見て、首を傾げる。

 てっきり、まったく違う外見になっていると思っていたのだが、鏡に映る顔は見慣れたものだった。

 ううん、元の外見より少し若いかも。それに角が生えてる。見た目がよく似た人の体に入ったのかな。それにしては、あまりにも似すぎてるけど。


 服装は黒いドレス姿だった。前側の裾が短く、後ろにいくにつれて長くなるデザインで、ウエストはきつくも緩くもなく、フィットしている。シンプルながらも黒いレースがあしらわれており、品があるように見えた。


「まずは何をご試着されますか?」

 メイドは二着の服を手に持っている。

 白い服と、ピンク。どちらも彼女の服同様にフリルとレースがたくさんあしらわれ、いかにもロリータのようなデザインだ。

 町中で着るとしたら恥ずかしいけど、結構可愛いかも。

 年齢的にもう一生着ることはないと思っていたけど、学生の頃は着てみたかったんだよね。


 メイドは手早く私の服を脱がせ、無駄のない動きで着せてくるれる。髪のセットやメイクまでやってくれた。

「とっても素敵です! お似合いになります!」

 着替えが終わった後、両手を合わせ、恍惚とした顔で言う。


 鏡に映った自分を見て、我ながら可愛いかもしれない、と思ってしまった。

 髪型とメイクでだいぶ変わるんだな。

 メイク雑誌読んで勉強したこともあったけど、あまり変わらない気がして、途中からいつも同じメイクになっていたし、髪はお手本通りにセットできなくて、すぐに諦めた。可愛く見せる努力、足りなかったんだろうな。


「どうでしょう、姫様」

「良いと思うわ、ありがとう」

「本当ですか!? 姫様、最近はもっと大人っぽいデザインがいいとおっしゃっていたので、心配していたのですが、気に入っていただけてよかったです!」


 う……。

 セリアらしくない発言をしてしまったらしい。やはり、一度も会ったことのない人のフリをするのは難しい。

 とはいえ、メイドに疑っている様子はなく、むしろ笑顔で鼻歌を歌っているので、心配する必要はなさそうだ。


「次はどれにいたしましょう。少し肌寒くなってきましたから温かそうなデザインもいくつか作ってみたんですよ」

「あなたが作ったの?」

 正直な感想が、口をついて出てしまった。

 すぐに口を閉じたが、案の定、不思議そうな目で見つめられる。


 バレた?

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