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私は歩く

作者: ミーケん

歩き始めました。

 札幌には広大な地下施設が広がっているのを読者のみなはご存知だろうか。地下鉄が幾重にもなって交差し、札幌の要点各所へと広がっている。この街に住む上で最も利用する交通機関と言って間違いではない。さらには札幌と大通りを繋ぐ太く広い地下歩行空間。脇には様々な業種の店が立ち並び、区画ごとに「タウン」と呼ばれる商業施設。

 私はこの地下施設が好きであった。特に気に入っているのは最後に上げた「タウン」である。

 ここはコンビニから始まり、洋服、ファストフード、本格料理店など多くの店が並んでいる。そして、そこを休みなく人が歩き、買い物をし、二度と会わない人同士がすれ違っていくのだ。

 この空間はとても居心地がいい。私のような者でもただ歩くだけで紛れ込むことが出来るのだから。それに誰も私を見ない。ここを歩く人の大半がこの街に慣れて、さほど他人を気にしなくなった人々、もしくは通い慣れた人々だからだ。

 しかし、いま歩いていると夏休みが終わったのか8月中旬よりも高校生を多く見かける。しかも、彼らは一様に化粧をしたり、髪をいじったりと着飾っているようだ。その点、私は真っ黒なズボンに真っ黒な靴、そして、下半身とは反対に真っ白なパーカーを着て、その上に少し前に買った4000円のペラペラで大きめなサイズを買ったために半袖に見えないものを羽織っている。正直ファッションには疎いので自分が来ている服の名称すら出てこない。

 調べようとは思うのだが、如何せん面倒くさい。自分で言うのもなんだが私はめんどくさがり屋なのだ。出来ることなら生きていたくない迄ある。しかしそんな私でも死のうとするのは面倒だ。だから私は生きている。

 さて、話がそれてしまった。しかし、いま歩いているのは「タウン」ではなさそうだ。

 現在地は地下鉄の東西線と南北線へと繋がる階段付近。そうだな、○井今○の前と言えばわかるだろうか。つまりはそこにいる。誰もが聞いたことがあるであろうこの店だが、私は入ったことがないから中がどうなっているのか正直よく分かっていないのだ。なので、これを機会に入店してみることにしよう。

 入口のガラス製のドアは存外軽い素材で作られているようで力を覚悟していたほど入れずに開けることが出来た。

 そして、目の前に広がったのは適当に枠で仕切られた様々な食べ物屋?のようなものとそこでレジをいじったり、食べ物を紹介している人々だった。ふむ、と思った。ここはニュースで見たことのあるレポーターの騒いでいた所なのではないか?と。

 皆さん!ご覧下さいこちらのおかし!

 みたいな感じのやつだ。

 私は奥の方へ向かう。上に吊り下げられたプレートに奥を指してエレベーターと書かれていたからだ。そこへ行けば恐らくだがこの店の全容が地図かなにかで示されていると考えたのだ。そして、案の定そこには地図が大きく表示されていた。それによると私のいるこのフロアは地下2階であるようだ。扱う商品は酒やお菓子であるようだ。なるほど階ごとに商品を分けるとはなかなか便利な配置だ。

 私は関心とともに上の階へ向かった。

 地下1階は単純な食品を扱っているようだった。コロッケから始まり、サンドウィッチ、弁当など多種多様である。

 しかし、気づいたのだが、ここには私のような容姿をもつ人物が見当たらない。というか、私一人ではないか。道理でさっきから店員の視線が痛かったのだ。私は足早に地上1階へ向かった。

 1階は化粧品を扱っていた。2階、3階、4階、5階、6階、7階は婦人服を扱っていた。8階は子供服を扱っていた。9階は催事会場としていた。地上階で唯一少しだけ歩き回ったが、ここではなにやら日本風の服を着た人々がthe日本的な扇子などを売っていた。日本を全面に打ち出したイベントでもやっていたのだろう。私は知らん。調べたいとも思わない。

 ちなみにいまさら言うのもあれだが私は現在スマホ片手に文字をリアルタイムで打ちながらこの店を巡っている。

 現在地は地下一階の時の地図を思い出し、5階に降りた次第だ。この店は二棟に別れているらしく、別棟への連絡通路が4箇所あると地図には記されていた。その4箇所のうちのひとつがここ5階にあるのだ。

 私は連絡通路の脇に置かれたベンチに座る。しかし、この連絡通路だが、なかなか景色が良い。いや、もちろんここはビルが立ち並ぶ街の一角でしかないため世間一般的な景色がいいという訳ではないのだが、ここでは人々がビルの合間を歩く姿が真上から見下ろせるのだ。なんとも素晴らしいではないか。私は夜景のような「綺麗な景色」よりもこんなふうな「別角度から見たどこにでもある風景」が好きである。身近でありながらどこか遠く感じられる不思議。この風景にはそんななにかがあるのだ。

 さて、景色に思い耽るのもやめにしよう。

 私は立ち上がって先程までいた棟とは別の方へと足を進める。

 別棟は売り場が黒を基調としたものになっていた。どうやら先程いた棟とは別で男性用のものを多めに扱っているようだ。地図を見ると紳士服がやはり多く記されている。

 しかし、男性用の衣類を見ても特に面白げもないので、トンボ帰りして回れ右である。

 エスカレーターの案内にある数字を減らし元いた地下二階へ向かう。 

 さて、次はどこへ向かおうか。

歩き終えました。

まだ歩きます。

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