白狐姫
冬の最中のことでした。雪が鳥の羽根の様にひらひらと降っていた時に、一人のお姫様が生まれました。真っ白な肌、白くてふわふわした髪、切れ長で吊り上がった瞳を持つお姫様は、白狐姫と呼ばれました。色素を持たないお姫様を王様は可哀想に思い、また変な噂の立たぬように、お城の奥にある離れを姫に宛がい、あまり外に出ないように言いました。可哀想に、白狐姫のお友達は庭に遊びに来る小さな狐しか居りません。召使いも恐ろしがってあまり近づきたがりません。白狐姫はどんどんと掃除や炊事、庭の手入れが得意になっていきました。
白狐姫が美しく成長したころ、王様は新しいお后様を迎えられました。王妃様は真っ白な白狐姫を怖がり、お城から追い出してしまいました。
白狐姫が途方に暮れていると、目の前にあの狐が現れ、
「白狐、大丈夫か?」
と、声をかけてきました。
「大丈夫だ。森も奥に忘れ去られた洋館がある。きっと少し修繕すれば済めると思う」
狐の案内で森を進むとツタの絡まったこじんまりとした古い家がありました。大きくなくて隅々までお掃除のしやすそうです。
白狐姫と狐が扉を開けると、中には身なりのいい男の人がいました。
「何者だ!」
男の人は警戒し、剣を向けてきました。狐は白狐姫をかばうように前に出て言いました。
「俺は見ての通り狐だ。彼女は白狐姫。前までお城に住んでいたのだがな、訳あって住む場所を探していたんだ。驚かせてすまない。ここに先客がいるとは思わなかったんだ」
男の人は白狐姫たちが武器になりそうなものを持っていないとわかると、剣を収めました。
「そうか、いきなり剣を向けて悪かった。俺は隣の国の王子…だったのだが、色々あってな。今は城に居られないのでちょうど誰もいなかったここを借りていた。そちらの持ち物だったか?」
「いや、国内にあるからこちらの物だが王家は所有していなかったはずだが、…参ったな。ここ以外に人が住めそうな場所を知らないんだ」