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もらいもののバームクーヘン

作者: なかつかさ

声劇用の台本です。

男女比は、1:1となります。


一応、某アニメを意識したものに仕上げております。

遠慮なく使ってくだされば幸いです。

   京野きょうの……一見どこにでもいそうな男子。

   楢戸ならと……いかにも大人しそうな女子。



   とある高校の部室。放課後の時間。

   殺風景な部室に、京野と楢戸の姿がある。




京野 「楢戸。よかったらなんだが、バームクーヘンを食べる気はないか?」


楢戸 「バームクーヘン?」


京野 「いや、じつはさっき同じクラスのやつにもらってしまってな。俺は基本的に甘いものが苦手で食べないから、いらないとは言ったんだが……それなのに無理やり渡されたもんだから、少々困っててな」


楢戸 「(小声で)誰からもらったの? なんて私には聞けない……」


京野 「ん? 楢戸、今何か言ったか?」


楢戸 「ううん。何も」


京野 「そっか……まあ、てなわけで、こんな話をしたあとだと残飯処理みたいで忍びないというか、それでも楢戸が好きなら食べるかなと思って、一応聞いてはみたんだが、やっぱりいらないよな?」


楢戸 「……好き」


京野 「え?」


楢戸 「バームクーヘンは……好き」


京野 「おお、そっか。じゃあ、これ、よかったらもらってくれるか?」


楢戸 「うん……もらう」


京野 「悪いな、楢戸」



   京野、楢戸にバームクーヘンを手渡す。



京野 「……しかし、こういう言い方もどうかと思うが、なんだか意外な感じもするな」


楢戸 「何が?」


京野 「いや、楢戸が甘いものを好きっていうのが」


楢戸 「甘いものは、好きじゃない」


京野 「そうなのか?」


楢戸 「うん」


京野 「じゃあ、それもひょっとして、無理して……」


楢戸 「ううん、バームクーヘンは大丈夫。甘いものは京野くんと同じで基本苦手だけど、これは別。ちゃんと、好き」


京野 「そっか。それならいいんだが」


楢戸 「ありがとう」


京野 「え?」


楢戸 「バームクーヘン」


京野 「ああ、いえいえ、どういたしまして……ってまあ、俺が買ってきたものじゃないから、どういたしましてって返すのもおかしな話ではあるんだが。それくれたやつに、明日にでもちゃんと俺から礼を言っとくよ。同じ部員の子がおいしく食べてくれたってな」


楢戸 「だめ」


京野 「え?」


楢戸 「それは……やめたほうがいいと思う」


京野 「やめたほうがいいって、どうしてだ?」


楢戸 「きっと、京野くんにバームクーヘンをあげたその人は、京野くんが食べてくれたって思ってるだろうから……もらっておいてなんだけど、この件にかんしては、そこまで詳しく話さないほうがいい気がする」


京野 「ふーん、そういうものなのか」


楢戸 「うん。そういうもの、だと思う」


京野 「そっか。じゃあ、詳しい話抜きで、礼を言っておくか」


楢戸 「うん」


京野 「……しかし、今日は蒸すな。楢戸は暑くないのか?」


楢戸 「……どうして、意外だと思ったの?」


京野 「ん?」


楢戸 「私が甘いものを好きだと、変……かな?」


京野 「ああ……いや、そういうわけじゃなくてだな……うーん、こういう場合、なんて言ったらいいんだ……ほら、俺らって放課後この部室に来て、することといったら本を読んだりゲームをしたり、いかにも健全な部活動ってよりも、友だちんちで静かにまどろんでるみたいな……そういう時間の過ごし方が、お互い苦手じゃないというか、むしろ心地よさを感じているというか……」


楢戸 「うん」


京野 「俺らっていわば、そういった感覚を共有する仲ともいえるわけで、だからなんというか、けっこう俺らって似た者同士なんじゃないかって思うことがよくあって……それでひょっとしたら、楢戸も俺と同じで甘いものが苦手なのかなってなんとなく思ったというか……だからまあ、深い意味があって口にした言葉ではまったくなかったんだが……」


楢戸 「私のこと、そんなふうに思ってくれてたんだ」


京野 「ん? ああ、うん。まあな。迷惑だったかもしれないが」


楢戸 「ううん(小声になって)嬉しい」


京野 「え? 今、なんて言った?」


楢戸 「(動揺して)えっと……うれ……うれ……うれいに沈んだ三島由紀夫の横顔……って言った」


京野 「へえ……よくわからないが、三島由紀夫が好きなのか?」


楢戸 「別に……そうでもない」


京野 「ふーん。そっか」


楢戸 「そう」


京野 「……コーヒー飲むか? 喉乾いただろ」


楢戸 「……うん。飲む」



   冷凍庫から氷を数個、冷蔵庫から紙パックのコーヒーを取りだし、楢戸のマグカップに注ぐ京野。



京野 「たしか砂糖もミルクもいらないんだったな、楢戸は」


楢戸 「いらない」


京野 「どうぞ」



   京野、氷とコーヒーの入ったマグカップを楢戸に手渡す。



楢戸 「いつも、ありがとう」


京野 「いえいえ、どういたしまして」


楢戸 「…………」


京野 「もう、すっかり夏だな」


楢戸 「うん。そうだね」


京野 「エアコンの修理って部費でまかなえないものなのか?」


楢戸 「うん。多分、足りないと思う。いろいろと本も買っちゃったし」


京野 「そっか」


楢戸 「そう」

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