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プロローグ・魔王戦争終結

 五年の月日が流れた魔王戦争もついに決着の時が迫っていた。

 身体能力に優れる魔族の攻勢に人間、エルフ、獣人の国々は国土を犯され、その生存圏を魔族に奪われようとしていた。

 だが星神教会や人間国が行った勇者召喚の儀によって四年目にして戦局は回天。周辺国は勇者の提言により同盟を結び、反転攻勢に出る事ができた。その攻勢もいよいよ最終局面。魔族達の牙城である魔王城攻略が開始された。

 唸りを上げる投石器や魔法使いの支援を受けた部隊は勇者パーティを先頭に最後の攻勢に出る。

 その結果、魔王城の床には血の河が出来上がり、廊下には死体が積み重なって山となった。

 王の間に立つ異界の勇者もまたボロボロ。少年とも青年ともつかぬ未熟な歳ながらその黒い瞳には闘志が燃え、黒髪の隙間から流れ出す生暖かい液体が止めどなく流れていた。

 それに対するのは騎士然としたプレートメイルに黒いローブをまとった白髪の男であった。その男は赤髪のサキュバス族の女を抱きしめていた。男は血を思わせる眼光を事切れた彼女に向け、ゆっくりと床に寝かせてやると腰から一振りの剣を抜いた。



「よくもここまでしてくれたな、勇者よ」

「お前が言えた義理か! お前がみんなにして来た事を忘れたとは言わせない!! お前のせいでどれほどの村が焼かれ、どれほどの民が死んだと思っている!!」

「それはこちらの台詞でもある。お前らが魔族と呼ぶ者達はお前達と同じただ平穏に暮らしを送れる国を欲した。それを我は叶えるために戦って来たのだ」



 緊迫した声音に空気がビリビリと震える。

 殺意のみなぎる空間だが、二人は終わりが近い事を悟っていた。それ故か、魔王が名乗りを上げる。



「我こそは魔王ブラド! 元人間国が冤罪の将ブラド・フォン・ワラキア!! いざ、参る!」

「俺の名は勇者クロダ・シンヤ!! この世界の平和のために!! 行くぞ!!」



 勇者は剣を低く構えたまま吶喊する。魔王はそれに対して上段に剣を構えるや、無言で振り下ろす。その一撃が吸い込まれるように勇者に叩き込まれるが、直前で勇者が剣を跳ね上げてその斬撃を往なした。



「く、フハハ! 中々の太刀筋だ! だがこれはどうか!!」



 魔王は斬りそこなった剣先を翻し、下段から一気に剣を振りぬく。勇者はその一撃を身を捻ってかわす。

 すると無理な体制に陥った勇者に決定的な隙が生まれた。斬りこんでくださいと言わんばかりのその隙にめがけて再度、上段から剣を振り落す。すると鈍色の剣が吸い込まれるように勇者の肩に沈んだ。



「……浅いか」



 魔王の独白を無視するように勇者はひるまずに魔王との距離を詰める。それと同時に剣を体に引き寄せるように構え、鋭い刺突を放つ。それはズブリと魔王の体に突き刺さるが、途中で感触が空を切るのを勇者は感じた。

 魔王の体は霧のように消えたかと思えば勇者の背後にゆらりと移動する。魔王の能力である霧化だ。それによって魔王は勇者の突きをかわしただけでなく背後を取った。



「これで終わりだな。勇者よ!」



 口が裂けんばかりに笑う魔王。だが勇者も笑みを浮かべた。



「終わりはお前だ!!」



 その時、勇者の体を基点に光の輪が浮かんだ。魔王はそれが封印用の結界術である事を瞬時に悟る。



「小癪な!!」



 魔王が一瞬だけ視線を玉座へとつながる廊下に向けるとそこには杖を握りしめたエルフの少女が映った。彼女は浪々とエルフ国に伝わる(いにしえ)の呪文を唱え、イチイの杖をかかげる。



「伏兵か!? お前も勇者とは名ばかりに我と劣らず卑怯なことを」

「そうかよ! こちとら貴族じゃ無いただのコーコーセイなんだ!! 卑怯だって良いだろ!」



 魔王がエルフの少女を伺った一瞬の隙を逃すほど歴戦の勇者であるクロダでは甘く無かった。彼は剣を構え直し、まっすぐな突きを放つ。

 だがかつて一国の将として剣を磨いてきた魔王にとってその隙は覆す事のできる隙であった。しかしその一撃を切り込むまでに詠唱が終われば自分の魂は永劫の封印に捕まってしまう。

 それは彼女が願った魔族の国の長になる約束を反故にしてしまう事になる。



「く……!」



 故に再び魔王の姿が空気に同化を始める。霧となって逃れようと言うのだ。

 これで詠唱は対象を失う事で失敗する。

 どうやら勇者の体内に封印の触媒を入れていたのであろう。故に勇者は心おきなく魔王との接近戦を行い、エルフの魔法使いが機を見て封印魔法を発動させる。

 その連携に魔王は舌を巻くばかりだった。



「だが、これで貴様等の策は見切った!」

「……それはどうかな!?」



 勇者から離れるように実体を取り戻した直後、魔王はゾワリとした殺気を感じた。

 それと同時に先ほどまで高らかに魔法を唱えていたエルフがしゃがみ込むと、その背後に筒を構えた狼耳の獣人がスクっと立っていた。スラリとした彼女はその筒を構えるや、引き金を絞る。白煙と共に火花と轟音が散り、魔王の胸元にぽっかりとした穴が開いた。



「ぐはッ!?」



 霧から実体になった体はしばらく時間をおかないと再び霧へと変わる事が出来ない。その隙を的確についた攻撃に魔王は力なく膝をついた。



「どうだ? 特性のオリハルコンの弾丸の味は? ま、ファンタジー世界に銃なんて野暮だとは思うが」



 この魔物との戦争末期に登場した新兵器――銃。

 それによって射出されたオリハルコンの弾丸は魔力抵抗が低すぎるが故に、魔王の体内にある膨大な魔力を吸いだし始める。それに対する生理反応として失われた体内の魔力を補うように魔王の強靭な魔術回路は急速に周囲の魔素(マナ)を体内に取り込みだす。だが取り込む傍から魔力はオリハルコンに吸収されてしまい、ついに魔王の魔術回路はその負荷に耐え切れずにショートしてしまった。

 魔素(マナ)を魔力へと変換する役目を担う魔術回路が引き裂かれた事により、魔王の顔にやっと苦悶の色が浮かんだ。



「……ッ! 魔法が使用できない――!」

「これで終わりだ、魔王。最後に勝つのは、正義だよ」



 再び勇者の体から魔法陣が展開される。それと共に魔法の意識は闇に沈み――。

異世界に転移していたので初投稿です。

他のお話を放っておいて新作を投稿した事をお許しだくさい。

この話は十万字程度すでに書き溜めてあるので読者の皆様の反応を見ながら順次放流していく予定です。

連載中の戦火のは近日中に最新話をあげるので許してや、城之内。

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