その三
――――剛田久美は、痩せたら可愛い典型的なそれだった。数週間に渡る厳しいダンスレッスン(主にX-J○pan)によって元々の枝毛の少ない美しい黒髪も相まって、今は小柄で華奢な、守ってあげたいツインテール美少女へと大変身を遂げている。ちなみに先程智之があっさり帰ったのもそのあまりの変わりように後ろの人影がまさか剛田久美だとは思わなかったからである。
「……なんでもない。それより、そろそろいいんじゃない?」
「え?」
「いや、だから……今のあなたなら、あいつもOKしてくれるんじゃない? もう一回、告白してみたら?」
「えっ!? い、いぃえ、も、もういいんです……」
剛田久美は本気で驚き飛び退いた後、急に肩を縮こまらせ、頬を赤らめながら両の指を絡めて何やらもじもじとし始める。
「えっ! もういいって、どういうこと!? まさか今更怖くなったわけ!?」
詰め寄り問い詰める田中利香に、剛田久美はさらにしゅんとなって縮こまる。そして、今にも消え入りそうな声でぽつぽつと口を開いた。
「そっ、その、実は私、透君のことが……」
「トオル? え、そんな人X-J○panにいたっけ?」
「ち、違います! サッカー部の藤崎透君ですよっ!! ――――はっ」
口に出してから急に恥ずかしくなったらしく、剛田久美は手で顔を覆い隠してしゃがみ込む。その動作ももちろん田中利香を凌ぐ驚異的女子力で溢れている。
「は……? はぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぁぁっ!?」
田中利香はしばしの硬直後ようやく理解に至り、顎が外れるほど大口を開けて驚く。その声は校内中にこだまして、のちに尾張高校七不思議最後の一つとして語り継がれることとなるのだった。




