その二
「何っ!?」
「三階だ。急ぐぞっ!!」
「え!? ちょ、待っ……」
利香が四苦八苦しているうちに智之は乱雑した机を素早く飛び越えてあっという間に出入り口まで辿り着く。
「それじゃ、三階で会おうぜ。利香ちゃん」
少し遅れて透もキザったい台詞を吐くと間髪入れずに駆け出して行った。
「待ちなさいってばっ……!!」
利香がやっとの思いで廊下に飛び出した頃には、二人の足音は校舎周りを走る運動部の喧騒に揉み消されていた。
*
十分後。田中利香は南館四階科学準備室前の廊下にて智之達を見つけた。焦点の定まらない目で息を切らしながらふらふらと歩くその姿は、傍から見なくともゾンビだ。
「遅かったな」
「汗だくじゃん、大丈夫かよ」
「あんた達が!! 南館三階だって言わなかったからでしょぉがぁ!」
田中利香は鬼気迫る形相で透の胸倉を締め上げると、怒りにまかせて揺さぶった。
「何を言っているんだ。BBQ同好会の校内活動は禁止されている。他に火災報知機が作動すると言ったらここしかない」
揺れに合わせてヘッドバンキングさせられている透をよそに智之は事務的な口調で言う。
「知らないわよそんなこと!!」
「うあうあうあっ! いい加減話してくれ利香ちゃん。首、もげる……」
「――――竜ヶ崎!! こんどやったら停学だっつっただろ‼」
怒号と共に科学準備室から投げ出されたのは、暑苦しい真っ黒なフードに煙を纏った男子生徒だった。目を凝らすとフードを含んだ彼の怪しげな装飾品には至るところに無数の幾何学模様がプリントされていることが分かる。
「誰あいつ?」




