カケラ
カケラを紡ごう。
それは泡沫の夢。ひとつひとつの泡に閉じ込められた刹那の一時。
夢の中で君は何を知った?何を経験した?
死、別れ、悲しみ。
でもそれだけじゃないだろう?
暖かさを知った。優しさを知った。出会いを知った。
なら、もう大丈夫だろう?
いつまでここで絶望しているんだい?
絶望すらも乗り越えて君は希望を掴むんだろう?
ほら、立ち上がりなよ。
君の心は砕けちゃいないんだろう?
君の手を見てみなよ。その手にある武器は飾りかい?
違うだろう?なら、やることはわかるよね?
ほら、君を待っている人がいる。
名前を覚えてない?
そんなはずはないさ。検閲されていたところで君の魂までは書きかえられない。
君は夢で何を見て来たんだい?
ほら、思い出せるよ。
思い出したかい?
なら、大丈夫だ。
今度の君なら、この閉じられた世界すらも抜け出せるだろう。
行ってらっしゃい。最後の僕。どの僕よりも強い心を持った、最強の僕。
僕は布団で目を覚ました。
あぁ、気分が悪い。悪い夢を見ていたようだ。
僕は窓を開け、ベランダに出る。
深呼吸をして僕は手すりの向こうに身を投げ出そうとした。
だが踏みとどまる。
僕は右手を見る。そこには何もない。何もないはずなのに何かがある。
僕は右手の感覚に意識を集中する。
すると右手にははっきりとした感触があった。
それは一振りの剣。それは装飾も無いただの剣。だがその刀身は澄みきった刃。
それを振るう。空間が砕け虹色の極彩色の空間が現れる。
それを境に周りの空間が砕け散る。
「今行くよ、希望」
僕は唯一残ったベランダの手すりから身を投げ出す。
二度と悪い夢を見ないように。
――悪い夢を打ち砕きに行く。