『三話』
「二人しかいないってどういうことですか?新人騎士は全員で九十人ほどいましたよ!?」
「それに四人しかメンバーがいないってどういうことでか?」
「まぁ、落ち着け。」
めんどくさそうにイズモが答えた。
「お前らはどうやって新人を四つに分けるか知ってるか?」
マコトもチアキも首を横に振った。
「ドラフトだよ。」ヤマトが言った。
「ドラフト?野球とかの新人を指名するやつですよね?」
「その通り。入学試験の結果など様々なデータをもとに、各隊が欲しいと思った新人を指名するんだ。」
「指名されなかったら?」
「そんなもん不合格だよ。」
マコトの質問にイズモがそっけなく答えた。
「戦力にならない奴はいらないってことだな。」
「つまり君たちに期待しているってことだよ。」
ヤマト副隊長の笑顔が眩しすぎる。
マコトは思わず笑ってしまった。
『期待されている』お世辞でもやっぱりうれしい言葉だ。
「さて・・・行くか」
隊服の胸元にあるボタンをいじりながらイズモが立ち上がった。
「どこに行くんですか?」
チアキが即座に聞いた。
「修行場に行く。つか、お前らもくるんだよ。」
修行場は隊舎のすぐ裏側にあった。特に何かがあるわけでもなく、ただただ平地が広がっている。
マコトとチアキの前でイズモは胡坐をかいて座っている。
「ここで何するんですか?」
「いい質問だ、マコト。」
イズモは取れてしまったボタンを縫い付けている。
「新人の指名とかはヤマトに任せてるからな。オレはお前らのこと全く知らん。」
まったく。なんでこの人が隊長、いや隊長代理なのだろう。
「まぁ、だからお前たちの現段階の実力を知りたいわけだ。」
イズモは結局くっつかなかったボタンポケットにしまった。
「ルールは簡単だ。二人がかりでオレにかかってこい。」
そういわれてもマコトはイズモを攻撃できなかった。チラッとチアキを見たが彼女もマコトと同じようだ。
イズモのセリフはかっこよかった。
だが問題は彼が隙だらけだったことだ。
相変わらず胡坐をかいて、武器もかまえっていない。そんな人を攻撃することはできなかった。
「どうした?・・・・そうか忘れていた。」
そういってイズモは隊服のポケットからどうやって入ってたのか、剣を二本取り出した。
それを見てイズモは自分のポケットを確認した。
かなり広い。
「空間拡張の魔法が施されてるの。」
マコトの動作に気づいたチアキが説明してくれた。
「けど、たくさん入れすぎるといざって時に必要なものが取り出せなくなるから気をつけなきゃいけない。」
「よく知ってるな、チアキ。」
「姉に聞きました。」
イズモに褒められ、少し顔を赤くしながらチアキが答えた。
「さて、いまオレがやった剣は入隊祝いな!もちろんその剣も使っていいぞ。」
「隊長も立って構えてくださいよ。」
チアキが剣を抜き構えて言った。
それを見てマコトも剣を構えた。
「隊長代理な。心配しなくても必要なら立つし、武器も魔法も使うよ。必要ならな。」