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断罪された悪役令嬢は契約で国を買い取る ~支配ではなく市場で無双します~  作者: 朝凪ことは


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32/102

第32話 契約違反

 王都商業会館、大広間。


 商人、銀行家、貴族、官僚。


 異様な緊張が満ちていた。


 本日は、緊急商業審査会。


 議題は――ヴェルナー商会の優先契約発動。


 壇上には、レオンハルト。

 そして、私。


 ヴァルデン代表として正式に招致された。


「本日は、契約の確認を行います」


 議長の声が響く。


 私は、書類を広げる。


「まず、王国とヴェルナー商会の覚書」


 静かに読み上げる。


「“市場安定を前提とした優先供給”」


 ざわめき。


「現在、市場価格は回復基調にあります」

「医療供給も滞っていません」


 視線が集まる。


「よって」


 一拍置く。


「優先契約の発動は、前提条件を満たしていません」


 静寂。


 レオンハルトが、低く言う。


「解釈の問題だ」


「いいえ」


 私は、即答する。


「条文です」


 次の書類を掲げる。


「さらに」


「契約第十二条」


 声は、穏やかだがはっきりと。


「“市場価格を意図的に操作し、契約条件に影響を与えた場合、本契約は無効とする”」


 ざわめきが、広がる。


 ダンピング。


 価格操作。


 それが、ここで刺さる。


 銀行家たちが、互いに顔を見合わせる。


 エルドナー銀行副頭取ヘルマンが、静かに言う。


「事実関係は確認済みです」


 空気が、決定的に変わる。


 レオンハルトの顔色が、僅かに白くなる。


「市場競争だ」


「ええ」


 私は、微笑む。


「市場競争は合法です」


「ですが」


 一歩踏み出す。


「契約を盾にするなら、契約を守るべきです」


 静まり返る会場。


「支配では、信用は買えません」


 その言葉が、広間に落ちる。


 議長が、槌を打つ。


「覚書の発動は無効」

「契約違反審査に入る」


 決定。


 公開の場で。


 ヴェルナー商会は、契約違反の疑義をかけられた。


 王都。


 その日の夕刻。


 信用評価、八〇%。


 危険域突入。


 取り付けが始まる。


 小商会が資金引き上げ。

 銀行が保証を求める。


 レオンハルトの執務室。


「……融資が、完全停止」


「在庫は?」


「処分価格でも、買い手が限定的」


 沈黙。


 彼は、椅子に沈み込む。


 初めて。


 完全に追い詰められた顔。


 ヴァルデン。


「王都三紙、報道」


 グラントが報告する。


「“ヴェルナー商会、契約違反疑惑”」


 クラリッサが、小さく笑う。


「終わりましたね」


「いいえ」


 私は、静かに首を振る。


「終わらせます」


 最後は。


 市場の審判。


 数字が、判決を下す。


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