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断罪された悪役令嬢は契約で国を買い取る ~支配ではなく市場で無双します~  作者: 桐生ことは


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第14話 数字が語る現実

 帳簿は、嘘をつかない。


 感情も、期待も、恐怖も。

 すべてを削ぎ落とした“結果”だけが、そこに残る。


「……正直に言います」


 集会所の一角。

 長机の上に帳簿を並べながら、グラントは深く息を吐いた。


「この地は、もう“辺境の一集落”ではありません」


 その言葉に、集まった面々が自然と背筋を伸ばす。


 クラリッサ。

 ミレーヌ。

 カイル。

 そして、数名の代表者。


 私は、何も言わずに続きを促した。


「人口は、当初比で四割増」

「耕作地は、三割拡張」

「魔導補助による収穫量は――」


 指で数字をなぞる。


「平均で、一・五倍」


 ざわめきが起こった。


「そんなに……?」


「ええ」

「ただし」


 グラントは、視線を上げる。


「消費も、同時に増えています」

「人が増えれば、食べる量も、使う量も増える」


 当然の話だ。


「つまり」


 私は、静かに言葉を継ぐ。


「今は、成長期」

「ですが、このままでは――」


「頭打ち、です」


 グラントが、即答した。


「物流が追いつきません」

「特に、王都方面との取引が不安定です」


 クラリッサが、頷く。


「王都の商会も、混乱しています」

「“誰と交渉すればいいのか分からない”と」


 私は、小さく笑った。


「それは、当然ですわ」

「まだ、こちらが“窓口を一本化”していませんもの」


 クラリッサを見る。


「その準備は?」


「進めています」

「条件を整理中です」


「ええ」

「では、次の段階に進みましょう」


 私は、帳簿の一ページを指で叩いた。


「王国への依存度」

「これを、下げます」


 カイルが、眉をひそめる。


「……王都を通さない、ということですか」


「完全には、まだ無理です」

「ですが――」


 一拍、置く。


「“選択肢”を、増やします」


 私は、地図を広げる。

 辺境を中心に、いくつかの交易路が引かれている。


「西の山岳地帯」

「南の小領」

「そして――」


 指先が、少し外れた場所を示す。


「他国境」


 空気が、変わった。


「まだ、正式な交渉はしません」

「ですが、接触は可能です」


 クラリッサが、息を呑む。


「それは……王国から見れば――」


「ええ」

「快くは思われません」


 だからこそ、だ。


「選択肢が一つしかない交渉は」

「交渉とは言いません」


 それは、従属だ。


 ミレーヌが、ぽつりと呟く。


「……物流、魔導補助」

「改善、できる」


「どれくらい?」


「試算、する」


 彼女は、すでに思考を切り替えている。

 頼もしい。


 私は、全員を見渡した。


「数字が示しています」

「ここは、もう“放置される場所”ではありません」


「動けば、王国に影響が出る」

「止まれば、こちらが困る」


 クラリッサが、静かに言う。


「……完全に、盤面に乗りましたね」


「ええ」


 私は、頷いた。


「だから、慎重に進みます」


 その夜。

 私は、一人で帳簿を見直していた。


 数字は、正直だ。

 だが、未来までは書いてくれない。


(次は……)


 王国が動くか。

 それとも、先にこちらが動くか。


 答えは、まだ分からない。


 だが、一つだけ確かなことがある。


 この地は、もう“小さな実験”ではない。


 ――王国の経済と、静かに接続されている。


 数字が、それを雄弁に語っていた。


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