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EP64 ルシー・フェルド(2)

 カイドウ家本邸。

 別室で行っていたマシューの定期メンテナンスが終わった後。

 ユイはレイラに時間を取ってほしいと頼んだ。

 そんなユイの頼みに、レイラのアイスブルーの青が揺れる。

 

『たまには女子会も良いんじゃないか?』


 笑顔付きのサムズアップを見せ、トオルは部下を連れてすぐに撤退する。

 そんなさり気ないトオルの優しさに、ユイは癒しを感じる。

 マシューを連れ、ユイとレイラは玄関までトオルたちを見送って、ユイの私室へと向かった。

 

 青い部屋に、白い猫足の大きなソファー、大きなソファーテーブル。

 テーブルをはさんでユイとレイラは向かい合って座る。

 メイドが深紅のベリーを乗せたケーキを、紅茶と共にレイラの前に置く。

 ユイはレイラと同じケーキを断り、甘みを押さえたハーブティだけを貰う。

 メイドはユイが残したケーキを持って退出する。

 マシューはユイが座るソファーの左側に待機状態で座り、黒いカメラアイをレイラに向けた。

 

「ごめんね、忙しいところ時間取らせちゃって……」

「ううん。ユイさまは……ううん、ユイは、さ。AIドールを探してるんだよね?」


 レイラは敢えていつもの調子に戻した。

 レイラとの”女子会”は、ユイが女王の仮面を外せる数少ない機会の一つだ。


「うん。アゼレウス社のヒト型AIドールがいいんだけど、気に入ったのが無くて……」

「そっか。護衛専用ならカスタムデザイン式になっちゃうけど、RARUTOのラウルに似せたAIドールは造れないよ?」


 レイラはケーキの上に載っている、深紅のベリーを端に寄せた。

 好きなものは最後に食べるレイラの癖が、まだ残っていてユイは嬉しくなる。


「ふふ。なんか懐かしいね。昔の私だったら、それを聞いて滅茶苦茶へこんだと思う」

「そりゃ、ユイのラウルへの情熱は半端なかったし。今は違うと分かって少し安心した、かな」


 ユイは立ちあがって机の引き出しから、一枚の写真を取り出す。

 それをレイラに手渡す。


「この写真、アザリウムにあるアゼレウス社のショールームで出会った人から貰ったの」

「……ユイ、これ……」


 レイラの目が大きく見開かれる。

 まちがいない。このAIドールは”特別”だ。


「なるほどね。だから爺さん(アレン)を選ばずに私を選んだってことか……」


 レイラの目から温かみが消える。

 そのレイラは今までユイが見たことがない、アゼレウス社の立場がある人間としての顔だった。


(レイラはやっぱり業務機密レベルの真実を知っていた……)

 

 レイラはマシューを一度見つめ、それから目を伏せた。

 もともとレイラの声は低めだ。そのトーンが静かに落ちていくのがわかった。


「ユイはさ、3月15日の事件の数人しか残らなかった生存者の一人だったよね?」

「うん」

「ことの発端はさ、その現場にこのAIドールが居た、そう口コミから広がったんだ」


 それは、11年前の真実――。

 アゼロン・カンパニーとアゼレウス社の一部の関係者しか知らない話だった。


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