表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/87

EP57 アザリウム(2)

 ログインして最初にユイが見たものは、ユイ自身のアバターだ。

 今の状態はユイの姿をそのまま投影したものになっていた。

 長い黒髪、黒目。

 アバターの衣装は水色の清楚なロングワンピース、ローファーを選んでみた。

 システムが選び出した、容姿、体格はユイに似せてある。

 もちろんカスタマイズ可能だったが、敢えてそのままにした。

 興味が無かったと言えばそれまでなのだが。

 どうやらアバターに妊婦の特徴は反映されないらしい。


 ホームと呼ばれる場所は、その名の通り家だった。

 最終ログインの日時が3年前になっている。

 ユイはガイドを呼び出し、「アザリウムに繋げて」と告げる。


「ショッピングエリア、アザリウム。接続します……」


 この世界の企業のショールームのCMが、正面のモニターに流れる。

 どうやらアザリウムのエリアは1番街から12番街まであるらしい。

 ユイは「6番街」を選択した。目的地の選択ではアゼレウス社のショールームを選ぶ。


 父タケルはバイクが好きだったのか、ガレージにはバイクのラインナップが凄い。

 ユイはその中で濃紺のグラデーション塗装がほどこされたバイクを選んで乗り込む。


(これ、なんかカッコいいかも……)


 運転は自動操縦なので目的地までユイはただ乗るだけだ。

 初期エリアから6番街、アゼレウス社まで。

 ホームからユイを乗せたバイクは、アザリウム内のハイウェイを駆け抜ける。

 リアルを忠実に模した世界の風景はとても新鮮だった。


 伝統を感じさせる街灯、継ぎ目のないアスファルトの道路。

 なのに街路樹は葉まで真っ白な白い樹木。

 歩く人はマスコットだったりヒト型だったり様々だ。

 建物だって時代様式が様々。

 デザインすらも文化の違いが在りすぎるのに個性として表現されている。

 とことんリアリティを追及した造りなのに、どこかクラシカル。

 このズレがユイには逆に目新しく映った。

 そうして全面ガラス張りの、巨大な三角柱のビルの前でバイクを降りた。


『アゼレウス社 アザリウム内ショールーム』

 

 と表示されている。

 ユイはワンピースの裾を整え、辺りを見回す。


「マシュー」

「……なんだ?」


 ユイはガラス張りのビルの自動ドアを見つめながら、マシューを呼ぶ。


「画面共有をお願い」

「……わかった」 

 

 暫くするとマシューの姿が、ユイの横に大型犬の姿で表示される。

 ユイが触れようとすると、マシューの姿はノイズのように揺れ動く。


(……そりゃそうか。触れられるわけないよね)


 マシューは、ユイを見上げる。

 ふさふさの尻尾が少しだけ揺れ動く。


(……そういえば、マシュー的には“変化”には興味はあるんだっけ)


「ユイ」

「ん?」

「フィーリングで選んだほうがいい、とだけ言っておく」


 それはマシューからの提案。

 もしかしたら忠告なのかもしれない。


「今日、AIドールを購入するかどうかはわからないよ?」


 ユイは深く考えずに、自動ドアを開け、エントランスドアを開閉する。


「この中に一歩入れば、わかるだろう」

「……へんなの」


 暗い空間に、フロアガイドのパネルが置かれている。

 そこだけスポットライトがあたる仕組みはなんだか高級感に溢れている気がした。

 ユイはパネルに手をかざす。

 AIドール展示場は「第8部門」だ。

 

「ユイ・リア・イサキ……サマ。ホンジツ ハ ヘイシャ ショールーム 二 ゴライテン イタダキマシテ マコト 二 アリガトウゴザイマス」

「ガイド無しで「第8部門」に転送してくれる?」

「カシコマリマシタ。テンソウ ヲ カイシシマス……」 


 ユイが立つ床に白い幾何学的な紋様が浮かび上がり、立ち上る光りの中――

 妙に上に引っ張られる感覚を覚えながらユイは目を瞑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ