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EP47 別れの挨拶

 エレナ・セナ・リーシェン。

 彼女はヒロトの叔母にあたる女性だ。

 黒髪に紫色の目。エレナは静かで穏やかな女性だった。

 落ち着いた表情は、ユイの祖母リエを連想させる。

 

「いつか私を訪ねて来るとは思っていました」


 お互い軽い自己紹介の後、エレナは語り始めた。

 会議室に西日が射し込む。

 ヒロトから連絡が来たのは、丁度ユイの元にメンテナンスを経てマシューが戻って来た日。


 成人式に出会った女性は、キモノ姿が美しい清楚な女性だったそうだ。

 そんな彼女と何度も出会った結果、実は芯が強く、なかなか心を開いてくれない人だとわかる。

 それでも惹かれ、気が付いたら追いかけていたという想いを、エレナに話していたそうだ。


「だから友達から始めなさい、待ちなさいと言ったの……」


 そしてついにその女性と恋人になれたこと。

 彼女とゆくゆくは“結婚”を考えていること。

 それが最後の連絡の内容で、エレナは祝福の言葉を贈ったばかりだったそうだ。


「……ユイさんが、あの子の運命の人だったのね」

 

 トオルも目に涙を貯めている。優しい人だ。

 頬から涙が何度も伝った。


「でも……ヒロトを探さないでください。あの子はもう……」


 時計を見つめるエレナを、ユイが引き留める。


「待ってください。私は――」


(私のお腹には……)

 

 そう言おうとしてユイは首を振る。

 ヒロトと同じ紫色の目には深い憂いと涙が滲んでいる。

 

(だめ。言えない……)


 もしかしたら彼女は最初から分かっていたのかもしれない。


「あなたはカイドウ家のご令嬢でしょう? 目元がお母様にそっくりね」


 ヒロトの叔母は、ユイに向かって深々と頭を下げる。

 それは別れの挨拶だ。


「ユイさん、行こう」


 トオルに手を引かれてユイは会議室を去る。

 振り返った時に見たのは彼女の優しい泣き顔だった。


「あなたの幸せを、私も願っているわ」


 その言葉は彼女の言葉ではなく――

 ヒロト本人に言われたような気がした。


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