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08 ーHACHIー ~俺の彼女と私の彼~  作者: 由耀
第2部 ー継承ー
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EP30 見学体験

 数日後、ユイはヒロトに連れられ、合唱団の練習場として使用している小ホールにやって来た。

 ヒロトへの警戒心も消え、ロレン先生のところへ運んでくれたことがきっかけになった。


(彼は自己中なところがある。でも、それに気づいて努力を始めた前向きな人)


 ただ見ているだけではつまらないからと、渡された一枚の楽譜。


 楽し気に声を出すメンバーを見て、メンバーが連れている動物型AIたちを見て。

 ユイはその目を輝かせる。

 

「一緒にどうだい?」

「この歌流行ったよね。知ってる?」

「歌っているうちに覚えるさ」

  

 メンバーに誘われて、ユイは少しずつ声を出していく。

 この歌は学生の頃よくレイラと歌った流行歌。歌詞もメロディーも分かる。

 でものびのび歌うのは少し恥ずかしくもある。

 ただ歌うこと自体は、好きな部類だと思う。


「あんた、良い声だねえ」

「レミちゃん、良い子拾ってきたね」


 ヒロトが押しの強い女性メンバーたちに「今日は見学に来てるだけだから無理させないで!」と

 止めにかかる。


 ユイは大丈夫、と言う意味を込めてヒロトに微笑む。

 それが伝わったのかヒロトは頷く。


「私……高い音はちょっと心配で……」

「ちょっとしたコツがあるんだよ。いいかい、ここの跳躍は上の音を目指すだけじゃなくて、上から声をひょいと引っ張るようにするんだ」


 女性がユイの前で歌って見せる。

 きれいな旋律が辺りを包む。


「あ、そうか!……押し上げちゃダメなんだ」


 ユイもつられて声を出す。


「今のは……?」

「筋がいいねぇ! ただ、次の歌詞を見てごらん、ここで場面が変わるから……。次はね……」


 気さくで優しくて、ちょっとだけお節介なところもある女性陣と。

 穏やかで陽気な男性陣。


 マシューの周りにもなぜか動物型AIドールが集まっている。波長が合うとかあるのだろうか。

 動物の集会のようで微笑ましい。


 アットホームな合唱団だ。

 それでいて皆で歌い出せば、声が一本の清流のように空間を流れていくのだ。

 ホールで味わった風景が変わるような感覚は、間違いじゃない。


 時々マシューと目が合う。


 『大丈夫だ』


 そう言われているようで、その安心感がユイの背中を押す。

 

「やっていけそう?」


 気を使って声を掛けるレミに、ユイは。


「歌うって、こんなに楽しいことだったんですね」


 と笑顔で答える。

 それがユイの答えだった。


「ようこそ合唱団“アルゼリス”へ!」


 歓迎の拍手を受けてユイはこの日、歌の世界に足を踏み入れた。

 ユイの携帯端末には、新しい連絡先が登録される。


 “ヒロト・セナ・リーシェン”

 ”レミ・イナ・ロレン”



 数日たってからその連絡リストには。

 合唱団”アルゼリス”の団長の連絡先やトオルの連絡先などが登録された。


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