可憐な少女がか弱いなんて、誰が決めたの?
2026年最初の投稿です。
光に包まれた円陣から現れたのは、神秘的な長い黒髪にブラックオニキスのような黒い瞳の美しい少女だった。
「ーー異世界ねぇ⋯⋯」
美桜は花の香りのお茶を飲んで、溜め息を吐き出した。
これから国の王族に面会するらしい。
学校から帰宅すると、いつものように部屋の扉を開けたとき、光の波が美桜を包み、この国の神殿へと降り立っていた。
「まさかの異世界移転⋯⋯ラノベかよ」
ラノベ知識でいうなれば、このパターンの選択肢は大体2択だ。
「勇者か聖女か」
どちらにしても迷惑な話だ。
「来年受験なんですけど〜オマケに夏には大会と短期留学も控えてるんですけど〜」
ブツブツと呟いていると、部屋の扉がノックされた。
「美桜様、準備が出来ましたので、ご案内させていただきます」
「はーい⋯⋯」
さて、鬼が出るか蛇が出るか。
「鬼になるか蛇になるかでもアリかもね」
口角を上げて笑みを形作ると、美桜は颯爽と部屋を出た。
ーー開始すぐに帰りたくなりました。
居並ぶ王族を見て「これアカンやつ〜!」と声に出さなかっただけ偉い。
異世界人にマウントを取りたいのか、キラキラに飾られた身。
現代日本に比べて、技術などそこまで発展していないのだろう。ハッキリ言って「重そう」としか思えない。
まぁ、ゴツゴツの指輪なら武器になりそうだけれども。
思わずスンっとなってしまったのはご愛嬌。
キラキラに着飾ってはいるけど、中身まで隠しきれてないのは丸わかり。
「そなたには聖女として、この国のために頑張ってもらいたい」
はい、聖女キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!
無理無理無理ふざけんな。
なんでこの国に義理もない私が頑張らないといけないんだ。
人に押し付ける前に、その装飾品売って、民に還元しやがれク●野郎。
内心で王族達に中指を立てながら、美桜はゆるりと笑って首を傾げた。
「具体的に私は何をすればよろしいのでしょうか?」
「聖女とはこの世界の象徴である。神殿で祈りを捧げ、病傷を癒し、この国の結界を維持する者だ」
役割多いな!
病気や怪我を癒すって、この国には病院とかない訳?
訝しみながら話を聞くと、聖女がいるなら必要ないとのこと。
ふざけんな!
要するに、聖女に依存しまくったせいで医療制度が遅れまくってるってことだよね?
つか、聖女におんぶに抱っこかよ。ホントにクズだな。
禄に政策もない王政って必要なのかな?
私は全くもって必要ないと思います!
母国のように、政治に介入しなくても尊敬や敬愛を集めている皇族ならまだしも、他人任せなクセに無駄に偉そうなトップってどうなのよ?
いらなくない?
私ならいらないわ。
あと、そこのクズの横にいる王子らしき優男。
キモい目で見るな。不愉快極まりないわ。
一度だけ深く目を閉じ、様々な感情を奥底へとしまい、ニッコリと微笑む。
「精進いたします」
教会での勉強はわりと楽だった。
現代社会よりも色々と遅れていて、識字率も低いこの国は、学ぶことを義務としている日本人にとって得るものは少ない。
むしろ美桜の知識の方が、教師よりもはるかに凌駕していることに驚かれた。
なので、集中的にこの世界や国のこと、聖女の癒しの魔法などをを学ぶ。
学んで分かったことは、この国のヤバさ加減。
色々怪しいトコをツッコむと、教師達がしどろもどろになり目を逸らす。
もうなんか王族以外のおエライさんが不憫になってくる。
やっぱりそんな酷いんだね、この国⋯⋯。
まぁ、トップを見ていれば言わずもがなだけど。
「やあ、ミオ!」
美桜は勉強しに城から教会へ通っている。
そこによく出くわすのが、件のダメ王族の一人。一応これでも王太子らしい。
親が親なら子も子であるを地で行っている。
思わず半目になるのは許して欲しい。
王太子って暇なの?普通は忙しいんじゃね?あ、普通じゃなかったか⋯⋯サーセン。
「ご機嫌よう殿下」
取り敢えず笑みを作る。
やれば出来る!スマイル0円精神だ!
顔が引きつっているのに気付かないのか、王子様は自分のことばかりベラベラと喋る。
主に自慢だけど。あとナンパ。
口説いてくるのを分からないフリするのも大変面倒くさい。
アンタが、庭園の片隅で可愛い侍女を口説いて、イチャコラしてたの知ってますけどー?と、言いたいのを堪えて愛想笑いをする。
王子様じゃなきゃ無価値だわコレ。
大体、コイツ婚約者がいたはず。確か、大公家のお姫様が婚約者だったような⋯⋯。
まぁ、コレじゃ熨斗付けてでも譲りたいわね。
しかしあのお姫様も王子様というステータスにしか興味がないようだった。
遠くから凄い顔で睨まれたしね!
お嬢様ならその腹黒さ隠せよ!馬鹿なの?としか思わなかったけど。
いずれにしても仕掛けてくるだろうから、その時を待てばいい。
果報は寝て待てーー色々と努力もしたし、たくさんの種も蒔いたんだもの。少しは踊ってくれると嬉しいわね。
可愛いお馬鹿さんが踊ってくれたのは、それからすぐのことだった。
「わたくしの婚約者に近付かないでちょうだい!」
あ〜金切り声って普通に鬱陶しいね!
「平民の田舎者のクセに!」
東京都23区内出身の田舎者ですが何か?
「ほんと、礼儀も教養もない!」
なんで高貴な令嬢って取り巻き連れてるんだろ?
一人で言いに来れないの?
「未来の王妃になるのはわたくしよ!」
国のトップになりたいだけか〜。
なんか、相手にするのも阿呆らしい⋯⋯。
「ちょっと!聞いてるの!?」
金切り声の後に感じたのは、頬の痛みと衝撃。
思わず睨むと、その女は手にしていた扇をもう一度振り上げた。
その瞬間、私の中でなにかが切れた。
「ーーざっけんじゃねぇよ!」
その手を左手で止めて、右手でボディに拳を入れた。
「頭の悪い時代遅れのクズが!」
そしてすかさず右足で蹴り上げ、倒れたところで動かないように足を乗せる。
「この国の文化って、私の世界では300年くらい前に廃れたものと似てるのよね〜この国って建国されて200年くらいだっけ?浅い浅い」
ギリギリと体重をかけて、馬鹿に言い聞かせるように教えてあげる。
「因みに私のいた国はね、人口約1億2300万人で、世界的に一番長い単一王政の国なの」
鮮魚のような足置きに、更に体重をかける。
「世界最古級と言われているくらい長〜い歴史がある国なのよ。すごいのよ、約2700年の歴史を誇ってるの!このチンケな国と違って、なんと識字率はほぼ百パーセント!凄いでしょう?」
軽く足で小突き、髪を掴む。
「600メートル⋯⋯この城の高さの5個分くらいの場所まで約1分で到達できる乗り物があったり、馬車で一週間の道のりを、2時間ほどで移動できたりするのよ」
睨み返してくる瞳に向かってニッコリ笑う。
「世界中どこにいても、相手の顔を見て会話もできるの、どう?凄いでしょう?こんな時代遅れの田舎国なんかじゃ分からないだろうけどね!」
髪を掴んだまま顔面を地面に沈ませる。
「あーあ、スマホもPCもゲームも漫画もテレビもないとか、ありえないんですけどー!」
愚痴りながら、取り巻きを回し蹴りで沈めていく。
「てか、突っかかって来るなら、もっと強いの連れて来いよ」
これじゃ準備運動にもならないじゃない。
「⋯⋯な、な」
「ヤダなぁ〜ヤる気ならば、ヤられる覚悟もしないとじゃん」
なに自分を過信してんだよ。
「私ね、武術を小さい頃から色々習っててね。去年は全国で1位になったの」
空手に合気道、柔道、剣道、弓道、薙刀、レスリングやボクシングもやったわ。
1番合ってたのが空手。
「世界大会の代表も狙ってたのに、お前らがクッソ下らないことに巻き込みやがって!」
完全に八つ当たりである。
「み、ミオ?」
騒ぎを聞きつけたのか、クズ王子が戸惑ったような焦ったような顔で見てくる。
私といえば馬鹿女の髪を掴んで、めっちゃ笑顔。
「あんな下半身の緩い下劣なクズのどこがいいんだか⋯⋯あ、地位か」
地位しか誇るトコないもんね。
「か、下半身の緩い下劣⋯⋯」
「あっちこっちの陰で侍女に手ぇ出してるの見てたし?」
そんな下劣な不用品切り取ってしまえばいいのに。大丈夫、私なら聖女の魔法で止血も簡単♪
「ひぃっ!」
何故内股になる?
「せっかく大人しくいい子にしてたのにな〜」
ーーだから、寝た子を起こした責任は取ってよね?
『まともな政治もせず、贅沢を極めた王家を潰し、簒奪した「ヤマト国」最初の女王であり、聖女でもあったミオの時代は、正に芽吹きの時代であった。旧王家の無駄な宝飾品を売り払い、その売り上げで街や街道を整備し、各地に学校や育児施設を作り上げ、特に医療や衛生に最も力を入れた。これにより、風邪を拗らせ亡くなる者も減り、伝染病も減ったという。(中略)女王に即位した5年後に、王配である騎士団副団長でもあったエインズレイ氏との間に、王女モモカを授かり、まだ幼かった旧王家の第2王子の婚約者へとし、旧王家派との間も上手く取り持った。(中略)最終的に3人の子を授かり、どの子も文武両道の精神で育て上げる。(中略)ヤマト国は今でもミオ女王の掲げた「文武両道」を大切にしており、武道や勉学において特出する者も多く輩出しているーー』
ーーハワード・ブラーズ著『ヤマト国の成り立ちと初代女王ミオ・カタオカ・ヤマトの生涯』より抜粋。
うちのコ気ぃ強い子ばかりだわ〜w
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