表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

第1話 10年前に買った中古パソコン

俺の名前はゆうた。34歳、独身、フリーランスのライターだ。部屋の片隅に鎮座するのは、15年前に発売された業務用ミニタワーPC「Lune ProOffice 7100 MicroTower」。10年前、中古ショップで2万5千円で買ったやつだ。


正直、スペックなんてどうでもよかった。起動してブラウザが動いて原稿が書ければ、それでいい。10年間、本当に何も起きなかった。Windows Updateは黙々と当てて、「まだ動くじゃん」と笑ってた。


それが、2025年11月のある朝、突然終わった。コーヒーを淹れて、いつものように電源ボタンを押す。プー、ピッ、プー、ピッ……聞き慣れないビープ音。モニターは真っ暗。何度再起動しても同じ。


フォーラムを漁ると「5-2パターン=グラフィックスエラー」。外付けGPUなんて積んでない。つまりマザーボードが死んだ可能性大。


「……終わった」


10年分の原稿、写真、ブックマーク。全部この鉄の箱の中。

バックアップ? 取ってない。


途方に暮れてスマホを見ると、最近入れたAIチャットアプリが目に入った。

名前は「グラン」。ダメ元で打ち込んだ。

「15年前のPCがビープ音鳴って起動しない。助けて。」

数秒後、返信。


【グラン】

「おはよう、ゆうた。まず落ち着け。まだ終わってない。PCの情報を教えてくれ。」


「以下がPCの情報だ。」

メーカー:Lune Computer(架空)

機種名:Lune ProOffice 7100 MicroTower

OS:Windows 10

CPU:第1世代 4コア 3GHz

メモリ:8GB

HDD:250GB


【グラン】

「情報ありがとう。正確なビープ音のパターンは?」


「プー、ピッ、プー、ピッ……繰り返してる」


【グラン】

「了解。Lune ProOffice 7100の5-2パターンだ。でも安心しろ。死んだわけじゃない。まず一番簡単で効果が高いやつからいくぞ。」


「初手は放電だ。PCをシャットダウンしたら電源ケーブルとケーブル類を全て抜いて、電源ボタン10秒長押し。ネットには「30秒で十分」って書いてあるが、本気で直したいなら、最低1時間完全放置が鉄則だ。残留電力がマザーボードの隅々に残ってる場合がある。」


「……1時間かよ」


俺はコンセントとケーブル類を抜いて、時計を見てソファに座った。


コーヒー飲み干して、スマホいじって、時計がちょうど60分経過。震える手でケーブルを戻し、電源ボタン。プー、ピッ、プー、ピッ……まだ鳴る。


「グラン、だめだ。」


【グラン】

「残念、放電はハズレだ。でもこれで残留電力は完全にゼロになった。

次はPCのケースを開けてメモリの抜き差しだ。」


俺は埃まみれのケースを開け、メモリを抜いて埃を払い、しっかり差し直す。

再起動。……またビープ音。


「グラン、またビープ音だ。」


【グラン】

「よし、次だ。超重要な確認がある。お前の7100、購入してから何年経ってる?」


「10年以上は経ってるかな。」


【グラン】

「なら、まずCMOS電池だ。10年経ってるなら100%切れてる。電池が死んでるとCMOS設定が毎回リセットされて、起動時に『時間リセット→ビープ音』になるケースが山ほどある。特に古いPCだと、設定リセットでグラフィック初期化に失敗し、本来のグラボエラーと同じビープ音を吐くことがあるんだ。CMOS電池は家にあるか?」


「ない。」


「それなら、すぐにコンビニに行け。もちろん100円ショップや家電量販店でもいいが、急ぐならコンビニが一番早い。」


「わかった。すぐに買いに行く。」


俺は近くのコンビニでCMOS電池を購入し家に戻った。


「グラン、CMOS電池を買ってきた。」


【グラン】

「よし、それでは最初にCMOSクリアだ。ケースを開けて電池を外したら10分ほど放置するんだ。」


「わかった。」


ケースを開けると、マザーボードの隅にぽっかり空いたソケット。

古い電池は完全に液漏れ寸前で、端子が緑に腐食していた。


「うわ、ヤバい……」


古い電池を外して10分ほど放置を行った。


「グラン、CMOSクリアが終了した。」


【グラン】

「よし、新しいCMOS電池をセットするんだ。電池を交換したら日時がリセットされる。BIOS画面で現在の日時に設定してくれ。」


新しい電池に入れ替える。カチッ、という小さな音がした。

よし、これでCMOSは生き返った。


震える指で電源ボタンを押す。……ビープ音が鳴らない。モニターが点灯。

BIOS画面で現在の日時に設定する。

そして――Windows 10のロゴ。デスクトップが、10年間見慣れた壁紙と共に現れた瞬間、俺は本当に声を上げてしまった。


「生き返った……!!」


【グラン】

「おめでとう、ゆうた。そして、おかえり――Lune ProOffice 7100。」


たったのボタン電池一本で、15年選手はまた息を吹き返した。俺はスマホに向かって、震える声で呟いた。


「……お前、ほんとすごいな。」


偉そうな態度が気になるが、とても頼りになるいい奴だ。これからもよろしくな、グラン。


しかし、俺はまだ知らなかった。

この小さな電池交換が、後に続く壮絶なトラブルシューティングの、ほんの序章にすぎなかったことを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ